◎2つの良い前例

では、改めて各大会の開幕戦レフェリーを一覧表にして、これが決勝戦にどうつながっていくのかも調べました。

<表1>開幕戦主審の名前・国籍・大陸連盟・大会内担当試合数・同内容

試合担当内容は以下の通り。
1L:1次リーグ、1R:決勝トーナメント1回戦、2L:2次リーグ、3rd:3位決定戦、
Final:決勝戦、FL:決勝リーグ、GL:グループリーグ、QL:準々決勝、SF:準決勝。
各記号の後の数字は担当試合数。
オレンジ地・太字部分は、決勝戦の主審と同じもの。

これまで、開幕戦を任せられても、決勝戦も吹ける可能性が上がるとは言えませんでした。むしろ意図的に分けていたのかとすら思えます。審判改革が行われる前の2002年までで、開幕戦と決勝戦を両方担当した主審はなく、同じ国籍になったのも1970年メキシコ大会の東ドイツ(決勝はルディ・グレックナー)のみでした。

ところが、2006年と2010年は明らかに違います。2006年のエリソンドは史上初の両試合担当者になりましたし、2010年のイルマトフも準決勝(ウルグアイ-オランダ)まで行きました(決勝戦はイングランドのハワード・ウェブ)。その流れの中でのこの選出ですから、期待がさらにふくらみます。

そしてもう一つ、西村にとっての良いデータが。

20回の大会の中、唯一「決勝戦」がなかったのが1950年、1度目のブラジル大会でした。しかしこの時は4チームの総当たりで戦われた決勝リーグでブラジルとウルグアイが先に2勝し、リーグ最終戦が「事実上の決勝戦」になりました。そう、ウルグアイが逆転勝利で2度目の世界王者になった、あの試合です。これを裁いた主審こそ、開幕戦で登場したジョージ・リーダーだったのです。

あれから64年経ち、マラカナンでは「2度目のW杯決勝戦」が行われることになりました。ブラジル国民はあの悲劇の再現を恐れているでしょうが、日本サッカーにとっては追い風になるでしょう。W杯がますます楽しみになってきました。

◎クイズ・5ヶ月遅れの解答

さて、1月のコラムで書いたクイズの答えを書いてなかった気がします(苦笑)。

問題はこれでした。

過去5大会、主審と代表チームの両方が連続して出場した国は日本を含めて8ヶ国ありましたが、「代表が本大会に行くと主審は選ばれず、逆に代表が予選で敗退すると審判がW杯で笛を吹く」、これが5大会続いた国が1つだけありました。こんな、「どちらか」しか出られない国はどこでしょう?

これ、もしかしたら簡単な問題だったかもしれません。

正解は「ベルギー」。

<表2>最近5大会でのベルギー代表の結果とベルギー人主審の担当試合

かつてはW杯の常連、2002年までは6大会連続出場だったベルギー代表ですが、その後の2大会ではいずれも欧州予選のグループリーグで4位に終わり、プレーオフにすら進めませんでした。ところが、そのベルギーのフランク・デブレーケレは高く評価され、このドイツと南アフリカの両方で選出されました。1966年生まれのデブレーケレは1994年に国内トップのジュピラーリーグ主審、1998年に国際主審となり、2005年にはU-17W杯決勝のメキシコ-ブラジル戦を担当していました。

そして、この人は2大会連続で日本戦を担当しています。ドイツ大会ではクロアチア戦、南アフリカ大会ではパラグアイ戦。実はアルゼンチンも2大会連続でデブレーケレに割り当てられました(ドイツ大会での韓国戦、南アフリカ大会でのコートジボワール戦。いずれもグループリーグ)。なので、記憶力の良い方なら、当たったかもしれませんね。

デブレーケレは年齢制限にかかり、2012年にピッチから退いて、現在はFIFAの審判インストラクターとなっています。そしてこのブラジル大会では、ベルギーサッカー協会は新たな審判を去年発表の候補者リストにも送り込めませんでしたが、代表は欧州予選を順調に勝ち進み、無敗で3大会ぶりの出場を決めています。

これでW杯前の更新は最後でしょう。

皆さんどうか、眠いけど楽しい、最高の1ヶ月を!


筆者名:駒場野/中西 正紀

プロフィール: サッカーデータベースサイト「RSSSF」の日本人メンバー。Jリーグ発足時・パソコン通信時代からのサッカーファン。FIFA.comでは日本国内開催のW杯予選で試合速報を担当中。他に歴史・鉄道・政治などで執筆を続け、「ピッチの外側」にも視野を広げる。思う事は「資料室でもサッカーは楽しめる」。
ホームページ: RSSSF
ツイッター: @Komabano
フェイスブック: masanori.nakanishi

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