現地14日20時(日本時間15日午前4時)、ウェンブリー・スタジアムでイングランド代表とスコットランド代表がFA設立150周年記念の一環としてフレンドリーマッチを行う。
グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(イギリス)を構成する両国の対決の歴史は実に古く、初めて戦ったのは今から140年以上も前の1872年。以後、実に110度に渡って両者の戦いは行われてきた。対戦戦績の内わけはイングランド45勝、スコットランド41勝、引き分け24。
ここ5試合に限ればイングランドの4勝1敗だが、直近の対戦となったEURO2000の予選プレーオフ(1999年11月17日)ではスコットランドがMFドン・ハッチソンのゴールにより1-0の勝利を収めている。
ただ両国の現状にはやや差がある。イングランドはここ3試合続けて引き分け、W杯予選でも盤石とはいえないもののモンテネグロに次ぐグループ2位につけている。一方のスコットランドは2009年から代表を指揮してきたクレイグ・レヴェイン監督が昨年11月に成績不振を理由に解任。 翌年1月にゴードン・ストラカンが新監督に指名され、2月のエストニア戦で初采配を揮い初勝利(1-0)をあげるも、その後のW杯予選2試合(ウェールズ、セルビア)に連敗したことでW杯出場の可能性が潰えてしまった。
そんなスコットランドだが、6月に行われたクロアチアとアウェイマッチでは1-0で勝利し、ストラカン体制下で予選初勝利をあげた。ストラカンが「クロアチア相手の勝利は全ての関係者にとって非常に誇らしい瞬間だった」と述べたこの勝利によってスコットランドは7月4日発表のFIFAランキングで24つ順位をあげて50位にランクアップ。2012年9月以来のトップ50入りを果たした。 (8月8日に発表された最新ランキングではスコットランドは変わらず50位。一方、イングランドは1つ順位を上げて14位)
W杯出場の望みはなくなったものの、格上クロアチア相手に勝利したことでチームには自信も戻ってきたようで、スコットランド代表FWショーン・マロニー(ウィガン)はイングランドとの実力差を認めつつも、クロアチア戦のように戦えば勝機は見いだせると語る。 「最新のランキングや我々のW杯予選を見るに、僕らとイングランドにはかなりの差がある。勝ち目の薄いアンダードッグとして僕らが臨むことは確かだけど、うまくいけば結果を出すことができる。(クロアチア戦で)僕らはハードワークし、よく組織されていた。そして、得点を奪った後はとてもよく守った。もし僕らがイングランド相手にまともな結果を得るとすれば、そういうような試合になるだろう」
またスコットランドの選手たちにとってウェンブリーでのイングランド戦には非常に大きな意味があるようで、 マロニーは「こういう試合は滅多にないし、イングランド相手にウェンブリーで戦うことは僕がプレーする最も重要な代表戦になる。フレンドリー(マッチ)なので相手の数人は45分間のプレーかそのくらいになるだろうと思うけど、僕らにとっては非常に重要なんだ」と語る。 そのマロニーのウィガンのチームメイト、MFジェームズ・マッカーサーも「僕ら選手とファンにとって大きな試合だ。代表として僕らはどんな試合でも勝ちたいけど、今回は少し特別だ。 イングランド相手にプレーすることは子供の頃に抱く夢の試合のひとつ。僕らが誇るいい選手たちがイングランドのトッププレイヤー相手に戦う、一大イベントになるだろう。とてもエキサイティングだね」と話す。
運動量・フィジカルに優れるセンターハーフとしてウィガンだけでなく代表でも確固たる地位を築きつつあるマッカーサーはストラカンのもとでのプレーに自信を深めているようで、「(ストラカン)監督がやってきて僕らはプレースタイルを得た。今の僕らはとてもソリッドだ。とてもポジティブだよ。彼(ストラカン)のインタビューを見ても分かる通り、彼(ストラカン)は偉大な人物だ。プレーするには素晴らしい監督だし、彼の下で僕らは強くなっていくだろうことを確信している」 とも話している。
一方、そのストラカンはこの試合を守備的に戦う気持ちはないようで、「我々はおそらくクロアチア戦より攻撃的になるだろう。それは確かだ。より攻撃的になることを望んでいる。ボールを持った際、我々が考えなきゃならないのはどうやってイングランドのDFラインを崩すかということ。それを選手たちのマインドに注入するつもりだ」 と述べており、どういう戦い方をするのかに注目が集まる。
スコットランドの選手たちがとても大きいと語るイングランド戦だが、代表キャプテンであるダレン・フレッチャー(マンチェスター・ユナイテッド)はこの試合に出場することはできない。29歳のMFはここ3年ほど慢性的な腸の疾患(潰瘍性大腸炎)に苦しんでいて、2011年冬に休養延長を発表して以来13試合にしか出場しておらず、今年1月に手術を受けて以降はまったくプレーしていない。 とはいえ、このままフットボールを諦めるつもりは全くないという。
