会社の上司が、腕時計の警告をきっかけに体の異変へ気付いた話です。

平坦な道で鳴った警告音

これは、私の会社の上司の話です。40代になっても週末のサイクリングを続ける上司は、新しく買った腕時計で心拍数を測るようになりました。ある涼しい朝、仲間と平坦な河川敷をゆっくり走っているのに、画面には180前後の数字が表示されます。

機械の誤作動だと思って走り続けましたが、警告音は何度も鳴り、休憩しても動悸が治まりません。同行していた仲間が「今日はやめよう」と自転車を押し、近くの休憩所まで付き添いました。

体力不足だと思った数週間

実はその数週間前から、短い坂でも息が上がる日がありました。

上司は年齢や練習不足のせいだと考え、平日の夜にも自転車へ乗っていたそうです。

しかし、腕時計を見ると、軽い運動の日にも心拍数が急に上がる時間帯の記録が残っていました。仲間から「数字が間違いでも、動悸まで無視しない方がいい」と言われ、その日のうちに家族へ相談します。

症状が落ち着いた後も自己判断で自転車を再開することはせず、翌週に循環器内科を受診しました。

検査で見つかった不整脈

医師へ腕時計の記録と症状を伝え、心電図などの検査を受けた結果、不整脈の一種が見つかりました。運動の負荷や治療については医師と相談し、しばらく自転車を休むことになります。

上司は「もっと鍛えれば治る」と思っていた自分を振り返り、走行を止めてくれた仲間へ何度も礼を言いました。

腕時計だけで病気を判断できるわけではありません。それでも、普段と違う数値と体調が重なったことが、受診するきっかけになりました。

速さを競わない復帰の日

治療を受け、医師から運動再開の許可が出た後、上司は短い距離から自転車へ戻りました。

最初の日は仲間も速度を合わせ、河川敷の休憩所まで走って引き返します。

以前のように走行距離を増やすことだけを目標にせず、体調と記録を確認し、異変があれば止まることを決めました。

現在は地域のサイクリング仲間へも、「機器の数字をうのみにする必要はないけれど、体の違和感は放置しないで」と伝えています。警告音は、速く走るためではなく、長く楽しむための合図になりました。

【体験者:40代・男性、回答時期:2026年8月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:タニグチ
小学1年から水泳、4年から野球に打ち込み、大学卒業まで十数年をグラウンドで過ごしてきた30代。高校では主将を務め、大学では神宮の舞台にも立った。引退後は中学硬式(シニア)の指導者も経験し、「する」「観る」「教える」すべての視点でスポーツと向き合ってきた。その中で、勝敗の記録には残らない人間関係や、試合の裏側で起こる思わぬドラマに強く惹かれるように。チームメイトや教え子、友人・知人から聞いたリアルなエピソードを中心に取材し、執筆している。

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