HOME > コラム > プレミアリーグとマンチェスターUの年末年始データ プレミアリーグとマンチェスターUの年末年始データ 2012/12/30 11:00 Text by 駒場野/中西 正紀 サッカーデータベースサイト「RSSSF」の日本人メンバー。Jリーグ発足時・パソコン通信時代からのサッカーファン。FIFA.comでは日本国内開催のW杯予選で試合速報を担当中。他に歴史・鉄道・政治などで執筆を続け、「ピッチの外側」にも視野を広げる。思う事は「資料室でもサッカーは楽しめる」。 Twitter Facebook Others 記事一覧 Qoly読者の皆さん、こんにちは。今回は早めに更新ができました。 今まではヴァンフォーレ甲府の経営問題やオマーン代表の歴史など、かなりマイナー、もっと言えばサッカー界以外の話も多いコラムを書いてきました。そこで第4回は、サッカーオンリー、それもプレミアリーグやマンチェスターユナイテッドといった「定番」をテーマにします。 ただ、選手の特徴や監督の戦術については、私よりも読者の皆さんの方がずっと詳しいでしょう。そこで、ここではRSSSF的な視点から、今までの年末年始の試合を振り返ります。 ☆「ボクシングデー」と「1月3日の曜日」で決まるリーグ日程 まず、プレミアリーグ全体のスケジュールを見てみよう。今の2012/13シーズンを含め、全21回の年末最終戦と年始初戦が行われた日、及びその曜日と試合数についてまとめたのが<表1>である。試合数の中で「赤字」になっているのは、その年のプレミア所属チームが全て試合を行った場合である。また、年末最終戦の前や年始初戦の後に試合が集中した日もその左右に追加した(1試合や2試合のみ行われた場合は除外)。FA杯については後ほど説明する。 <表1>プレミアリーグ各シーズンの年末年始試合日程 注:「数」は同シーズンのリーグ戦チーム数。「中」は年末最終と年始最初の試合日の間隔(1=中1日等)。「FA杯」は3回戦の最多開催日、ただし1999/00シーズンのみは4回戦の最多開催日。「年末最終」「年始最初」で赤字の部分はその日に全チームが試合を行った場合、「FA杯」で青字の部分はリーグ戦の「年始最初」より早く試合を行った場合。 年末の日程を見ると、昨シーズンのように12月31日の大晦日に試合があった例は3シーズンだけと稀な事が分かる。一方、29日と30日に年末最終戦があったのが8シーズンずつで、これが通常のパターンである。ただし、1試合のみ開催が5回、今シーズンのように2試合開催なのが6回あり、いわば「未消化分の積み残し」という場合も多い。これはクリスマスの翌日、26日が「ボクシングデー」(「教会へ寄付された箱を開ける日」から命名)として休日になり、原則として全チームが試合をするため、ここで中1日か2日を空けて年末最後のリーグ戦が入り、年始の初戦につながるという組み方である。28日が最終日の場合は20世紀中の2回しかないが、合計21試合中20試合が同日開催となっている。 ただ、昨シーズンはプレミア史上初めて、12月30日の1試合を含めて年をまたいでMatch Day(第19節)が設定され、大晦日も元日も試合が行われた。1月1日が試合(ウェストブロミッチ0-1エヴァートン、サンダーランド1-0マンチェスターシティ)だった4チームはいずれも12月26日が最終戦のため2日連続のゲームにはならなかったが、エヴァートン(4日)以外の3つは1月3日にも試合を行った。1月2日にあった5試合の10チームはどこも12月31日が年末最終戦だった。この中1日での厳しいスケジュールは、年末年始のプレミアの恒例でもある。 一方、年始の初戦は今回のように1月1日の場合が半分以上の12シーズンある。年末最終戦との違いは多数のチームが開始日を揃える点で、2試合程度が翌日に回る例はあるが、ほぼ横並びで新年の戦いが始まる。今シーズンも1月1日に試合の無い6チームにより1月2日に3試合が予定され、事実上1月2日の5試合が2012年のスタートだった昨シーズンも3日の3試合と4日の2試合で第20節を終えている。