いよいよ今週末にスタートする「ヨコハマ・フットボール映画祭(以下、YFFF)」。昨年行われた第一回は1日のみの開催だったが全席完売となり、大きな盛り上がりを見せた。そして、2回目となる今年は19日(日)、25日(土)、26日(日)の3日間に拡大。上映作品も7作品と「サッカー映画の祭典」はパワーアップして帰って来た。Qoly編集部では主催するYFFF実行委員長である福島成人さんにお話を伺ってきました。

大手映画配給会社に勤務するなど10年間映画関係のお仕事に携わってきた福島さん。その傍らでは横浜FCのサポーターとしても活動し、2002年の日韓ワールドカップでは海外から日本を訪れるサポーターのためのイベントを企画。その後、イベントを行った友人達と「NPO法人ヨコハマスポーツコミュニケーションズ(以下、ヨココム)」を設立した。2006年のドイツ・ワールドカップではドイツ戦の昼間に西部謙司さんと宇都宮徹壱さんを招いて現地でイベントを開いてサポーター同士の交流を深めるなど、ヨココムとしてサッカーに関するイベントを数多く手掛けてきた。

開催のきっかけはクラシコ

YFFF開催のきっかけとなったのは、ヨココムの仲間から情報を得た2010年に「クラシコ」との出逢い。「クラシコ」はAC長野パルセイロと松本山雅FCで行われる信州ダービーを題材とした映画だが、公開当時は松本市郊外のシネマ・コンプレックスのみでの上映のみ。その後、都内で開催された試写会でようやく作品を鑑賞し、「ヨコハマで上映したい」という想いに駆られたという。

開催にあたって既に日本で上映されていたサッカー映画へのアプローチだけではなく、未だ日本では上映された事のなかった映画へもアプローチを開始。インドネシア映画「ロミオ&ジュリエット-フーリガンの恋」の上映許可を得る為にTwitteをツールとして活用して上映に漕ぎつけた。また、YFFFのエンブレムとキャラクターデザインは、ヨコハマ在住で大のサッカー好きとして知られる安斎肇氏によるものだが、福島さんと親交のあった東邦出版の中林良輔編集長の協力によって実現している。ヨココムで培った実行力、映画の仕事で培ったノウハウ、最先端のツール、そして人の縁。サッカー好きで映画好きの福島さんの人生がエネルギーとしてYFFFへと集約されたと言って過言ではないだろう。

インドネシアからユスフ監督が来日

不安も大きかった昨年だが、見事に大成功!

幾多のエネルギーの集合体が形になった昨年2月のYFFF2011。チケット完売もどのような盛り上がりを見せるか不安視されたが、蓋を開ければ大成功。映画館の雰囲気はスタジアムの雰囲気は見事にシンクロ。Jリーグの試合の前に必ず映画を見るというJリーグの中西大介事務局長が受賞プレゼンターとして登場した際はスタジアムさながらの盛り上がりを見せたという。

「サッカーと映画。それぞれが内包するリアリティ、現場の雰囲気、ファッション要素などがクロスオーバーさせるきっかけを作ったに過ぎないけれど、映画祭参加者が共通項を発見してくれました」

福島さんは力強く語ってくれた。しかし、同時にサッカー映画の苦しい状況を明かしてくれた。

「サッカー映画はヒットしない?」定説を覆せ!

柳下毅一郎(審査委員長 左)&宇都宮徹壱(右)

「日本国内だけの話かもしれませんが、これまで『サッカー映画はヒットしない』と言われてきました。『ベッカムに恋して』はまずまずでしたが、FIFAの強力なプッシュの元に作成された『GOAL』が不発だったと言わざるを得ません。ヒットが生まれなければ配給会社は映画の買い付け対象からサッカー映画を除外してしまうんです。負のスパイラルに陥ってしまう為、今後もヒットが生まれなければ日本で見られるサッカー映画は本当にわずかとなってしまいます」

しかし、こうした苦況を変えてくれるのが、今回のYFFF2012かもしれない。前回よりもスタッフが増え、人の繋がりも拡大。面白い映画を集める事に成功したという。開催日程の拡大は多くの人がサッカー映画に接する事ができる事を意味する。19日にチョン・テセ選手がインターネット舞台挨拶に登場する「TESE」は横浜初上陸。「テヘラン、25時」は柳下毅一郎審査委員長の推薦で、日本で上映されるのは10年ぶりとなる。「Jリーグを100倍楽しく見る方法!」は20周年のアニバーサリーを向かえるJリーグを記念しての特別上映。昨年受賞プレゼンターとして登場した中西Jリーグ事務局長による推薦だ。福島さんによれば「Jリーグ」は非常にオススメできるという。過去と現在のサポーターの違いを感じられる作品であり、サッカー映画のパターンである選手、監督、チーム、サポーターに焦点を絞った作品ではなく、リーグにフォーカスした珍しい作品であるからだという。また、VHSビデオは発売されたが、DVDでは発売されていないため、今回の上映を逃したら二度と見ることができない事もオススメの理由だ。

今後のYFFFは?

今回で2回目となるYFFF。「今後も毎年2月にJリーグ開幕前のサッカー祭として展開していければ」と福島さんは語る。目標として、日本中で開催・上映し、将来的にはドイツ、アメリカ、イギリスなど海外で行われているサッカー映画祭とも連携を取りたいと考えているようだ。もちろん日本のサッカー映画を海外に紹介する事も福島さんの頭では描かれている。

サッカーと映画。ライフワークから始まった物語が、いま大きな夢へと進化している。

昨年のクロージングパーティの様子。
左から 柳下毅一郎(審査委員長)&御園裕未(聴覚障害サッカー女子日本代表)&松原渓

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