これは、子どもがミニバスチームに所属していた頃に、保護者として実際に経験した出来事です。

「指導する」と「支える」、それぞれの役割

ある試合の日、普段チームを指揮している監督が不在になりました。

急きょ指揮を任されたのは、普段からチームに関わっているお父さんコーチです。

慣れない状況の中、お父さんコーチも一生懸命でした。ただ、試合が進むにつれて、少しずつ難しい状況になっていきます。

チームの主軸となる選手は、あと一度ファールをすれば退場。ガードも相手のプレッシャーに苦しみ、思うようにボールを運べなくなっていました。

子どもたちの表情にも、だんだん焦りが見え始めます。

なんとか立て直そうとするお父さんコーチも次第に熱が入り、声にも感情がにじむようになりました。

そして迎えたタイムアウト。

ベンチに戻ってきた子どもたちには、どこか張り詰めた空気が漂っていました。

そのとき、そっと子どもたちに寄り添った人がいました。

試合のスコアラーを務めていた、保護者会の会長です。

会長は戦術を指示するわけでも、プレーについて細かく口を出すわけでもありません。

ただ、子どもたちにこう声をかけました。

「大丈夫よ!いつも通りやろう」

ほんの一言でした。

けれど、その言葉を聞いた子どもたちの表情が、ふっと緩んだのを覚えています。

そして、誰からともなく子どもたち同士で話し始めました。

どうやってボールを運ぶのか。次はどう守るのか。

焦っていた子どもたちが、少しずつ「いつもの自分たち」を取り戻していくように見えました。

その光景を見ながら、チームを支える方法は一つではないのだと感じました。

試合を指揮し、子どもたちに伝える人がいる。

すぐそばで見守り、必要なときに安心できる言葉をかける人もいる。

そして、その大人たちに支えられながら、自分たちで考え、立て直していく子どもたちがいる。

スポ少は、保護者と子どもの距離がとても近い場所です。

近いからこその難しさもありますが、その距離の近さが、いざというときにチームを支える力になることもあります。

監督がいなかったあの日。

指導する人、支える人、そして自分たちで考える子どもたち。それぞれができることを重ねながら、一つの試合を乗り切りました。

監督だけがチームをつくっているわけではない。

あの日のタイムアウトは、スポ少ならではの大人と子どもの距離の近さ、そしてチームを支える人たちの存在に、改めて気づかされた出来事でした。

【体験者:30代・女性、回答時期:2026年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:サトミ

学生時代は約10年間スポーツに打ち込み、現在は2児を育てる30代。競技経験と保護者としての経験を生かし、スポーツの魅力や親子の成長、スポーツの現場で生まれる人間ドラマを中心に執筆している。

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