そして1月中旬の週末に次のMatch Dayがあり、そのままリーグが進行していく。 また、1994/95・2005/06シーズンでは2日、1999/00シーズンでは3日開始だったが、いずれも月曜だった。これはイングランドやウェールズが「1月1日が土曜か日曜だった場合、New Year's Dayは続く月曜に設定されて休みになる」という振替祝日ルールのため、2日や3日も休日だった年に起こった。今シーズンの場合は1日が火曜のため、2日は通常の「仕事始め」になる(シティのロンドン証券取引所も開場予定)。この日に予定されている3試合はいずれも夜の開催となっている。 なお、スコットランドでは元々2日も休日なので、2日の開催に開始時間の制約はない。2012/13シーズンのスコットランドのプレミアリーグは12月29日の5試合と30日の1試合で年を越し、1月2日に5試合、3日に1試合で新年を始めるが、現在首位のセルティックも2日、現地時間の15時00分からマザーウェルと対戦する。 ただし、このパターンが崩れる事がある。改めて見ると、1月5日以降に新年の初戦を迎えたシーズンが5シーズンあった。2009/10シーズンは5日に1試合(ストークシティ3-2フルハム)行った後、9日と11日で計3試合が入ったが、過半数のチームが2010年の初リーグを戦ったのは1月16・17日の計9試合まで遅れた。 ここで絡むのが<表1>の右端に入れたFA杯3回戦である。通常はリーグ戦の後に行われるが、FA杯が潜行した時の日付は1月2日か3日で、必ず土曜になる。同時に「1月3日が土曜か日曜なら、リーグ戦は1月1日にやらず、本格的なスタートは1月半ばになる」という事も言える。3回戦はプレミアリーグ勢がFA杯に登場するが、ここでは予備選から勝ち上がったアマチュアクラブと対戦する可能性もある。現に、2011/12シーズンではカンファレンスリーグナショナル(5部)のタムワースがエヴァートンと対戦し(0-2で敗退)、他に同リーグ南(6部)のソールズベリーシティも残っていた(リーグ1(3部)のシェフィールドユナイテッドに1-3で敗退)。仕事もあるアマチュアに配慮したのか、年始に関してはむしろFA杯を軸にリーグ側が日程調整をしている感もある。 次に1月3日が土曜日になるのは2015年。続く2016年(日曜)と合わせ、この2年は「正月休みにプレミアリーグ」はできない可能性が高い。気が早すぎるが、現地での観戦を考える場合には注意が必要だろう。 ☆優勝には「勝ち点4」、しのぐアーセナルと強いチェルシー 次に、優勝チームがこの年末年始をどう乗り切ってきたかを見てみよう。 <表2>は、過去20回のプレミアリーグ優勝チームについて、年末最終戦と年始初戦の結果を並べたものである(※クリックで拡大)。このうち、年末年始の勝敗のみを切り出した結果が<表3>となる。 <表2>過去のプレミアリーグ優勝チームの年末年始の試合結果 注:「Pt.」は優勝チームの獲得ポイント。1994/95シーズン以前は42試合、1995/96シーズン以降は38試合。「位」は対戦相手のシーズン最終順位、これが赤文字の場合は降格。 <表3>プレミアリーグ各シーズン優勝チームの年末年始勝敗パターン この20年での優勝チームの年末年始成績は年末の20試合で13勝6分1敗、年始の20試合で12勝6分2敗。合わせると40試合で25勝12分3敗、勝ち点に換算すると87となる。プレミアリーグが20チーム制になった1995/96シーズンからの17回では優勝チームの勝ち点平均が38試合で85.4なので、年末の成績はやや悪いという事になる。ただ、その内容を見ると、年をまたいでの2連勝は20シーズン中7度しかないが、1勝1分のチームは延べ9つある。この「勝ち点4」が、優勝するためには一つの目安といえるだろう。優勝チーム別で見ると、12回優勝のマンチェスターユナイテッドは別として、アーセナルは3度の優勝がいずれも1勝1分で乗り切った。一方、チェルシーは3シーズン、全6試合を全て勝ち、その強さを見せつけていた。その点、ウェストブロミッチに引き分けた後にサンダーランドに敗れたマンチェスターシティの優勝はかなり異例で、2試合ノーゴールでの優勝は初めてだった。 