例年と異なる「J:COM presents 2026 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」の見どころは?
本場のツール・ド・フランスは1903年に初開催された歴史あるレースで、今年も7月にスペイン・バルセロナで開幕し、パリ・シャンゼリゼでフィナーレを迎える予定。サッカーW杯やオリンピックに並ぶスポーツイベントとして知られており、そんな世界的な大会の名を冠したのが「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」なのである。本大会はツール・ド・フランスをはじめとする自転車ロードレースを主催するA.S.O.とさいたま市がタッグを組んでスタートした。昨年は現地に約94,000人もの観客が訪れるほど、年々人気が高まっている。


昨年の優勝者はヨナス・ヴィンゲゴー(中央)。2位はジョナタン・ミラン(左)、3位はカーデン・グローブス(右) ©SSC
“クリテリウム”とは、市街地などに設けられた短距離のコースを周回する自転車ロードレースのこと。本場のツール・ド・フランスでは厳しい山岳を含む3500km前後を約3週間かけて走行するが、「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」では、さいたま新都心駅周辺の特設コースで実施。1周約3.5kmのコースを17周して競い、タイムトライアルレースでは全長約3.1kmのコースを走る(数字は2025年度の大会情報)。
※レース中の写真は、今回お話を聞いたフリーランスフォトグラファーの向井悟丈さんと最上梨沙さんがドローンで撮影した映像より。
※ドローンによる一般撮影は禁止されていますのでご遠慮ください。

そんな「J:COM presents 2026 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」まで半年をきった。そこで今回は、今年を含め4年連続で同大会のドローン中継を手がけるフリーランスフォトグラファーの向井悟丈さん(右)と最上梨沙さん(左)に、本大会の魅力やドローンだからこそなし得る映像表現について伺った。お二人は10年ほど前から、写真や動画の撮影とともにドローンによるスポーツ中継も手がけるようになったそう。いまやゴルフやサーフィンなど、さまざまなスポーツ中継で活躍中だ。

本大会では例年、沿道で観戦できるチケットのほか、スタート・フィニッシュゲート近くでランチを楽しみながら見られる席があるなど、多彩な席種が用意されているのも魅力だ。ドローン撮影の拠点としているやぐらの間近にも席が設けられており「観戦するみなさんとの距離感が近いのも撮影者として心が高鳴った」と最上さんは話す。
「お客さまと選手の距離が近いというのもこの大会のおもしろさだと思いますし、そうした景色をしっかり撮ることを常に意識しました。昨年大会では選手とお客様が一緒に走るイベントも開催されたんですが、選手がお客様と並走しながら盛り上がったりと、選手の人柄が垣間見られるのもこの大会ならでは。臨場感のある映像だけではなく、そんなシーンを撮れるというのも撮影者として魅力を感じたポイントです」(最上さん)

こうした映像は、どのように撮影しているのだろうか。
「沿道に高さ6mほどのやぐらを組んでもらい、そこをドローンの基地としていました。写真手前に写っているパラソルの右横にあるやぐらです。二人ともそこに登って、僕が操作を担当、彼女がドローンの距離や高さをモニターでチェックしつつ目視で追いながらサポートしてくれています。加えて、足場の下でバッテリーの管理と離発着の監視をしてもらうメンバーにも入ってもらっています」と向井さん。
向井さんいわく、今年は「GMOアリーナさいたま(さいたまスーパーアリーナ)」の改修工事にともない、コースレイアウトが新しくなることにも注目が集まっているとか。
「昨年まではアリーナ内を通過するコースレイアウトが本大会の見どころの一つでしたが、今回はアリーナを外周するコースになるようです。ドローンで中継するにあたって、例年とまた違った景色をお届けできたらと思っています」(向井さん)

