コナミの人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン」シリーズの最新作、『ウイニングイレブン2014』がいよいよ明日、11月14日に発売される。
PS4やXbox Oneといった次世代機を念頭に、一から作り直したと言っても過言ではない今作。気になるその詳細などについて、Qolyもコナミを直撃! 「ウイイレ」を統括する益田圭プロデューサーに話を伺ってきた。
「ウイイレ2014」のテーマは『刷新』
― 本日はよろしくお願いします。さて、いきなりですが、発売が例年に比べてやや遅くなってしまったのはなぜなのでしょうか?
はい。既に欧州などでは9月に発売しているのですが、日本の「ウイニングイレブン」はそちらからのフィードバックなど直前まで調整を行っていたため、この時期になってしまいました。ただ、その分良いものに仕上がったと思います。日本代表の柿谷選手もしっかり反映できました。
― なるほど。今作は次世代機に向けた“完全新作”といった位置づけになると思うのですが、ズバリ制作にあたって一番意識された点はどこでしょうか?
私がプロデューサーとして携わるようになって、今作が2作目となります。前作(2013)はある程度限られた時間の中で制作する形でしたが、今作で搭載した新しいゲームエンジンはこの一年で構築したものではなく、以前から構想にあったものを別ラインで走らせながら数年をかけて作りました。
高塚体制から替わって同じことをそのままできるわけではありませんし、目指すべきところ、やりたいところといった考え方もやはり少しずつ違います。その中で、今までのシリーズ通りのものを出しても仕方がないですし、アクションのサッカーゲームとして進化が停滞していたと感じる部分をもう一段上げるため、いろいろチャレンジをしなければなりません。そこで、勇気を持って崩すものは崩して新たに構築し、意見やフィードバックをもらいながら次の段階・ステップへ進む。今作は『刷新』というはっきりとしたイメージを持って制作に取り組みました。
― 前作までと比べると、展開がスローに、よりサッカーというスポーツを表現したゲームになっています。これまでのウイイレファンが戸惑う部分が少なからずあると思うのですが、この辺りの変化についてはどのように考えていますか?
先ほどもお話した通り、一つ崩して一段上がるという部分ですごく悩み、試行錯誤をしながら作りました。アクションゲームとしての面白さとリアルサッカーゲーム、そこのバランスを考え、前作までのプレイ感覚とあえて変えた部分もあります。今まで通りでも良かった部分を勇気を持って崩しつつ、よりリアルなサッカーに近づける。今作はそこを意識しています。
特に、これまでのようなスピード重視、ダッシュボタンから手を離さないようなプレイから脱却したいというのがありました。中盤のビルドアップなどがなく激しい攻守の切り替えの応酬になりがちな部分を、一つ落ち着けた試合展開にしたい。なので、今作はダッシュボタンを押し続けて突破を図るというより、その辺りのオン・オフやファーストタッチでボールをどこに置くかなど、次の行動を意識した動きが大事になっています。
― 確かに、ウイイレというと足の速い選手を走らせてというイメージが強いです。私も昔、ババンギダなどにお世話になりました(笑)
(笑)。もちろんそういう個性の選手がいても良いのでそういった部分はこれからも表現していきたいですが、そればかりにならないようなバランスにしたいと思っています。
― スタジアムの臨場感なども格段にアップした印象です。そういった“雰囲気”を表現する上で、苦労した点はありましたか?