得失点の合計は年末が35得点13失点(1試合平均1.75得点0.65失点)、年始は42得点21失点(同2.1得点1.05失点)。年末の試合では最初の2シーズンを除くと3点差以上で勝ったチームはなく、そもそも3点を取ったのが2006/07シーズンのマンチェスターユナイテッドしかない。接戦をいかにしのぐかが、年末の試合のポイントだろう。逆に年始の試合では大量得点になる場合もあるが、試合日が遅くなるとよりその可能性が高くなる。<表1>でも見たFA杯との関係を見ると、1月7日以降、FA杯の後にリーグ初戦を行った8試合では、2009/10シーズンのチェルシーの7ゴールを含めて23得点を取っている。一方、過密日程の中で戦った1月1-2日の12試合では19得点しかない。同じ新年の試合でも、一息ついてコンディションを練り直す方がより実力を発揮しやすいのかという疑問が生まれてくる。 ☆マンチェスターユナイテッドの不思議とこなし方 さて、読者の皆さんはご存知の通り、プレミアの20年はマンチェスターユナイテッドの歴史でもある。<表2>の通り、12回の優勝は他を圧倒している。そこで、今度はこのチームに絞った年末年始の成績をまとめたのが<表4>である(※クリックで拡大)。 <表4>マンチェスターユナイテッドの年末年始の試合結果 注:「位」はマンチェスターユナイテッドの同シーズンの最終順位。「前」は対戦相手の前シーズン最終順位、丸文字は2部リーグでの順位(昇格)。「今」は対戦相手の同シーズン最終順位、これが赤文字の場合は降格。 <表5>マンチェスターユナイテッドの年末年始勝敗パターン 注:()内の数字は、マンチェスターユナイテッドが優勝した12シーズンでの結果(内数)。 6割のシーズンが優勝なので<表2>や<表3>とデータの傾向が似てくるのは当然だが、マンチェスターユナイテッドも年末年始の試合は手堅くまとめている。ただ、1998/99シーズンからの3連覇では年末最終戦がいずれも引き分けで、その後の2001/02シーズンから4回連続で年末年始に連勝しても優勝は1回というのが、データの不思議さである。また、最初の2シーズンは年末にいずれも5ゴールで圧勝して優勝したが、それ以降は3得点以上した4シーズンで優勝したのが2006/07シーズンのみという結果である。 ここで注目したのは、対戦相手の成績である。もちろんリーグ戦の日程は開幕前に全部発表されるが、マンチェスターユナイテッドは比較的下位のクラブとこの時期に当たる事が多くなっている。<表4>では対戦相手の順位について前シーズンと該当シーズンの最終順位の両方をまとめたが、対戦相手を前年の順位で計算すると年末が12.1位、年始は9.5位。年末に4つ、年始に3つある昇格組を前年18-20位に読み替えて再計算するとそれぞれ13.4位、11.1位とさらに下がる。特にこの5シーズンはバーミンガム2度とウェストブロミッチ、新年初戦が3回も昇格組との対戦になっている。また、年末最終戦にマンチェスターユナイテッドと対戦するとこの4シーズンで3度降格したのも、相手にしてみれば不快なデータだろう。 逆に年末年始には「ビッグマッチ」は少ないのも明白である。チーム別の対戦結果を示した<表6>で、それはさらに明らかになる。 <表6>マンチェスターユナイテッドの年末年始チーム別対戦結果 <表6>ではプレミアリーグ優勝経験のある対戦相手の色を変えたが、40試合の中でアーセナルやチェルシーと対戦した事は2度ずつしかなく、リヴァプールやマンチェスターシティとはまだ対戦していない。さらに、アーセナル戦が初戦になった1999/00シーズンは<表4>の通りに1月24日と極端に遅い日付となった。これはマンチェスターユナイテッドがブラジルで開催された第1回世界クラブ選手権に参加していたためで(グループリーグ2位で敗退、14日の決勝ではコリンチャンスが優勝)、対戦相手のアーセナルはこれがリーグ3戦目という特殊事情があった。他にはトットナムの3度が目立つ程度で、基本的には戦力的に落ちる中小クラブと対戦して勝ち点を着実に稼ぐのがマンチェスターユナイテッドの年末年始の基本形だった。 