暗黙のルールに乗じた、鬼顧問の圧迫指導
私が高校1年生の時、ソフトボール部には「1年生が雑用を行う」という暗黙のルールが存在していた。当時の副顧問だったK先生は、その慣習をいいことに自らの私的な雑用まで私たちに押し付けてきたのだ。
K先生は野球経験者で、指導スタイルはいわゆる熱血派。相手が女子生徒だろうとお構いなしに厳しいノックを浴びせ、ミスが出ればグラウンドいっぱいに怒号を響かせた。先輩たちにとっては聞き慣れた光景だったかもしれないが、入部したばかりの私たちは毎日ビクビクしながらボールを追いかけるしかなかった。
練習や試合が終わるたびに行われる振り返りでも、K先生の口から出るのは「なぜ教えた通りにやらない」「あのプレーは最悪だ」といった、選手たちのやる気をそぎ落とす言葉ばかり。そればかりか、試合中はマネージャーに自分専用のドリンクを用意させ、うちわで仰がせるなど、まるでVIP気取りだ。
エスカレートする私的雑用と、限界を迎えた身体
日が経つにつれて私的な要求はエスカレートし、練習試合への移動車内でマッサージをさせられるなど、部活の域を超えた理不尽な雑務まで強いられた。
さらに練習での過度な負荷がたたり、私は練習試合の合間に肉離れを起こしてしまう。それでも部員たちは、K先生の顔色を伺いながらプレーを続けるしかなかったのだ。
当のK先生はといえば、自分は生徒を熱心に可愛がっていると思い込んでおり、機嫌が良い時だけ手のひらを返したように笑顔で話しかけてくる始末だった。
届いた保護者の告発。自称「良き指導者」のあっけない末路
幸いにも私が2年生になるタイミングで、K先生は野球部の副顧問へと異動になり、私たちは胸を撫でおろした。だが、当然ながら次の被害者となったのは野球部だ。そこでも同様の暴走を繰り返した結果、見かねた野球部の保護者たちがついに学校側へ告発。
K先生は即座に顧問を解任され、その年の春、逃げるように他校へ転勤していった。自分を良き指導者だと信じて疑わなかった男の、あまりにあっけない末路だった。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:kana
学生時代はソフトボールに打ち込み、現在も夫とスポーツ観戦を楽しむWebライター。周囲にはさまざまな競技に携わってきた友人や家族が多く、選手たちの努力や葛藤、チーム内で生まれる人間関係に強い関心を持っている。試合結果だけではなく、その裏側にあるエピソードや思わぬ出来事に目を向け、スポーツの現場で生まれる感動や驚きを、読者にわかりやすく届けるコラムを執筆している。

