イラストレーター志望の美術部員が、まさかの陸上部へ入部
中学生の頃から足の捻挫などでよく私の治療院に通っていた女子高生のSさんは、自他共に認める大の運動嫌いでした。当時は美術部に所属していて「将来は素敵なイラストレーターになりたい」と夢を語る物静かな女の子でした。しかし、彼女がたまたま進学した先は、地元でも有名なスポーツに力を入れている高校だったのです。入学後も相変わらずよく転んではケガをして来院する彼女を見て、私は少し心配になり「イラストレーターの仕事も実はすごく体力勝負らしいよ。ケガ防止の体力づくりのためにも、学校で少し運動してみたらどう?」と軽い気持ちでアドバイスをしました。すると、彼女はその言葉を真っ直ぐに受け止めてくれたようで、なんと運動嫌いだったはずの彼女が陸上部に入部したと報告してくれたのです。元々とても真面目で芯の強い性格のSさんは、運動が苦手ながらも決して休むことなく日々の部活に参加し、周りのハイペースに惑わされることなく常に自分のペースを守って黙々と走り続けていました。
猛暑のグラウンドで判明した驚きの心肺機能と、県大会での活躍
うだるような暑さのある夏の日。その日の陸上部の練習は過酷を極めました。強豪校ならではの厳しいトレーニングと真夏の猛暑が重なり、日頃から鍛え抜いている体力自慢の部員たちでさえも次々とバテてしまい、グラウンドに倒れ込んでいきました。しかし、そんなサバイバルのような状況の中で、監督は信じられない光景を目にします。なんと、あの運動嫌いだったSさんだけが、周囲の暑さに全く動じる様子もなく、いつもと変わらぬ一定のペースで涼しい顔をして走り続けていたのです。実は彼女には、自分でも全く気づいていなかった並外れた「高い心肺機能」が備わっていました。その隠れた才能にいち早く気づいた監督から、すぐに長距離走の選手へ転向するよう強く勧められました。そこから彼女の才能は一気に開花し、めきめきと実力をつけていき、ついには県大会の長距離種目で優秀な成績を収めるまでに大成長を遂げたのです。苦手意識を持たずにまず一歩を踏み出しチャレンジしてみることで、自分でも思いもよらない才能が開花するかもしれないということを彼女が証明してくれた、素晴らしい夏のエピソードです。
【体験者:10代・女子高校生、回答時期:2026年7月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:おかもとたかひで
鍼灸師の国家資格を保有し、スポーツにおける故障の治療を中心に活動している。特に高校生の部活動でのケガからプレー復帰までの道のりや、ケガ予防を含めたコンディショニング指導に注力しており、過去にはオリンピック選手の治療に携わった経験も持つ。また、自身も千葉ロッテマリーンズの試合観戦に頻繁に足を運んでおり、球場での熱気や、ファンと選手の間で生まれるリアルなエピソードを交えたコラム執筆も行っている。