だからこそ昨シーズン、ブラックバーンとニューカッスルに喫した連敗は想定外で、大きな痛手だった。ブラックバーンは優勝経験もあるチームだが結果的には降格したし、ニューカッスルも昨シーズンは躍進したといえ強豪よりは古豪という扱いの多いクラブだが、この時期では5度目となる対戦での初黒星となった。ブラックバーンにはその後のFA杯3回戦でリベンジを果たしたが、そこでは取り返せない代償となった。 もちろん、シーズン中でもこの年末年始でしか起きなかったリーグ戦での連敗が最後にマンチェスターシティへ優勝を譲った原因となったというのは余りにもひどい結果論だが、過密日程での調整が上手く効かなかったのは、<表3>で見た「連敗したチームがプレミアを制覇した例はない」というデータ以上の問題点を浮き彫りにしたのかもしれない。 この原稿を作っている今日、マンチェスターユナイテッドはウェストブロミッチと対戦する(その結果は反映していない【編集部注:ユナイテッドが2-0で勝利】)。このチームは前年の10位から現在6位に躍進し、大きく取り上げられている。一方、元日に戦うウィガンは昨年の15位から更に後退し、現在は降格圏内の18位。まさに「組みやすい」相手である。この年末年始の2試合についてのデータが、プレミアリーグとマンチェスターユナイテッドの後半戦を想像するささやかなきっかけになっていただければ光栄である。 ☆クイズの答えと出題 最後に、前回のコラム、「『皇后杯』と『天皇杯』の意味を考える」の最後に出したクイズの答え合わせを。 「天皇杯を3度も獲得した女子のスポーツ選手は誰?」という問題でしたが、答えはレスリングの吉田沙保里でした。 前回にも書いた通り、基本的には男子の大会に天皇杯、女子の大会に皇后杯を出すのが通例ですが、レスリングでは2000年に男女の全日本選手権が同時開催となった際、日本レスリング協会が同大会のMVPに授与される天皇杯の対象選手に女子選手を含めました。もちろん男女が戦う事はありませんし、そもそも柔道と違って無差別級もないので、その選定は日本レスリング協会が決めます。そして2001年の大会で山本聖子が初めて受賞し、続く2人目として吉田が2004年、3人目に浜口京子が2005年に天皇杯を獲得したのですが、吉田は2008年と2009年に連続受賞しています。なお、今年の全日本選手権には吉田は欠場し、同じALSOK所属で男子フリースタイル74kg級のロンドン五輪代表選手、高谷惣亮が初めて天皇杯を獲得しています。 日本レスリング協会の公式サイトでは、天皇杯を持つ高谷がレスリング協会の福田富昭会長と並んだ画像や、歴代の天皇杯獲得者一覧がアップされています。 ○外部リンク 「ロンドン五輪代表の高谷惣亮(ALSOK)が2連覇で天皇杯受賞…全日本選手権最終日」http://www.japan-wrestling.jp/2012/12/23/24437/ 「天皇杯 歴代受賞者」http://www.japan-wrestling.jp/2012/12/25/24617/ では、今回もコラムから出題しましょう。 <表6>にも入れましたが、マンチェスターユナイテッドは20シーズンの年末年始40試合で79得点しています。そのうち、最も多く決めた選手は9ゴール、その次は7ゴールですが、それは誰でしょう?ちなみに、7ゴールの人はちょっと変わった取り方をしていますので、それもお考え下さい。お分かりになった方はコラムへの感想なども添えて、Qolyさんへのメッセージや私へのTwitterメンションなどで送っていただければ嬉しいです。 筆者名 中西 正紀 プロフィール サッカーデータベースサイト「RSSSF」の日本人メンバー。Jリーグ発足時・パソコン通信時代からのサッカーファン。FIFA.comでは日本国内開催のW杯予選で試合速報を担当中。他に歴史・鉄道・政治などで執筆を続け、「ピッチの外側」にも視野を広げる。思う事は「資料室でもサッカーは楽しめる」。 ホームページ RSSSF ツイッター @Komabano Facebook masanori.nakanishi {module [170]} {module [171]} {module [190]} 【厳選Qoly】インドネシアの帰化候補「150人超」に対し…帰化して日本代表になった7名 RELATED TAGS コラム (869) マンチェスター・ユナイテッド (5655) 駒場野・中西正紀 (53) 香川真司 (772) イングランド (5216)
