4歳で始めたアイスホッケーと自主練習の日々
娘が4歳の時の話です。アイスホッケーを始めたばかりの娘は、リンクの休館日である水曜日を除き、ほぼ毎日練習に通っていました。
保育園から帰るとお弁当を持ってそのままリンクへ向かい、着替えを済ませてスケーティングの基本動作を繰り返す自主練習に入るのが日課でした。誰かに強制されたわけではなく、娘自身が望んで続けていた習慣で、休むという発想自体がないようでした。
繰り返された「練習なんて意味ないよ」の誘い
チーム内には娘と年齢の近い子が少なく、同じチームに所属する2年生の女の子は、普段から数少ない接点のある相手でした。
その子が、自主練習のたびに声をかけるようになります。「練習なんてしなくていいよ、意味ないよ」娘に声をかけてくるたびに「パパとママが、練習の仕方が間違ってるって言ってた」とも口にしていました。数週間にわたってほぼ毎回、同じ言葉で遊びに誘ってくるのです。
誘われるたびに手を止め、困った顔で立ち止まる娘の姿がありました。
車の中で教えた伝え方
ある日の帰り道、練習と友達づきあいの間で板挟みになった娘は、断り方が分からないと私に相談してきました。
娘の話をよくよく聞いてみると、その子は両親の言葉をそのまま伝えているだけで、悪意があったわけではなさそうでした。
私は娘に「今練習中だから遊ばないよ、また今度遊ぼうね」と伝えてみるよう教えました。相手を否定せず、今は練習中であることだけを伝える言い方です。娘は車の中で何度もその言葉を繰り返し、声に出して確認していました。
変わらなかった練習、続いた友情
次に誘われた時、娘は教えた通りの言葉をそのまま伝えました。私はその様子を目の前で見ていました。
2年生の女の子は特に言い返すこともなく、その場を離れていきました。
それ以降、練習中に声をかけられることはなくなり、休憩の時間になると二人でリンクサイドに座って話す関係に落ち着きました。
4歳にして身につけた、揺らがない伝え方でした。誘惑にただ耐えるのではなく、伝え方ひとつで練習との向き合い方と友人関係を両立させた一幕です。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:村岡栞里
子どものアイスホッケー環境を整えるため、九州から北海道への移住を果たした、並外れた行動力を持つ親目線ライター。5年を超えるキャリアを経て、新天地でさらなる高みを目指す娘の競技生活を「現在進行形」で全力サポートしている。これまでの道のりで、指導者や保護者間のリアルな人間模様、子どもたちが直面する葛藤を肌で感じてきた。今もまさにその渦中に身を置き、苦楽を共にしているからこそ紡げる「生きたエピソード」が最大の強み。現場のリアルな息遣いが伝わるコラムを執筆している。

