浦和レッズを退団して海外移籍を決断、東京ヴェルディ時代の恩師である当時の指揮官ロリ・サンドリに誘われ、ポルトガルリーグ1部のマリティモに入団した相馬崇人選手。しかし、出場機会があまり得られず、厳しい状況になっていることは報道されている通りである。それは皆さんも周知のことであろう。だが日本では相馬選手が出場した、出場できなかった、ベンチ入りした、程度の情報しか提供されない。今回は現在のマリティモというチームと相馬選手の立場について報告をしようと思う。
フォーメーションは4-2-3-1、あるいは2ボランチの4-3-3を主に使用しており、マリティモの戦術の一番重要な箇所は両サイドの2人。主に右サイドを務めるのが今シーズン大きな成長を見せているマヌー。高い技術とスピードを生かしたドリブルはリーグでもトップクラスのキープ力を誇り、高い打開力を持つ。そして左サイドは、先日のアフリカネイションズカップでも活躍した、抜群の身体能力と技術を併せ持つアンゴラ代表のジャウマ。チームとしては、まず守備を固め、センターにポジションを取るクラウディオ・ピチブーやブルーノが両翼にボールを供給、サイド攻撃を繰り出すのが狙いだ。戦術がこの形である以上、相馬選手の中盤での出場機会はあまり期待できない。ジャウマがアフリカネイションズカップで離脱していた際に一度スタメンの機会を得ながら結果を残せなかったことも大きく響いた。
そうなると左サイドバックが彼の仕事場となるが、こちらには数多のライバルがいた。ナシオナウから加入したPK職人のアロンソ。本職はボランチだが最終ラインもこなすルイス・オリム。ムラがあるものの高い攻撃力を持つミゲリート。いずれもポルトガルではすでに実績のある選手である。しかも、戦術上あまり攻撃的な選手は好まれなかったため、ミゲリートと相馬選手が居場所を失ってしまったのだ。それを証明するように、アロンソの出場停止時には守備的な右サイドバックのブリゲウが左にコンバートされ、相馬選手に最終ラインでのスタメンのチャンスはなかった。現在も負けている際の攻撃的なオプション以上の存在にはなれずにおり、同様の立場であったミゲリートは出場機会を求め、1月にベレネンセスへと移籍していった。
つまり、相馬選手はマリティモというチームの事情によって存在感を失っているのだ。入団当時の指揮官であるロリ・サンドリはかなり攻撃的なチームを作っており、フォーメーションも3バックを使用していた。ロリの下であれば相馬選手も出場機会を得られていたはずだが、運悪く、ロリは相馬選手の入団からわずか1ヶ月で解任されてしまった。しかもその後を引き継いだカルロス・カルヴァリャル(2009年11月からスポルティング・リスボン監督に就任)は2008-2009シーズンの最後までわずか1勝しかできず、監督交代劇は完全に無駄だったのだから、尚更悔やまれる。
とはいえ、相馬選手は少ない出場機を「無難にこなす」のではなく、ミスをしてもいいから果敢にチャレンジをしている。自らが運営するブログの書き込みを見るとマデイラでの生活も楽しめているようで、精神的には悪い状態ではないだろう。日本での恵まれた環境を捨てて海外挑戦の夢に賭けた相馬選手に、幸運が訪れることを願いたい。