「モルック」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか。老若男女を問わず誰でも楽しめるスポーツとして競技人口は急速に広がっているが、実際にプレイしたことがある人や、ルールを知っている人は意外と少ないかもしれない。
試合風景などを軽く見ただけだととても簡単そうで、「もしかしたら自分も日本代表になれるのでは?」と淡い夢を抱いてみた筆者(40代・男性)。

日本モルック協会によると、現在、日本での競技人口は約362万人。
プロリーグが存在しないため、愛好家からトップ選手まで全員がアマチュアとしてプレイ。
毎年開催される「日本モルック選手権大会」などの成績上位者から3名程度が日本代表選手として選抜され、世界大会(国別対抗戦など)へ出場している。

競技人口が少ないスポーツなら、日本代表になれる⁉

「日の丸を背負って、国歌斉唱がしたい!」冬季オリンピック、WBCを見て、すっかり感化された筆者。そこで情報収集を開始。最近、公私にわたってすっかりお世話になりっぱなしのAIアシスタントに「日本代表になれるスポーツは?」と聞いてみた。

すると「マイナーなスポーツであれば、日本代表になれる可能性は高まります」とのこと。そして親切にも、競技人口が少ないスポーツをいくつか挙げてくれた。
ホッケーン、360ボール、アルティメットテーザーボール…。
さすがマイナーなだけあって、聞いたことも見たこともないスポーツばかりだ。そんな中、唯一聞き覚えのある名前を発見した。

それがモルック。
お笑い芸人・さらば青春の光の森田哲矢氏が、以前テレビで語っていたのを見たことがある。確か彼は日本代表に選ばれたと言っていた! 森田氏の腕前はわからないが、もしかしたらオレでも日本代表になれるかもしれない―。そんな希望を胸に、まずはモルックについて調べてみた。

フィンランドの素朴な遊びを元に1996年に誕生

まずはモルックとはどんなスポーツなのか? インターネットで検索すると、一般社団法人 日本モルック協会がすぐにヒットした。さっそく取材依頼をしたところ、すぐにレスポンスがあり、快く応じてくれるとのこと。後日、オンラインで日本モルック協会 代表理事の八ツ賀秀一氏に話を聞くことができた。

「モルックは、フィンランドのカレリア地方の伝統的な遊び、キイッカ(kyykkä)を元に開発されたアウトドアスポーツです。キイッカは夏のコテージや公園などで、家族や友人と楽しむ素朴な遊びでした。昔はそれこそ、その辺に落ちている木の棒を使っていましたが、道具やルールを明文化し、スポーツ競技に発展させたのがモルックです。1996年に誕生しました」(八ツ賀氏)

八ツ賀氏の解説によると、モルックに使用する道具は3つ。
1つ目が競技の名称にもなっている「モルック」で、投げる棒もそう呼んでいる。野球でいうところのボールのようなものだ。
次に「スキット」。モルックを投げて倒す木製のピンで、ボウリングのピンと同じ役割を果たす。ピンの数は12本で、それぞれ1~12の番号が記されているのが特徴。その数字が、獲得点数になるのだ。
そして最後が「モルッカ―リ」。これはモルックを投げる位置を示すもので、ここから足をはみ出すとフォルトになる。公式大会では必須の道具だが、遊びとして行う分にはなくても問題ない。詳しいルールは次回(Vol.2)で紹介するが、簡単にいうと、モルックを投げ、スキットを倒して得点を競い合う。1チーム3〜5名での参加が多く、個人戦やチーム戦などいろいろな形式でゲームを楽しむことができる競技だ。

画像1: 提供:一般社団法人日本モルック協会

提供:一般社団法人日本モルック協会

協会代表理事こそ“日本モルックの父”だった!

画像2: 提供:一般社団法人日本モルック協会

提供:一般社団法人日本モルック協会

フィンランドの片田舎で親しまれていた遊びが、どのようにして遠く離れた日本に伝わったのか。その疑問をぶつけると、八ツ賀氏から衝撃的な言葉が返ってきた。

「モルックを日本に伝えたのは、実は私なんです。本職は医師でして、2008年から2011年までヘルシンキに研究留学していました。その時、同僚に誘われて初めてモルックをやりました。以来、すっかりハマってしまい、帰国時にモルックの道具を大量に日本に持ち込んだのが始まりです。ちなみにフィンランド語のスペルはMölkkyで、正確には“モルッキー”という発音のほうが近いのですが、呼びやすいように“モルック”と名付けたのも私です」(八ツ賀氏)

何と、このお方が“日本モルックの父”だったのか! もし将来、モルックが国民的スポーツに発展した際には銅像が立つほどの功労者ではないか。すでに気持ちはモルッカー(モルック選手)の筆者は、八ツ賀氏を見る目が羨望の眼差しに変わった。モルックとドクターの二刀流。まさに自分にとっての大谷選手だ。しかし、それにしても、見たことのない木の棒を大量に持ち込む謎の日本人を、税関職員はどんな思いで見ていたのだろうか? その光景を想像するとちょっとおもしろい。

結論をいうと、日本代表になれる可能性は大!

2011年に八ツ賀氏によって、日本に伝承されたモルック。その後、代々木公園(東京)などで定期的に練習会を開催するなど、地道な普及活動を続けていったそう。その甲斐あって徐々に認知されていき、2011年に日本モルック協会(Japan Mölkky Association/JMA)を設立。2020年からは一般社団法人として、モルックの普及などに努めている。

「日本モルック協会のほかに、現在では北は秋田から、南は熊本まで、全16の都道府県協会があります。そして日本国内の競技人口は推定362万人にも上っています」(八ツ賀氏)

へっ⁉ 今何とおっしゃいました? さ、362万人?
知らぬ間に、そんなにモルックは日本に浸透していたのか…(絶句)。
日本代表の夢が早々に崩れ落ちそうになったが、よくよく聞くと「当協会が独自に集計したアンケートで、遊びも含めて『一度でもモルックに触れたことがある』と回答した方の数です。公式大会に出場している、本格的な競技人口は1,500人ほどです」(八ツ賀氏)

ビックリしたな~、もう! しかしながら、日本はフィンランドと並び、競技人口が最も多い国の一つとのこと。世界大会は毎年開催されていて、2024年には北海道で自国開催され、大いに盛り上がったという。最後に恐る恐る、あの質問をしてみた。

「あの~、私はまったくの未経験者なのですが、今から日本代表になれますか?」(筆者)
「世界大会は国内大会で優秀な成績を収めた選手に代表権が与えられます。ですので正直厳しいですが、オープン大会という広く門戸を開いている世界的な大会もあります。もちろん参加人数に制限はありますが、エントリーは先着順です。日本モルック協会に選手登録する必要もなく、誰でもエントリーすることができます」(八ツ賀氏)

画像3: 提供:一般社団法人日本モルック協会

提供:一般社団法人日本モルック協会

何と、誰でも世界大会に出場できるのか! 思わぬ回答にテンションが爆上がり。こうして、筆者のモルック日本代表を目指す戦いが始まった…(Vol.2に続く)。

取材・執筆:河合哲治郎、構成:栗山春香

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