Qoly読者の皆さん、こんにちは。今回は早めに更新ができました。 今まではヴァンフォーレ甲府の経営問題やオマーン代表の歴史など、かなりマイナー、もっと言えばサッカー界以外の話も多いコラムを書いてきました。そこで第4回は、サッカーオンリー、それもプレミアリーグやマンチェスターユナイテッドといった「定番」をテーマにします。 ただ、選手の特徴や監督の戦術については、私よりも読者の皆さんの方がずっと詳しいでしょう。そこで、ここではRSSSF的な視点から、今までの年末年始の試合を振り返ります。 ☆「ボクシングデー」と「1月3日の曜日」で決まるリーグ日程 まず、プレミアリーグ全体のスケジュールを見てみよう。今の2012/13シーズンを含め、全21回の年末最終戦と年始初戦が行われた日、及びその曜日と試合数についてまとめたのが<表1>である。試合数の中で「赤字」になっているのは、その年のプレミア所属チームが全て試合を行った場合である。また、年末最終戦の前や年始初戦の後に試合が集中した日もその左右に追加した(1試合や2試合のみ行われた場合は除外)。FA杯については後ほど説明する。 <表1>プレミアリーグ各シーズンの年末年始試合日程 注:「数」は同シーズンのリーグ戦チーム数。「中」は年末最終と年始最初の試合日の間隔(1=中1日等)。「FA杯」は3回戦の最多開催日、ただし1999/00シーズンのみは4回戦の最多開催日。「年末最終」「年始最初」で赤字の部分はその日に全チームが試合を行った場合、「FA杯」で青字の部分はリーグ戦の「年始最初」より早く試合を行った場合。 年末の日程を見ると、昨シーズンのように12月31日の大晦日に試合があった例は3シーズンだけと稀な事が分かる。一方、29日と30日に年末最終戦があったのが8シーズンずつで、これが通常のパターンである。ただし、1試合のみ開催が5回、今シーズンのように2試合開催なのが6回あり、いわば「未消化分の積み残し」という場合も多い。これはクリスマスの翌日、26日が「ボクシングデー」(「教会へ寄付された箱を開ける日」から命名)として休日になり、原則として全チームが試合をするため、ここで中1日か2日を空けて年末最後のリーグ戦が入り、年始の初戦につながるという組み方である。28日が最終日の場合は20世紀中の2回しかないが、合計21試合中20試合が同日開催となっている。 ただ、昨シーズンはプレミア史上初めて、12月30日の1試合を含めて年をまたいでMatch Day(第19節)が設定され、大晦日も元日も試合が行われた。1月1日が試合(ウェストブロミッチ0-1エヴァートン、サンダーランド1-0マンチェスターシティ)だった4チームはいずれも12月26日が最終戦のため2日連続のゲームにはならなかったが、エヴァートン(4日)以外の3つは1月3日にも試合を行った。1月2日にあった5試合の10チームはどこも12月31日が年末最終戦だった。この中1日での厳しいスケジュールは、年末年始のプレミアの恒例でもある。 一方、年始の初戦は今回のように1月1日の場合が半分以上の12シーズンある。年末最終戦との違いは多数のチームが開始日を揃える点で、2試合程度が翌日に回る例はあるが、ほぼ横並びで新年の戦いが始まる。今シーズンも1月1日に試合の無い6チームにより1月2日に3試合が予定され、事実上1月2日の5試合が2012年のスタートだった昨シーズンも3日の3試合と4日の2試合で第20節を終えている。そして1月中旬の週末に次のMatch Dayがあり、そのままリーグが進行していく。 また、1994/95・2005/06シーズンでは2日、1999/00シーズンでは3日開始だったが、いずれも月曜だった。