ワールドワイドに展開していく上で、各国の特徴というのを含めた雰囲気作りをしています。たとえば、南米ならすごく発煙筒を焚いたり、ヨーロッパであればまた別のシチュエーションであったりと。スタジアムごとの選手の入場ゲートの違いなどを含め表現しようというのがまずあります。
さらに、これまでもグラフィックに一定の評価をいただいていましたが、海外の有力ゲームタイトルを見てもグラフィックの水準というのはどんどん高くなっています。我々が「リアルサッカー」を表現する上でそこに手を加えないというのは選択肢としてありえないので、技術として追いつき、ユーザーに高い水準のものを提供しないといけない。
たとえばグラフィック面では、分かりやすく選手の顔で言うと、これまでは影が入った写真をそのまま使っていました。しかし今作は、まず影が入らないように撮影した写真を使用し、そこにゲームの中で物理的に正しいライティングをして影を落とす。そういった手法になってきています。これまでも技術などはあったのですが実際に内部で試すのは初めてでしたので、最初の構築という意味で狙った色味や表現を出すのに苦労しました。
― 今作ではゲームエンジンを一新したとのことで、コナミ自前のFOXエンジンにより進化した描写力とともに、実際にプレイしていると新たに採用したHavokの技術というのも光ります。Havok社のリリースを見ると数年前から一緒に開発をしてきたという話ですが、どういった特徴を持っているのでしょうか?
新エンジンに関して、根幹となるグラフィックやアニメーションなどは何年も前から準備し、テストを繰り返しながら作っていました。そこにHavokというミドルウェアを組み合わせ、アニメーションや物理といったところでその技術を使用しています。
特に大きなのはやはり物理の部分で、たとえば選手モデルが接触した際、それぞれのパーツがどういった重みでどのように動くのかをリアルタイムで表現できるため、アニメーション自体を用意しなくても自動計算で実際に接触したような動きをします。他にもユニフォームや髪の毛のシミュレーションなどに使用されていて、ビジュアル的な説得力といった部分で恩恵を受けています。
気になるJリーグチーム、そして「11vs11」の搭載は?
― 今作もACLやアルゼンチン、チリの国内リーグなどが追加されましたが、今後取得したいクラブやリーグなどはありますか?
UEFAチャンピオンズリーグ、コパ・リベルタドーレスに続いてAFCチャンピオンズリーグを入れたことで、各地のチャンピオンをゲームの中で決めて、クラブの世界一を決めるような体験をより楽しめるようになりました。
また、前作から力を入れている中南米に関しては今後も重視していきたい地域の一つですし、先ほどお話したグラフィックなどのローカライズといった意味でも力を入れていきたいと思っています。
― Jリーグのチームは今作もダウンロードコンテンツとして搭載されるのでしょうか?
こちらは前作のようにダウンロードにするのか、それともパッケージにするのか、まだ検討中です。より良い形で提供できればと考えているので、今後の発表を待っていただけたらと思います。
― ちなみに、スタジアムを一つ作るというのは大変ですか?
一つ一つのクオリティを高めるためコストや手数は増えてきていますが、今回構築した新エンジン上で効率的に作るというのももちろん目指しています。次世代機に向けて新エンジンのタイミングを決めたというのもありますし、徐々に制作のスピードはアップしてくると思います。なので、Jのスタジアムに関しても課題ではありますが、できる限り早い段階で数を揃えていきたいです。
― 海外版ではシリーズ初となる「11 vs 11」のオンラインマルチプレイの追加搭載が発表されています。海外でも配信はまだのようですが、日本の「ウイニングイレブン」で搭載されるのはいつ頃になりますか?
こちらは日本版の発売に向けて準備を進めていて、日本では発売と同時に楽しめるような形にする・・・
― す、するんですか?(笑)
はい、します(笑)。
― おお。また、「11 vs 11」という多人数でのプレイが可能になったことを考えると、世界中のウイイレ(PES)ファンともっと気軽に対戦などができたら・・・と考えてしまいます。WEとPESのサーバーを統合することはできないのでしょうか?
ワールドワイドでの対戦というのは技術的には問題なく、もちろん今回の新エンジンでも可能になっています。ただ、現状ではインフラの部分や環境面もあり、それぞれのコミュニティというか各地域の中だけで楽しみたいという声の方がまだ強いんです。一応、システム的に良い回線の人を優先する形にはなっているのですが、外と繋がればそれだけプレイに関する影響も出てしまいます。我々だけで解決する問題ではないので、そこがどれだけ快適に楽しめるのかというのもクリアしなければいけないハードルの一つです。
ただ、どちらを優先するのかという話でもあるので、ユーザーの声が強ければオンラインをワールドワイドで展開していくというのも選択肢としてはあります。
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