選手らが「GMOアリーナさいたま(さいたまスーパーアリーナ)」を通過する様子をとらえたシーン
過去3回にわたってドローン中継を担当するなかで、アリーナ内を通過するポイントは重要な撮影ポイントだったという。
「選手たちが線路やビル群のなかを走りぬけていくシーンは、ドローンだからこそ撮影が実現できたワンシーンじゃないでしょうか。加えて昨年大会では、選手たちがアリーナへ入っていくところをタイミングよく周りの風景を入れてとらえることができたんですよ。まさに市街地で行われているクリテリウムならではのおもしろい映像が撮れたかと思います。(その映像を見て)フランスから来ていたプロデューサーや運営スタッフのみなさんも、大変興奮していました」と振り返ってくれた。
ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムらしい映像とは?
「J:COM presents 2026 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」は、運営や選手のサポートを担うスタッフがフランスから訪れるのも、国内で行われるスポーツイベントとしては独特なところ。撮影中のリクエストについても、通訳を介して指示が入るそうだ。
「中継している最中に、運営担当から「広めの映像をお願いします」といったリクエストも入るんですが、みなさんフランス語で話されるので、通訳の方を通して会話するんですよ。初めての経験でしたし、こうした現場のコミュニケーションの取り方はこの大会ならでは。現地フランスから訪れるプロデューサーが求める映像は、日本人である自分たちとまた違った視点があっておもしろいんです」とは、向井さん。いわく、選手たちが都市のなかを走っている全体像を撮影したいというリクエストが多いそう。

「上空から広い画角で、選手がビル群のなかを走っている風景を撮ってほしい、というリクエストをいただいたんです。この仕事を担当することになった当初、自転車レースの中継でドローンに求められていることは、できるかぎり選手の近くを並行しながら撮るような迫力がある映像だと考えていたんです。もちろんそうした映像も喜んでいただきましたが、選手と日本の街が一緒に映るように撮影したいというリクエストを多くいただいて。やはり世界中を回っている大会だからこそ見せたい部分なのだなと、大会の規模の大きさを実感しました」(向井さん)

重ねて、「選手の表情は前後を走るバイクの中継カメラで撮っているので、私たちは車列を追いつつ、上空からの風景も撮ってほしいとリクエストをいただいていました。トップを走る選手と後続にいる選手との距離感や列の長さは、空から見るのが一番わかりやすいですから。臨場感や順位といったスポーツらしい視点だけでなく、風景を見せたいというのはロードレースならではですし、上空から並走して街も選手も見せられるのはドローンにしかできないことだなと感じました」と、最上さん。
長年培ってきた、魅せながら「伝える」テクニック
フォトグラファーである二人がドローン撮影を始めたのは、12年ほど前。まだドローンが撮影ツールとして浸透していなかったころから扱ってきたという点も、二人の強みだ。知人の紹介で訪れた展示会で興味を持ち技術を学ぶようになったといい、SUP(スタンドアップパドルボード)の世界大会を皮切りにゴルフやサーフィンなどの中継で活躍するようになった。
画角の取り方、視聴者やクライアントに求められていることを汲み取るセンスも、長年フォトグラファーとして活躍してきたからこそ。さまざまな競技スポーツを撮影するなかで、「大切なのは(視聴者に)わかりやすく伝えること」だと最上さんは言う。

「スポーツの魅力であるスピード感や臨場感を伝えるのはもちろん、順位などの情報をひと目でわかるように伝えることも大切。ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムの中継で真上から撮るシーンが多いのも、順位を“わかりやすく伝える”ためでもあります」(最上さん)

「日々の鍛錬がものをいうと互いに実感する日々です。とにかく見ている人に楽しんでいただける映像を撮ることができれば、それが一番」と向井さんは笑う。「今後ドローンが飛行できる範囲が広がって、視聴者のみなさんが見られない視点を届けられる機会が増えたらいいなと思います」と、この先を見据えた思いを聞かせてくれた。
「近年のドローンは、スポーツにおける技術力向上のサポート面でも活躍しているんです」とは、最上さん。「例えばサッカーなら、練習時に上空から撮影した映像をポジショニングなどの解析に活用したり。そうした分野でもお役に立てるようになったらうれしいですね」(最上さん)