これはイングランドやウェールズが「1月1日が土曜か日曜だった場合、New Year's Dayは続く月曜に設定されて休みになる」という振替祝日ルールのため、2日や3日も休日だった年に起こった。今シーズンの場合は1日が火曜のため、2日は通常の「仕事始め」になる(シティのロンドン証券取引所も開場予定)。この日に予定されている3試合はいずれも夜の開催となっている。 なお、スコットランドでは元々2日も休日なので、2日の開催に開始時間の制約はない。2012/13シーズンのスコットランドのプレミアリーグは12月29日の5試合と30日の1試合で年を越し、1月2日に5試合、3日に1試合で新年を始めるが、現在首位のセルティックも2日、現地時間の15時00分からマザーウェルと対戦する。 ただし、このパターンが崩れる事がある。改めて見ると、1月5日以降に新年の初戦を迎えたシーズンが5シーズンあった。2009/10シーズンは5日に1試合(ストークシティ3-2フルハム)行った後、9日と11日で計3試合が入ったが、過半数のチームが2010年の初リーグを戦ったのは1月16・17日の計9試合まで遅れた。 ここで絡むのが<表1>の右端に入れたFA杯3回戦である。通常はリーグ戦の後に行われるが、FA杯が潜行した時の日付は1月2日か3日で、必ず土曜になる。同時に「1月3日が土曜か日曜なら、リーグ戦は1月1日にやらず、本格的なスタートは1月半ばになる」という事も言える。3回戦はプレミアリーグ勢がFA杯に登場するが、ここでは予備選から勝ち上がったアマチュアクラブと対戦する可能性もある。現に、2011/12シーズンではカンファレンスリーグナショナル(5部)のタムワースがエヴァートンと対戦し(0-2で敗退)、他に同リーグ南(6部)のソールズベリーシティも残っていた(リーグ1(3部)のシェフィールドユナイテッドに1-3で敗退)。仕事もあるアマチュアに配慮したのか、年始に関してはむしろFA杯を軸にリーグ側が日程調整をしている感もある。 次に1月3日が土曜日になるのは2015年。続く2016年(日曜)と合わせ、この2年は「正月休みにプレミアリーグ」はできない可能性が高い。気が早すぎるが、現地での観戦を考える場合には注意が必要だろう。 ☆優勝には「勝ち点4」、しのぐアーセナルと強いチェルシー 次に、優勝チームがこの年末年始をどう乗り切ってきたかを見てみよう。 <表2>は、過去20回のプレミアリーグ優勝チームについて、年末最終戦と年始初戦の結果を並べたものである(※クリックで拡大)。このうち、年末年始の勝敗のみを切り出した結果が<表3>となる。 <表2>過去のプレミアリーグ優勝チームの年末年始の試合結果 注:「Pt.」は優勝チームの獲得ポイント。1994/95シーズン以前は42試合、1995/96シーズン以降は38試合。「位」は対戦相手のシーズン最終順位、これが赤文字の場合は降格。 <表3>プレミアリーグ各シーズン優勝チームの年末年始勝敗パターン この20年での優勝チームの年末年始成績は年末の20試合で13勝6分1敗、年始の20試合で12勝6分2敗。合わせると40試合で25勝12分3敗、勝ち点に換算すると87となる。プレミアリーグが20チーム制になった1995/96シーズンからの17回では優勝チームの勝ち点平均が38試合で85.4なので、年末の成績はやや悪いという事になる。ただ、その内容を見ると、年をまたいでの2連勝は20シーズン中7度しかないが、1勝1分のチームは延べ9つある。この「勝ち点4」が、優勝するためには一つの目安といえるだろう。優勝チーム別で見ると、12回優勝のマンチェスターユナイテッドは別として、アーセナルは3度の優勝がいずれも1勝1分で乗り切った。一方、チェルシーは3シーズン、全6試合を全て勝ち、その強さを見せつけていた。その点、ウェストブロミッチに引き分けた後にサンダーランドに敗れたマンチェスターシティの優勝はかなり異例で、2試合ノーゴールでの優勝は初めてだった。 得失点の合計は年末が35得点13失点(1試合平均1.75得点0.65失点)、年始は42得点21失点(同2.1得点1.05失点)。