「タフな時を何度か過ごしてきたけど、復帰してプレーするというゴールがいつもあった。もっとプレミアリーグのタイトルを獲りたいし、FAカップもチャンピオンズリーグでも優勝したい。代表でもメジャー大会の予選を通過したい。もしそれをやったとしても、もう一度全部やりたい!」 と話すフレッチャーはいつプレーに復帰できるかまだ全く分からないと認めつつ、ベストフォームに戻れる自信があるという。
「かつてプレーしていたレベルに戻れると完璧に信じてる。そうできないと考える理由は何もない。ポジティブにならなくちゃいけない。それがこの状況を脱する唯一の方法さ。プレーに本格復帰するまでの時間に区切りはつけてない。うまくいけば、そんなに遠いものではない。忍耐強くならなくてはならない」
そして、イングランド戦についてはこう話した。「代表にいれないことに本当にがっかりしている。もしスコットランド対イングランド戦に興奮できないなら、試合に出るべきじゃない。もし選手たちがウェンブリーでイングランドを敗ることができれば、彼らはレジェンドになるだろう。素晴らしいパフォーマンスだったクロアチア戦(のようなプレー)のを続けることを望んでいるよ」
なお今回招集されたスコットランド代表にはもうひとりのフレッチャー、FWスティーヴン・フレッチャー(サンダーランド)も足首の負傷のため含まれていない。ストラカン監督は2人の現状については所属クラブに聞いたほうがいいとしつつ、「彼らはトッププレイヤーであり、最高の男たちだ。彼らは早くよくなるだろう」として、今後のチーム復帰に期待を寄せているようだ。
2人のフレッチャーが招集外となったスコットランドだが、 セルティックの3人(MFスコット・ブラウン、DFチャーリー・マルグルー、MFジェイムズ・フォレスト)、FWケニー・ミラー(バンクーバー・ホワイトキャップス)、 DFゴードン・グリアー(ブライトン&ホーヴ・アルビオン)がチームに戻ってきた。
(※ブライトンのMFリアム・ブリッドカットも復帰したが、招集後に鼠蹊部の故障により離脱)。
33歳のベテランFWミラーはイングランド戦に出場することになれば、デイヴィッド・ウィア(元代表DF・引退)と並んで歴代6位タイとなる代表69キャップに達することになる。 そのミラーについて、ストラカンは「ケニーはいつだってスカッドに戻ってきた。我々は彼が戻ってくるのを待ち望んでいた。彼はトッププロフェッショナルで、トレーニングにおいて若い選手たちにとって素晴らしい基準となるからね」と湛えていて、ブラウンについても「彼は年を重ねるごとにどんどんよくなっている」と頼りになるMFの活躍を期待してるようだ。
なお、今回のスコットランドは代表経験の比較的浅い選手が多く、15人(負傷離脱したMFブリッドカットを除く)が代表キャップ10以下となっている。
一方、そんなスコットランドをイングランドはほぼフルスカッドで迎え撃つ。 ウィガンとのFAコミュニティ・シールドも欠場していたマンチェスター・ユナイテッドのアシュリー・ヤングが足首の故障のために離脱となったが、ホジソン監督は「多くの選手たちを招集し、チームに加えられたことに満足している。これまでは不運にも代表に来る直前にクラブの試合で負傷したり、長期の怪我で選手を欠くことがあったからね。アシュリー・ヤングをただ一人を除いて、今回のスカッドは完全なものだ」と自信ありげだ。 今回のメンバーにはアーセナルのMFジャック・ウィルシャーが復帰する一方、サウサンプトンのFWリッキー・ランバートが初招集を受けた。 2人についてホジソン監督はこう話した。「ジャックはいい感じに見える。彼は復帰しアーセナルでのプレシーズンでプレーしてきた。我々は彼を守りたいし、戻ってきて嬉しい。彼には天才的な才能がある」、「リッキー・ランバートは熱心な人間だ。彼はここにいることを喜んでいて、私が期待していたように(代表チームに)場違いには見えないね。彼と一緒にできることが楽しみだ」。
なお、『goal.com』によれば、31歳のベテラン、ランバートがこの試合でもしプレーすれば、1954年以降で同国史上3番目に遅いデビューとなるという。
そのイングランドのエースながら今夏移籍問題で揺れているFWウェイン・ルーニーについて状態が十分フィットしているならスコットランド戦で先発もあるかと問われたホジソン監督は、「そう思う。月曜のトレーニングで彼にどのような反応が起きるか火曜日に見ることになるだろう。彼が負傷から復帰するために行うことができたもの(トレーニング)よりも少し激しかっただろうからね。もし何の問題もなくて、トレーニングをよくこなせたら、彼と話し合って(先発起用を?)決断することになるだろう」と述べた。 イングランド代表として83キャップ・36ゴールを記録しているルーニーはハムストリングと肩を痛めた影響で今プレシーズンではベティスとの練習試合にしか出場しておらず、11日のFAコミュニティ・シールドでもベンチ入りしなかったが、翌月曜日の代表チームのトレーニングではチームメイトとともにフル参加している。