最後に、これまでに本大会を撮影したなかで最も感動したシーンを二人に尋ねたところ、「選手たちが一番白熱するファイナルラップを、きれいな夕日とともに撮れたシーンですね。3年前になりますが、いま見返しても当時の気持ちがよみがえります」と話してくれた。二人は今年の「J:COM presents 2026 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」のドローン中継も担当することが決定。本大会をはじめ、これからもさまざまなスポーツ中継においてスポーツファンを楽しませ続けてくれるだろう。
「J:COM presents 2026 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」は、海外招聘選手や国内トップ選手によるクリテリウムレースに加え、タイムトライアルレースや一般体験走行も実施予定。さらに大会当日は、「2026サイクルフェスタ」や「2026さいたまるしぇ in さいたまクリテリウム」も開催されるなど、さまざまに楽しめる内容となっている。コースレイアウトが変更される本年は、これまでとはまた違ったドラマが展開されることを期待したい。
JSPORTS サイクルロードレース【公式】YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/c/jspocycle
お二人がドローン撮影を担当した2025年大会の模様はこちらからチェック!
https://www.youtube.com/watch?v=umyQkGerwpU
【プロフィール】
向井悟丈(むかい さとはる)
ニューヨークで写真を学び、帰国後フリーランスフォトグラファーとして活動を開始。2006年に株式会社STUDIO TRYBECCAを設立し、現在に至るまで広告撮影を中心に幅広く活躍している。建築、スポーツ、ミュージックビデオ、映画など多岐にわたる分野で実績を重ね、2014年よりドローン撮影に着手。ゴルフやサーフィンをはじめ、自転車レースに関しては「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」のほか、過去に「宇都宮ジャパンカップクリテリウム」の中継も担当。
web: https://www.trybecca.com/
ドローンweb: https://www.ysair-inc.com/
ドローンInstagram: @ys_air
最上梨沙 (もがみ りさ)
STUDIO TRYBECCAで写真を学び、2014年にフリーランスフォトグラファーとして独立。広告撮影などを手がけながら個展も開催し作品の発表も行っている。ドローン撮影は現在夫の向井氏をサポートする形で2014年に同時にスタートし、さまざまな撮影に携わっている。
Instagram: @lisamoga31
web: http://www.lisamogami.com
使用機材
DJI Mavic3pro/DJI Matrice30T/Mavic4pro
【開催概要】
「J:COM presents 2026 ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム(J:COM presents 2026 Tour de France SAITAMA Criterium)」
主催:さいたまクリテリウム組織委員会、一般社団法人さいたまスポーツコミッション
共催:埼玉県、さいたま市、A.S.O.(Amaury Sport Organisation)
特別協力:さいたまクリテリウム推進委員会
競技主管:公益財団法人日本自転車競技連盟
開催日:2026年11月15日(日)
会場:さいたま新都心駅周辺
内容(予定):(1)クリテリウムレース(海外招聘選手、国内選手によるレース) 、(2)タイムトライアルレース、 (3)コース及びイベント会場での一般参加体験イベント 、(4)スポンサー企業・自転車関連企業の PRブース 、(5)にぎわい創出イベント、(6)パブリックビューイング、(7)海外招聘選手との交流
https://saitama-criterium.jp/
※ドローンによる一般撮影は不可
【同日開催イベント】
「2026 サイクルフェスタ」
開催日:2026年11月14日(土)、15日(日)(予定)
会場:サイクルフェスタ特設会場(さいたま新都心公園周辺)
内容(予定):自転車体験ゾーンや交通安全イベント、自転車関連のブースなど
入場料:無料
「2026 さいたまるしぇ in さいたまクリテリウム」
開催日:2026年11月14日(土)、15日(日)(予定)
会場:さいたま新都心けやきひろば 2 階
内容:スイーツや飲食物の販売、協賛企業の飲食・物販・PRブースなど
入場料:無料
取材・執筆:金城和子
編集:山戸尚美

