高専1年生の夏、アーチェリー部で県外の遠征試合へ
私は高専のアーチェリー部に所属し、1年生の夏、県外の遠征試合に参加しました。
同じ学年のAくんとは、練習中に言葉を交わすことがほとんどなく、同級生というより「同じ場所で練習している人」に近い距離感でした。前日の練習で予備の弦を使い切っていたことも、当日は気にも留めていませんでした。
射場に入る直前、練習で引いた瞬間に弦が切れた
異変が起きたのは、射場に入る直前の練習でした。弓を引いた瞬間に弦が切れ、私は頭が真っ白になりました。
替えを探そうにも、予備の弦は前日に使い切ったばかりです。顧問は席を外しており、周囲を見渡しても頼める相手はいませんでした。頭に浮かんだのは「棄権」の2文字です。
黙って予備の弦を差し出した、一番無口な同級生
棄権が頭をよぎったとき、Aくんが黙って自分のケースを開け、予備の弦を取り出しました。私に手渡しながら、「サイズ合うと思う」とだけ言ったのです。
なぜ持っていたのかを聞くと、返ってきた答えは短いものでした。
「先週から毛羽立ってたから、一応持ってきた」
道具の管理の甘さを突きつけられました。同時に、ほとんど話さない相手が先週から私の弦を見ていたのに、まったく気づかなかった自分が恥ずかしくなったのです。
借りた弦で臨んだ試合と、その後に変わったこと
借りた弦を張り、私はそのまま試合に臨みました。結果は自己ベストに届きませんでしたが、途中で棄権することなく、最後の1本まで射ることができたのです。
以来、私は予備の弦と部品を多めに持ち歩くようになりました。道具の話をきっかけに、Aくんと言葉を交わす機会も増えたのです。
まとめ
試合直前に弦が切れた経験は、道具の管理を自分の責任として受け止めるきっかけになりました。棄権を覚悟した場面で最後まで射ることができたのは、黙って予備の弦を差し出してくれた同級生がいたからです。
部活動では、声の大きい人だけが仲間を支えているわけではありません。今使っている道具に少しでも傷みがあるなら、次の練習日までに消耗している部分を1か所だけ確認してみてください。小さな確認が、本番の1本を守ってくれます。
【体験者:20代・男性、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:Yutel_06
幼少期からさまざまなスポーツに親しんできた、10代の現役学生ライター。合気道やテニス、アーチェリーなど、ジャンルの異なる競技と向き合ってきた。自身の経験に加え、周囲にもスポーツに取り組む友人や知人が多く、競技の裏側や選手ならではの悩み、恋愛、人間関係など、リアルなエピソードに触れる機会がある。そうした実体験や身近な声をコラムとして執筆している。

