ラグビーW杯オーストラリア大会まで、いよいよあと1年。日本代表は9月に開催された国際大会「パシフィック・ネーションズカップ」で7年ぶりに優勝するなど、確かな成長を見せている。その勝利の要因として欠かせないのが前線で体を張り、スクラムやモールで圧力をかけ続けたフォワード陣の奮闘だ。その中心にいたプロップ・竹内柊平(東京サンゴリアス)の歩みとともに、フォワード陣の現在地に迫っていく。

苦難を乗り越えてつかんだ、歓喜のビッグタイトル

「うれしすぎて、言葉にならないですね……。自分たちがやってきたプロセスを信じて、それが結果となって返ってきた。勝ったこと以上に、やってきたことの成果が出たことがめちゃくちゃうれしいです」

毎年秋に開催されるパシフィック・ネーションズカップ。日本はフィジーとの決勝戦に20-15で勝利。2019年大会以来、7年ぶりの優勝を果たした。その試合後、満面の笑みで冒頭の喜びの声をあげてくれたのが3番プロップの竹内柊平だ。年代別代表とは無縁。全国的には無名だった男が、いまや日本代表フォワード陣の中心にいる。

「去年も一昨年も、いい準備をしてきたのにフィジー相手に勝てない試合が続いていました。それが、今日やっと……。僕らは今年、『共に超速』というコンセプトを掲げていて、みんなで何かを成し遂げようと取り組んできました。それが今日、フィジー相手に表現できたし、だからこそ、勝った喜びをみんなと共有できることは最高ですね」

日本は2024、2025年と2年連続で、パシフィック・ネーションズカップ決勝でフィジーに敗れていた。過去2大会の決勝、そして今回と、3年連続でフィジーとの決勝に先発した竹内だけに、喜びもひとしおだった。

そして、もうひとつ。竹内がこの優勝に込めた思いがある。代表入りするまでラグビー界のエリート街道とは無縁だった竹内にとって、この優勝はラグビー人生で初めてと言えるビッグタイトルだった。

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無名の存在から日本代表へ

宮崎県出身の竹内は、全国大会とは無縁の宮崎工業高校から九州共立大学へ進学。さらに当時2部だった浦安D-Rocksから日本代表入り。有力選手は関東・関西の大学に進むことが当然のラグビー界において、将来が嘱望されるような選手ではなかった。

それでも、竹内が最終学年で主将に就任すると、九州共立大は全国大学選手権に初出場。体育教師を目指していた竹内にもリーグワンから声がかかるなど、徐々に道が開けていく。

大学卒業から2年後の2022年、ついに日本代表での初キャップを獲得。当時、所属していた浦安D-Rocksはその時はまだリーグワン2部。無名高校、無名大学出身、さらに2部所属の選手が日本代表入り……その異色の経歴も相まって、一躍注目を集める存在となった。

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2023年のW杯出場も期待された竹内だったが、プロップ枠の最後の一席を垣永真之介(東京サンゴリアス)と争い、最後の最後でW杯代表の座を逃す形に。この悔しさから、「世界一のタイトヘッド(右プロップ)になる」と公言するようになり、さらにプレーに凄みを増していった。

2024年、エディー・ジャパンが発足すると、不動の3番としてほとんどの試合で先発出場を重ね、日本代表になくてはならない存在に。所属チームも、日本ラグビー界の名門・東京サンゴリアスへの移籍を果たす。

「世界一になるため、とにかく厳しい環境に身を置きたかった。経験豊富な選手がたくさんいる環境で、リーダーシップの強いカルチャーを学びたかった。サンゴリアスには垣永さんを筆頭にタイトヘッドのポジションにいい選手ばかりいて、ここでチーム内競争に勝ち続けて自分のレベルを上げることで、もっと強くなれると考えました」

151本のモールで培った自信

大学卒業後、右肩上がりでステップアップを続けてきた竹内。だが、今季の代表シリーズでの大一番、フランスとの試合では久しぶりにベンチメンバーからも外れる苦い経験も味わった。

「ここ数年、チームでも代表でもずっと試合に出続けてきたので、メンバー外は悔しかったですね。エディーさんからは、スクラムの安定感や駆け引きの部分で課題を指摘されました。改めて自分のスクラム、チームとして目指している『ゴールドエフォート(献身的なハードワークの連続性)』の数値を見つめ直すいい機会になりました」

もっとも、竹内も不在だったフランス戦では、ラインアウトからのモールでことごとくフランスの圧力に屈し、何度もトライを献上する形に。その後のオーストラリア代表との試合でもモールで押し込まれる場面が目立つなど、モール勝負で世界の強豪相手にどう伍していくかが日本代表フォワード陣の新たな課題となった。だからこそ、8月の網走合宿ではとことんモール練習に明け暮れた。その数、151本。

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実際、フィジー戦ではそのモールが勝敗の鍵を握った。バックス陣のアタックがなかなか決まらないなか、最初のトライはモールを押して押して奪ったものだった。

「151本。網走合宿ではこれだけの数のモールディフェンスの練習を重ねました。151本モールディフェンスをしたということは、151本モールアタックもしています。全員がモールにフォーカスしたことによって、フィジー戦でもセットプレーで相手エリアに入ることができたと思っています」

次戦は10月24日、再びフィジーと激突!【リポビタンDチャレンジカップ2026】

男子日本代表の次戦は10月24日(土)、東京・秩父宮ラグビー場で行われる「リポビタンDチャレンジカップ2026」。パシフィック・ネーションズカップ決勝で激闘を繰り広げたフィジー代表と、約1カ月ぶりに再戦する。

11月にはヨーロッパで世界の強豪国との対戦も控えている。1年後に迫るW杯で勝つために何が通用し、何が足りないのかを測る格好の機会となるのは間違いない。鍵を握るのは、日本の武器となってきたフォワード陣のセットプレーだ。

「自分たちはセットプレーに自信を持っています。ラインアウトしかり、スクラムしかり。相手を破壊するくらいの気概で日々取り組んでいます。練習はかなりハードですが、チームとしてさらにフィジカリティを出せるように準備しています」

無名の存在から、日本代表のリーダー陣にまで上り詰めた竹内。その歩みは、世界の強豪国に割って入ろうとする日本代表の姿とも重なる。1年後の大舞台へ、竹内はワクワクする胸の内を明かす。

「残り1年という期間は、長いように見えて、本当に短くて一瞬のはず。この1年間でどれだけ準備ができるか。1人ではなく、チームとしてコネクトしていくことで、日本のラグビーはもっと強く、もっと自分たちの力を発揮できるはずです」

【取材・文=オグマナオト】
ライター/構成作家。書籍執筆や構成、インタビューを手掛けるほか、テレビ朝日「報道ステーション」スポーツコーナー、プロ野球解説者YouTubeなどスポーツ番組での構成作家も担当。著書に『早稲田とスポーツ、覇者の150年』など。

2026年 ラグビー日本代表戦

◎国際親善試合【リポビタンDチャレンジカップ2026】
・10月24日(土)14時50分 vsフィジー代表(@東京)
 
 放送・配信:日本テレビ系全国ネット、J SPORTS 1、Hulu、J SPORTSオンデマンド

◎ネーションズチャンピオンシップ2026
・11月8日(日)vsウェールズ代表(@ウェールズ)
・11月15日(日)vsイングランド代表(@英国)
・11月21日(土)vsスコットランド代表(@スコットランド)
・11月27〜29日※順位決定戦(@英国)
※試合日は日本時間

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