会社の部下であるAの高校時代のエピソード。インターハイ予選の大一番で先制点を決めた直後、派手なゴールパフォーマンスに挑戦した結果……

強豪校から奪った待望の先制点

これは、私の会社の部下で、現在20代のAさんから聞いた話です。

Aさんは高校時代、サッカー部でFWを務めていました。忘れられない出来事が起きたのは、インターハイ予選準々決勝でのことです。

相手は強豪校で、ピッチには雨が降ったあとが残っていました。緊張感のある試合が動いたのは前半15分です。

Aさんが相手ゴールを破り、チームに待望の先制点をもたらしました。大一番で強豪校から奪ったゴールに、応援席から大きな歓声が上がります。

欧州選手をまねた空中一回転

先制点の興奮に包まれたAさんが選んだのは、欧州の選手が披露していた、空中で一回転して着地する派手なゴールパフォーマンスでした。

大舞台で得点を決めた勢いのまま、Aさんは歓声に応えるように助走をつけ、思い切って宙へ跳び上がります。

体を一回転させるところまでは思い描いたとおりで、見ていた人たちも次に来る格好いい着地を待っていたといいます。

しかし、その日の芝は雨を含んで緩んでいました。得点の喜びでいっぱいだったAさんは、着地点の状態まで気にする余裕がありませんでした。

歓声が爆笑へ変わった着地

一回転を終えて足をついた瞬間、Aさんのスパイクは芝の上を滑りました。

踏ん張る間もなく背中から倒れ込み、その勢いのまま泥の上を滑っていったのです。華麗に決めるはずだった着地は、ユニフォームを泥だらけにする派手な転倒へ変わりました。

さっきまで響いていた歓声は、状況をのみ込んだ観客の爆笑に変わります。祝福に向かっていたチームメイトだけでなく、監督も笑いをこらえられません。

さらに、先制点を奪われた相手DFまで顔を緩めていました。敵味方の区別なく笑われるなか、Aさんは何事もなかったように立ち上がるしかなかったそうです。

勝利後も消えなかった着地の記憶

試合はAさんたちの勝利で終わりました。本来なら、強豪校を相手に決めた先制点が試合後のミーティングで称賛されてもおかしくありません。

ところが、仲間たちの話題はゴールではなく、空中一回転からの着地失敗で持ち切りでした。チームメイトから「あのゴールより、着地の方がすごかった」と言われ、監督も転倒の場面を思い出して笑っていたといいます。

それから10年以上が過ぎた今も、同窓会で当時の試合が話題になると、真っ先に持ち出されるのは泥の上を滑った姿です。先制点と勝利は記録に残りましたが、派手な失敗は仲間全員の記憶に残り、今では場を盛り上げる鉄板ネタになっています。

【体験者:20代・男性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:タニグチ
小学1年から水泳、小学4年からは野球に打ち込み、大学卒業までの実に十数年をグラウンドで過ごしてきた30代。高校では主将としてチームをまとめ、大学では神宮の舞台にも立った。引退後は中学硬式(シニア)で指導者としてもキャリアを重ね、「する側」「観る側」「教える側」のすべての視点からスポーツと向き合ってきた。
プレイヤー・キャプテン・指導者という異なる立場を経験する中で、勝ち負けの記録には残らない人間関係や、試合の裏側で起こる思わぬドラマに強く惹かれるように。チームメイトや教え子、友人・知人から聞いたスポーツにまつわるリアルなエピソードを中心に取材し、感動や驚き、時にはちょっとした仕返し劇まで、スポーツの現場で生まれる人間ドラマをコラムとして執筆している。

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