体育館に響き渡る顧問の声と、広がっていく不穏な空気
中学時代バレーボール部に所属していた私。顧問はA中学校と頻繁に練習試合を組んでいた。
私はこのA中学校との練習試合がとても億劫だった。両校の顧問からは常に怒号が飛び、練習はいつも険悪な雰囲気だったからだ。生徒同士で気軽に会話をすることなど、とてもできる空気ではなかったことをよく覚えている。
「まさかこんなところで……?」
時は流れ、私は高校生になり入学式を迎えた。新たな環境に足を踏み入れる緊張や不安で押しつぶされそうになりながら貼り出されたクラス発表の紙を見ると、自分の名前の下に覚えのある名前が。それはA中学校バレー部のAさんだった。
Aさんは名前が珍しかったこともあり、練習試合のときに呼ばれていた名前を私は確かに覚えていた。そして教室に入ると、中学時代ネット越しに顔を見ていただけだったAさんがそこにいた。
偶然の再会──蘇る中学時代の記憶
目が合った瞬間、嬉しさと緊張が同時に押し寄せてきた。
そしてお互いが同時に「バレー部だったよね!? 練習試合してたよね!」と勢いよく言った。
人見知りの私が自分から口を開いていたことに驚き、そしてAさんが私のことを覚えていてくれたこともとても嬉しかった。
「本当はあのとき話したかったのに、顧問の目が怖くて話せなかったよね……」
「練習試合のときいつも怒られてたよね」
と、顧問の愚痴もはさみつつ中学時代の話に花を咲かせた。話すことができなかった中学校3年間を取り戻すかのようだった。
すべてのきっかけは【バレーボール】
私は陸上部に、Aさんは帰宅部。お互い高校でバレーボールを続けることはなかった。しかし高校生のあのときから30代の今までずっと、私にとって信頼できる素晴らしい友人である。
体育の時間に、
「中学でバレーボール部に入って、あのとき練習試合を組んでいなかったらこうして出会うこともなかったんだね。出逢いに感謝だ!」
と言いながら、初めてAさんとパスをしたバレーボールの授業は今でも忘れない。
中学時代にそれぞれ苦しい思いをしていた私とAさんは、練習試合を通して会話はなくとも同じ苦労をわかちあっていたのかもしれない。一生の仲となる人との出会いはどこにあるかわからないものである。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:村木 あすみ
学生時代からスポーツ・部活動に打ち込んできた30代2児の母。また、公立中学校教員として勤務した経歴もあり、部活動にも携わってきた。自身のスポーツ経験や観戦、そして教育現場で見聞きしてきたリアルなエピソードをコラムとして執筆している。

