誰もやりたがらなかった長縄の回し手
跳ぶ側は人数が多く、跳んだ回数がそのままクラスの記録になりました。回し手は数字に残らないうえ、引っかかると責任を負わされる立場でした。
役割を決める場で、手を挙げた人は誰もいませんでした。押し付け合いが続いた末にじゃんけんとなり、負けた同級生のHくん(当時18歳・男性)が渋々引き受けたのです。
記録が伸びないたびにHくんへ集まった視線
練習が始まると、跳ぶ側から「縄が高い」「速すぎる」と注文が飛び、記録が伸びないたびに視線がHくんへ集まりました。名指しした人はいませんでしたが、原因は回し手にあるという空気が固まっていったのです。
3日目、Hくんは何も言わずに教室へ戻ってしまいました。筆者が追いかけて話を聞くと、中学の体育祭でも回し手を任され、「お前のせいで引っかかる」と言われた経験を打ち明けてくれました。
本番前日、Hくんが自分から出した提案
本番前日の練習で、Hくんはクラス全員に向かって「もう一回やる。ただし高さは跳ぶ側が合わせてほしい」と言いました。押し付けられた役を、自分の言葉で引き受け直した瞬間でした。
筆者は回転数を数える係を交代制にし、跳ぶ側が縄に入るタイミングをそろえる練習へ切り替えたのです。
本番の記録と、翌年から定着した形
本番の記録は、学年2位でした。跳んだ回数よりも先に、クラスからHくんへ拍手が起きました。
翌年から、クラスでは回し手を最初に決め、2人1組で交代する形が定着しました。
まとめ
押し付け合いで決まった回し手が、本番前日に自分から条件を口にしたことで、クラスの練習は変わりました。記録は学年2位に届き、跳んだ回数より先に拍手がHくんへ向けられたのです。
目立たない役割を担う人は、どのチームにもいます。次の練習では、記録を出した人より先に、支えていた人の名前を呼んでみてください。
【体験者:20代・男性、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:Yutel_06
幼少期からさまざまなスポーツに親しんできた、10代の現役学生ライター。合気道やテニス、アーチェリーなど、ジャンルの異なる競技と向き合ってきた。自身の経験に加え、周囲にもスポーツに取り組む友人や知人が多く、競技の裏側や選手ならではの悩み、恋愛、人間関係など、リアルなエピソードに触れる機会がある。そうした実体験や身近な声をコラムとして執筆している。

