審査当日の朝、いつも組んでいた同学年の相手が欠席した
稽古で組む相手は、たいてい同学年のTくんで、昇級審査に向けた練習もTくんと重ねてきました。
小学6年生の秋、審査の日を迎えました。ところが当日の朝、Tくんが発熱で欠席することになりました。
代わりに組むことになったのは、同じ道場に通いながら、ほとんど組んだ経験のない1学年下のRくんでした。審査は予定どおり行われ、Rくんと臨みました。
間合いも受け身もずれ、技が一つも決まらなかった
審査が始まると、間合いが合わず、受け身のタイミングもずれていました。
普段なら自然に決まっていた技が、Rくんが相手になった途端、一つも決まりませんでした。形にならないまま、次の技へ進んだのです。
途中で頭が真っ白になり、技の順番まで飛ばし、何本目なのかも分からなくなっていました。
残り数本で、後輩が小声でかけてくれた一言
残り数本というところで、Rくんが小声で言いました。
「もう少しゆっくり入ってください」
後輩の一言で、速く動こうとしていた自分に気づきました。速度を落とすと動きがかみ合い、最後の二本だけは形になったのです。
不合格の後、師範の言葉で気づいた半年間
審査の結果は不合格に終わり、悔しさで筆者はしばらく道場の隅から動けませんでした。
声をかけてくれたのは、当時70代の師範でした。
「相手が変わると、何に頼っていたかが分かる」
言われて初めて、決まっていたはずの技がTくんの受けに支えられていたと気づいたのです。
それから半年、筆者は稽古のたびに違う相手と組むよう申し出ました。春の審査では初対面の相手と組んで合格し、復帰したTくんからは「前より投げやすくなった」と言われました。
まとめ
相方の欠席で組んだ後輩の一言と、師範の言葉が、半年の稽古を変えました。不合格という結果は変わりませんが、自分の技が特定の相手に支えられていたと気づけた審査でした。
いつも同じ相手とばかり組んでいると、どこまでが自分の力かは見えにくいものです。次の練習では、普段は組まない相手と一本だけ組んでみてください。崩れた部分こそが、自分の伸びしろになります。
【体験者:20代・男性、回答時期:2026年8月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:Yutel_06
幼少期からさまざまなスポーツに親しんできた、10代の現役学生ライター。合気道やテニス、アーチェリーなど、ジャンルの異なる競技と向き合ってきた。自身の経験に加え、周囲にもスポーツに取り組む友人や知人が多く、競技の裏側や選手ならではの悩み、恋愛、人間関係など、リアルなエピソードに触れる機会がある。そうした実体験や身近な声をコラムとして執筆している。

