何をしても姉と比べられた妹
これは、私の大学時代の友人から聞いた話です。友人は中学から女子アイスホッケーを始めました。4歳上の姉も同じクラブ出身で、地元では有名な選手だったそうです。
友人が入部すると、指導者や保護者から「お姉さんと同じフォワード?」「背番号も同じにするの?」と何度も聞かれました。姉が着けていた7番は空いていましたが、友人は「絶対に着けません」と断り、空いていた99番を選びます。
姉を嫌っていたのではなく、自分を見てくれていない感覚が苦しかったそうです。
得点より守備を選んだ99番
友人は姉と同じフォワードではなく、相手の攻撃を止めるディフェンスを希望しました。派手な得点はありませんが、相手より先にパックへ触れ、体を入れて味方へつなぎます。
高校最後の地区決勝では、優勝候補のチームに押し込まれました。第3ピリオド、同点の場面で相手のエースが抜け出します。
友人はゴール前まで戻り、滑り込みながらスティックを伸ばしてパックを外へ出しました。転んだままベンチを見ると、観客席で姉が古い7番のユニフォームを掲げています。
7の上に貼られた99
よく見ると、7の上に大きな紙の99が貼られていました。さらに胸元には「自分らしく!」と書かれています。友人は思わず笑って立ち上がると、直後の攻撃で味方が決勝点を決め、チームは初優勝を果たしました。
表彰後、姉は古いユニフォームを渡し、「本当におめでとう!自分のスタイルを貫いていてかっこよかった!」と言いました。友人は初めて、姉も周囲の比較を気にしていたのかもしれないと感じたそうです。
違う番号で並んだ姉妹
友人は大学でも99番を選び、ディフェンスを続けました。姉とはプレーの話を避けていましたが、今では試合映像を送り合い、得点ではなく守備の場面を一緒に見ます。
実家には、紙の99が貼られた古い7番と、友人のユニフォームが並んでいるそうです。同じ競技を選んでも、同じ選手になる必要はありません。「自分らしく」が友人のモットーです。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:タニグチ
小学1年から水泳、4年から野球に打ち込み、大学卒業まで十数年をグラウンドで過ごしてきた30代。高校では主将を務め、大学では神宮の舞台にも立った。引退後は中学硬式(シニア)の指導者も経験し、「する」「観る」「教える」すべての視点でスポーツと向き合ってきた。その中で、勝敗の記録には残らない人間関係や、試合の裏側で起こる思わぬドラマに強く惹かれるように。チームメイトや教え子、友人・知人から聞いたリアルなエピソードを中心に取材し、執筆している。

