その男は、特別な愛情に包まれていた。

現地時間18日、ガラタサライに所属するFWディディエ・ドログバがアウェイのチェルシー戦に挑み、かつて8シーズンにわたって所属した古巣に凱旋を果たしたのだ。

舞台はUEFAチャンピオンズリーグのベスト16の2ndレグ。これから大一番が始まるとはおよそ思えないほどの空気と優しさが、スタンフォード・ブリッジを覆いつくし熱気に溢れていた。

この組み合わせが実現した時、「どちらの試合も“ホーム”で戦える」と語っていたドログバ。そんな彼の帰還を、多くのチェルシーサポーターがそれぞれの想いをバナーに託した。

チェルシーは1stレグをアウェイで1-1と分けていた。いくらホームで戦えるとは言え、2ndレグを前に保持しているアドバンテージはそこまで大きくはなかった。

しかし、青きサポーターたちは彼の名前を声高に叫んだ。ドログバという選手がチェルシーサポーターからいかに支持されていたかが分かる風景だった。

はるばるロンドンへとやって来たガラタサライのサポーターも負けていない。「オレたちにはドログバがついているが、オマエたちにはいない」というバナーは、ガラタサライサポーターにとってのドログバの存在感も物語っていた。そして、欧州でも随一とも言えるファナティックな歌声が、スタンフォード・ブリッジにこだましていた。

試合前、ドログバはチェルシーから表彰を受けている。息子とスタンフォード・ブリッジに登場したドログバにはシルバーのブーツが手渡され、サポーターもこれを祝福。キックオフのホイッスルを境に態度を180度変えることができるこうした文化は、やはりサッカー特有のものだろう。

ドログバはチームメイトのヴェスリー・スナイデルと談笑しながら、UCLのアンセムを聞いた。そして試合前、かつての指揮官とも再会を果たした。

この試合、ドログバは明らかにセットプレーのキッカーを自ら名乗り出ていた。スナイデルもこの日ばかりはドログバの気持ちを察したのか、ドログバに譲る機会があった。

ドログバのキックはチェフが守るゴールの遥か頭上へと飛んだが、その命中した場所は皮肉にも、彼の功績を称えたバナーであったのだから少し出来すぎであろう。

ドログバは結局フル出場を果たしたが、ゴールを割ることができず試合は終了。ガラタサライはアウェイで0-2と敗れ、惜しくもこのラウンドでの敗退となった。

試合後、ドログバのもとには数々の戦友が集まった。

そして、スタンフォード・ブリッジでクラブソングである「Blue is the Colour」が流れる頃、チェルシーサポーターはドログバのチャントを口ずさみ彼の健闘を称えた。その歌声にはきっと、再会できた喜びに加えいくつもの歓喜をもたらしてくれた感謝の気持ちが込められていたはずだ。

プレミアリーグ通算226試合100得点。クラブ史上初となる欧州制覇に大きく貢献した愛すべきアフリカンスター。この偉大な選手を、おそらくチェルシーのサポーターたちは永遠にサポートし続けるのだろう。


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