日本代表とブラジル代表の試合が迫っているが、ネイマールと同様に今回注目しておきたいのがドゥンガ体制の“新9番"、29歳のFWジエゴ・タルデッリだ。

名門サンパウロの下部組織出身で、若い頃から注目を浴びてきたジエゴ・タルデッリ。

デビューから間もなくスペイン・ベティスへレンタル移籍するが、欧州のフィジカルや判断スピードの早さに戸惑い無得点。続くレンタル先のオランダ・PSVでも成功することはできなかった。以降も伸び悩み、新たな才能が湯水の如く湧いて出るブラジルにおいては“過去の選手"、もしくは“有力選手の一人"に過ぎない扱いへと降格していた。

転機となったのは2009年、ミナスジェライス州の名門アトレチコ・ミネイロへの移籍だ。同年の全国選手権で19ゴールを記録しあの怪物アドリアーノと並んで得点王に輝くと、第一期ドゥンガ体制のセレソンに初招集。しかし出番は途中出場のみに終わり定着はならなかった。

2011年からは活躍の場をロシア、カタールに移し、さすがに表舞台から姿を消えたかに思われたが、アトレチコ・ミネイロへの復帰がまたも転機となる。2013年に復帰を果たすと、ロナウジーニョ・ガウーショやベルナルらと強力な2列目を形成。クラブに初のコパ・リベルタドーレス制覇をもたらしたのである。

そして今シーズン。ロナウジーニョはチームを去ったが、元セレッソ大阪のレヴィー・クルピ監督の下でここまで全国選手権9ゴールをマーク。W杯後、第二期ドゥンガ体制のブラジル代表で久しぶりの招集を受けると、全3試合に先発。先日の宿敵アルゼンチン戦では代表初ゴールを含む2ゴールを記録し、29歳にしてセレソンのエースに上り詰めたのである。

では彼のプレースタイルはどういったものであろうか。

9番を背負ったフレッジの不調もあり自国開催のW杯で屈辱を味わったブラジルだが、新たな9番に任命されたジエゴ・タルデッリのプレースタイルは典型的なストライカーであるフレッジとは大きく異なる。スピードはあるが突出したものではなく、上背は180cmに満たずやや華奢でパワーがあるわけでもない。しかし体の使い方が巧く、膝下の柔らかいボールコントロールは絶妙で、ポジションを常に移動しながら懐の深い切り返しや高いキープ力で周りを生かしつつ自分も生かされ、最後に決定的な仕事をすることができる。

本質的にはネイマールと同じ1.5列目タイプの選手だが、それがむしろ連携面でネイマール他2列目との好循環を生んでいると言えるだろう。上述のプレースタイルによりゴール前から離れてしまうことが多く、また、どこか“緩さ"を感じさせる外見からも油断してしまいがちだが、その高いテクニックと神出鬼没な動きには十分な警戒が必要だ。

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