年末の試合では最初の2シーズンを除くと3点差以上で勝ったチームはなく、そもそも3点を取ったのが2006/07シーズンのマンチェスターユナイテッドしかない。接戦をいかにしのぐかが、年末の試合のポイントだろう。逆に年始の試合では大量得点になる場合もあるが、試合日が遅くなるとよりその可能性が高くなる。<表1>でも見たFA杯との関係を見ると、1月7日以降、FA杯の後にリーグ初戦を行った8試合では、2009/10シーズンのチェルシーの7ゴールを含めて23得点を取っている。一方、過密日程の中で戦った1月1-2日の12試合では19得点しかない。同じ新年の試合でも、一息ついてコンディションを練り直す方がより実力を発揮しやすいのかという疑問が生まれてくる。 ☆マンチェスターユナイテッドの不思議とこなし方 さて、読者の皆さんはご存知の通り、プレミアの20年はマンチェスターユナイテッドの歴史でもある。<表2>の通り、12回の優勝は他を圧倒している。そこで、今度はこのチームに絞った年末年始の成績をまとめたのが<表4>である(※クリックで拡大)。 <表4>マンチェスターユナイテッドの年末年始の試合結果 注:「位」はマンチェスターユナイテッドの同シーズンの最終順位。「前」は対戦相手の前シーズン最終順位、丸文字は2部リーグでの順位(昇格)。「今」は対戦相手の同シーズン最終順位、これが赤文字の場合は降格。 <表5>マンチェスターユナイテッドの年末年始勝敗パターン 注:()内の数字は、マンチェスターユナイテッドが優勝した12シーズンでの結果(内数)。 6割のシーズンが優勝なので<表2>や<表3>とデータの傾向が似てくるのは当然だが、マンチェスターユナイテッドも年末年始の試合は手堅くまとめている。ただ、1998/99シーズンからの3連覇では年末最終戦がいずれも引き分けで、その後の2001/02シーズンから4回連続で年末年始に連勝しても優勝は1回というのが、データの不思議さである。また、最初の2シーズンは年末にいずれも5ゴールで圧勝して優勝したが、それ以降は3得点以上した4シーズンで優勝したのが2006/07シーズンのみという結果である。 ここで注目したのは、対戦相手の成績である。もちろんリーグ戦の日程は開幕前に全部発表されるが、マンチェスターユナイテッドは比較的下位のクラブとこの時期に当たる事が多くなっている。<表4>では対戦相手の順位について前シーズンと該当シーズンの最終順位の両方をまとめたが、対戦相手を前年の順位で計算すると年末が12.1位、年始は9.5位。年末に4つ、年始に3つある昇格組を前年18-20位に読み替えて再計算するとそれぞれ13.4位、11.1位とさらに下がる。特にこの5シーズンはバーミンガム2度とウェストブロミッチ、新年初戦が3回も昇格組との対戦になっている。また、年末最終戦にマンチェスターユナイテッドと対戦するとこの4シーズンで3度降格したのも、相手にしてみれば不快なデータだろう。 逆に年末年始には「ビッグマッチ」は少ないのも明白である。チーム別の対戦結果を示した<表6>で、それはさらに明らかになる。 <表6>マンチェスターユナイテッドの年末年始チーム別対戦結果 <表6>ではプレミアリーグ優勝経験のある対戦相手の色を変えたが、40試合の中でアーセナルやチェルシーと対戦した事は2度ずつしかなく、リヴァプールやマンチェスターシティとはまだ対戦していない。さらに、アーセナル戦が初戦になった1999/00シーズンは<表4>の通りに1月24日と極端に遅い日付となった。これはマンチェスターユナイテッドがブラジルで開催された第1回世界クラブ選手権に参加していたためで(グループリーグ2位で敗退、14日の決勝ではコリンチャンスが優勝)、対戦相手のアーセナルはこれがリーグ3戦目という特殊事情があった。他にはトットナムの3度が目立つ程度で、基本的には戦力的に落ちる中小クラブと対戦して勝ち点を着実に稼ぐのがマンチェスターユナイテッドの年末年始の基本形だった。 だからこそ昨シーズン、ブラックバーンとニューカッスルに喫した連敗は想定外で、大きな痛手だった。