ルーニーの先発起用の可能性も示唆したホジソン監督はこの試合について、「多くの歴史があるタフな試合だ。相手には高いモチベーションがあるだろうから、(今後のW杯予選に向けて)いい準備になるだろう」、 「(W杯)予選のことよりも関心があるのは(スコットランド戦での)我々のパフォーマンスだ。タフな相手にどんなパフォーマンスができるのかを見定めることに非常に関心がある。(今後)とてもとてもタフな試合がやってくるからね。言ってみれば、我々がどう向かっていくのかというテストになるだろう」と語った。
さて、今回の両国の対決がFA創設150周年記念の一環だということは前述したが、FAはこの試合の審判の指名でちょっとした粋なことをしている。 FAが指名したのはドイツ、ブラジル、スイス、南アフリカの審判員4名。なぜこの4か国なのかというと、この4か国はいずれもイングランド人審判がW杯決勝戦を担当した大会のホスト国だからで、W杯決勝の舞台に4度審判を送り出している国はイングランドだけという。ジョージ・リーダー(1950年ブラジルW杯)、ウィリアム・リン(1954年スイスW杯)、ジャック・テイラー(1974年西ドイツ)、ハワード・ウェブ(2010年南アフリカ)
そして、このスコットランド戦の審判に指名されたのはフェリックス・ブッフィ(ドイツ、主審)、アレッサンドロ・ホシャ・マトス氏(ブラジル、アシスタントレフェリー)、エノック・モレフェ氏(南アフリカ、アシスタントレフェリー)アライン・ビエリ氏(スイス、第4審判)の4名。主審のブッフィ氏は今年のコンフェデレーションズカップ日本対メキシコ戦でも笛を吹いた人物で、法学博士の資格も有しているとか。
今回両国の111度目の対決の舞台となるウェンブリーでは今月11日、FAコミュニティーシールドが行われ、ゴールディシジョン・テクノロジー、通称“ホーク・アイ”が初めて使用された。 そして、このスコットランド戦ではウェンブリーで行われる国際試合として初めて“ホーク・アイ”が正式に使用される見込みだそう。昨年のベルギー戦で実験的に運用されたものの、その際審判には“ホーク・アイ”をジャッジに利用する権限は与えられていなかった。
たいぶ長くなってしまったが、最後に今回の両国の招集メンバーを記しておく。
GK、ジョー・ハート
GK、ベン・フォスター
GK、ジョン・ルディ
DF、アシュリー・コール
DF、グレン・ジョンソン
DF、フィル・ジャギエルカ
DF、レイトン・ベインズ
DF、ギャリー・ケーヒル
DF、フィル・ジョーンズ
DF、クリス・スモーリング
DF、カイル・ウォーカー
MF、スティーヴン・ジェラード
MF、フランク・ランパード
MF、ジェームズ・ミルナー
MF、マイケル・キャリック
MF、アレックス・オックスレイド=チェンバレン
MF、トーマス・クレヴァリー
MF、ジャック・ウィルシャー
FW、ウェイン・ルーニー
FW、ジャーメイン・デフォー
FW、テオ・ウォルコット
FW、ダニー・ウェルベック
FW、ウィルフレッド・ザハ
FW、リッキー・ランバート
GK、アラン・マクレガー(ハル・シティ)
GK、デーウィッド・マーシャル(カーディフ)
GK、マット・ジルクス(ブラックプール)
DF、アラン・ハットン(アストン・ヴィラ)
DF、アンディ・ウェブスター(コヴェントリー)
DF、スティーヴン・ウィタカー(ノリッジ)
DF、グラント・ハンリー(ブラックバーン)
DF、チャーリー・マルグルー(セルティック)
DF、ラッセル・マーティン(ノリッジ)
DF、スティーヴン・ハメル(マザウェル)
DF、ゴードン・グリア(ブライトン)
MF、スコット・ブラウン(セルティック)
MF、ジェームズ・モリソン(WBA)
MF、チャーリー・アダム(ストーク)
MF、スティーヴン・ネイスミス(エヴァートン)
MF、ジェームズ・マッカーサー(ウィガン)
MF、バリー・バナン(アストン・ヴィラ)
MF、ロバート・スノッドグラス(ノリッジ)
MF、グラハム・ドランス(WBA)
MF、ジェームズ・フォレスト(セルティック)
MF、クリス・バーク(バーミンガム)
MF、クレイグ・コンウェイ(カーディフ)
MF、ジョージ・ボイド(ハル・シティ)
MF、ギャリー・マッケイ=スティーヴン(ダンディー・ユナイテッド)
FW、ケニー・ミラー(バンクーバー・ホワイトキャップス)
FW、ショーン・マロニー(ウィガン)
FW、ジョーダン・ローズ(ブラックバーン)
FW、レイ・グリフィス(ウォルバーハンプトン)
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