職場の先輩が、20年ぶりに出た卓球大会で、中学時代の元ペアと対戦相手として再会した話です。

職場チームで出た地域大会

これは、私の職場の先輩から聞いた話です。

40代の先輩は健康づくりのため、会社の卓球チームへ入りました。ラケットを握るのは高校卒業以来です。

地域の大会の団体戦へ出場し、初戦を終えて対戦表を見ると、次の相手欄に見覚えのある名字がありました。中学時代にダブルスを組んでいた同級生と同じ名前です。

卒業後は連絡が途絶え、20年以上会っていません。まさかと思いながら相手コートを見ると、白髪の交じった男性が同じように対戦表と先輩を見比べていました。

あいさつだけで始まった再会

二人はコート中央で向き合い、「やっぱり」と同時に笑いました。話したいことは山ほどありますが、団体戦は進行中です。握手を交わし、「続きは試合後」とだけ約束しました。

中学時代、二人は緊張するとラケットの柄で台の端を2回軽くたたく癖がありました。ダブルスのサーブ前に「大丈夫」の意味で交わした合図です。

じゃんけんを終え、先輩が最初のサーブ位置へ立つと、20年前の体育館の匂いまで思い出したといいます。

台の両側から響いた音

先輩が無意識に柄で台を2回たたくと、向かい側からも「コン、コン」と同じ音が返ってきました。二人は顔を上げ、にやっと笑います。

試合が始まると、昔は味方として知り尽くした相手の癖が、今度は互いの弱点になりました。短いサーブ、深い返球、長いラリーが続き、最終ゲームまでもつれます。

最後は同級生の球が台の端に当たり、先輩が敗れました。ネット越しに握手すると、「20年ぶりに組みたいな」と言われたそうです。

今度は同じ側に立つ二人

試合後、二人は体育館の隅で連絡先を交換し、家族や仕事の話をしました。翌月からは月に一度、一緒に練習する仲になりました。

最初は対戦相手として再会しましたが、現在は地域大会の年代別ダブルスへ同じチームで出場中です。サーブ前には今も、台の端を2回たたきます。

勝つための暗号というより、相手が隣にいることを確かめる音です。20年の空白を埋めたのは長い近況報告ではなく、二人の手が覚えていた「コン、コン」でした。

【体験者:40代・男性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

Qolyコラムニスト:タニグチ
小学1年から水泳、4年から野球に打ち込み、大学卒業まで十数年をグラウンドで過ごしてきた30代。高校では主将を務め、大学では神宮の舞台にも立った。引退後は中学硬式(シニア)の指導者も経験し、「する」「観る」「教える」すべての視点でスポーツと向き合ってきた。その中で、勝敗の記録には残らない人間関係や、試合の裏側で起こる思わぬドラマに強く惹かれるように。チームメイトや教え子、友人・知人から聞いたリアルなエピソードを中心に取材し、執筆している。

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