走り始めて半年の私を、元陸上部の友人がハーフマラソンに誘った
私が地元のハーフマラソンに出場したのは、社会人1年目の秋でした。走り始めたのは半年ほど前で、大会は初めてです。
誘ってくれたMさんは、学生時代に陸上部で走っていました。それでも「最後まで一緒に走ろう」と言ってくれたため、私は不安よりも心強さを感じていたのです。目標は2時間を切ることでした。
5kmを過ぎたところで、Mさんは「先に行く」とだけ言った
走り出してしばらくは、2人で並んで進みました。ところが5kmを過ぎたあたりで、Mさんは「先に行く」とだけ言い、前へ出て行ってしまったのです。
約束を破られたように感じた私は、追いつこうと自分の力に合わない速さまでペースを上げました。10km手前で息が上がり、12kmを過ぎると脚が重くなりました。歩こうかと何度も迷ったのです。
15kmの給水所で、紙コップを2つ持ったMさんが待っていた
うつむいたまま進んでいた15kmの給水所で、顔を上げました。すると、紙コップを2つ持ったMさんが、コース脇に立って私を待っていたのです。
Mさんは、私が序盤から自分の速さに合わせて無理をしていると気づき、あえて距離を取って先の給水所で待つことにしたと明かしてくれました。置いていかれたと思い込んでいた区間は、自分のペースを取り戻す時間だったのです。
並んで走った残り3km、そして今も続く月に一度のラン
残りの3kmは、2人で並んで走りました。私は歩かずに走り切り、目標の2時間を切ったのです。
大会のあとも、私はMさんと月に一度は走っています。来年の大会では、初心者の後輩のペースメーカーを務めるつもりです。前に出て引っ張るだけが、一緒に走ることではないと分かりました。
まとめ
「最後まで一緒に走ろう」という約束は、隣を離れないことだけを意味しません。5kmで前に出たMさんの判断があったからこそ、Kさんは自分のペースを取り戻せました。
誰かと大会に出るなら、走り出す前にお互いのペースを確認しておく。それだけで、Kさんが抱えていた誤解は減らせます。次の大会でKさんは、支えてもらった側から後輩を支える側へ回ります。
【体験者:20代・男性、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:Yutel_06
幼少期からさまざまなスポーツに親しんできた、10代の現役学生ライター。合気道やテニス、アーチェリーなど、ジャンルの異なる競技と向き合ってきた。自身の経験に加え、周囲にもスポーツに取り組む友人や知人が多く、競技の裏側や選手ならではの悩み、恋愛、人間関係など、リアルなエピソードに触れる機会がある。そうした実体験や身近な声をコラムとして執筆している。