ブラックバーンは優勝経験もあるチームだが結果的には降格したし、ニューカッスルも昨シーズンは躍進したといえ強豪よりは古豪という扱いの多いクラブだが、この時期では5度目となる対戦での初黒星となった。ブラックバーンにはその後のFA杯3回戦でリベンジを果たしたが、そこでは取り返せない代償となった。 もちろん、シーズン中でもこの年末年始でしか起きなかったリーグ戦での連敗が最後にマンチェスターシティへ優勝を譲った原因となったというのは余りにもひどい結果論だが、過密日程での調整が上手く効かなかったのは、<表3>で見た「連敗したチームがプレミアを制覇した例はない」というデータ以上の問題点を浮き彫りにしたのかもしれない。 この原稿を作っている今日、マンチェスターユナイテッドはウェストブロミッチと対戦する(その結果は反映していない【編集部注:ユナイテッドが2-0で勝利】)。このチームは前年の10位から現在6位に躍進し、大きく取り上げられている。一方、元日に戦うウィガンは昨年の15位から更に後退し、現在は降格圏内の18位。まさに「組みやすい」相手である。この年末年始の2試合についてのデータが、プレミアリーグとマンチェスターユナイテッドの後半戦を想像するささやかなきっかけになっていただければ光栄である。 ☆クイズの答えと出題 最後に、前回のコラム、「『皇后杯』と『天皇杯』の意味を考える」の最後に出したクイズの答え合わせを。 「天皇杯を3度も獲得した女子のスポーツ選手は誰?」という問題でしたが、答えはレスリングの吉田沙保里でした。 前回にも書いた通り、基本的には男子の大会に天皇杯、女子の大会に皇后杯を出すのが通例ですが、レスリングでは2000年に男女の全日本選手権が同時開催となった際、日本レスリング協会が同大会のMVPに授与される天皇杯の対象選手に女子選手を含めました。もちろん男女が戦う事はありませんし、そもそも柔道と違って無差別級もないので、その選定は日本レスリング協会が決めます。そして2001年の大会で山本聖子が初めて受賞し、続く2人目として吉田が2004年、3人目に浜口京子が2005年に天皇杯を獲得したのですが、吉田は2008年と2009年に連続受賞しています。なお、今年の全日本選手権には吉田は欠場し、同じALSOK所属で男子フリースタイル74kg級のロンドン五輪代表選手、高谷惣亮が初めて天皇杯を獲得しています。 日本レスリング協会の公式サイトでは、天皇杯を持つ高谷がレスリング協会の福田富昭会長と並んだ画像や、歴代の天皇杯獲得者一覧がアップされています。 ○外部リンク 「ロンドン五輪代表の高谷惣亮(ALSOK)が2連覇で天皇杯受賞…全日本選手権最終日」http://www.japan-wrestling.jp/2012/12/23/24437/ 「天皇杯 歴代受賞者」http://www.japan-wrestling.jp/2012/12/25/24617/ では、今回もコラムから出題しましょう。 <表6>にも入れましたが、マンチェスターユナイテッドは20シーズンの年末年始40試合で79得点しています。そのうち、最も多く決めた選手は9ゴール、その次は7ゴールですが、それは誰でしょう?ちなみに、7ゴールの人はちょっと変わった取り方をしていますので、それもお考え下さい。お分かりになった方はコラムへの感想なども添えて、Qolyさんへのメッセージや私へのTwitterメンションなどで送っていただければ嬉しいです。 筆者名 中西 正紀 プロフィール サッカーデータベースサイト「RSSSF」の日本人メンバー。Jリーグ発足時・パソコン通信時代からのサッカーファン。FIFA.comでは日本国内開催のW杯予選で試合速報を担当中。他に歴史・鉄道・政治などで執筆を続け、「ピッチの外側」にも視野を広げる。思う事は「資料室でもサッカーは楽しめる」。 ホームページ RSSSF ツイッター @Komabano Facebook masanori.nakanishi {module [170]} {module [171]} {module [190]} 【厳選Qoly】インドネシアの帰化候補「150人超」に対し…帰化して日本代表になった7名