「甲子園に出てます」新人の挨拶にチームが沸いた
一昨年の春、私が主将を務める草野球チームに、知人の紹介で入ってきたのがMさんでした。初日の挨拶でMさんが「高校で甲子園に出てます」と話すと、チームは一気に盛り上がりました。
Mさんは「ピッチャーで4番を任せてほしい」とも申し出ました。ところが練習では、キャッチボールもほどほどに「肩を温存したい」と言い、打撃練習でも快音はあまり聞かれませんでした。違和感を覚えつつも、本人の強い希望を受け、私はリーグ戦の先発を任せることに決めました。
3回までに5失点、ベンチで打ち明けられた過去
試合では初回から連打を浴び、3回までに5失点。ベンチの空気が重くなる中、私は「甲子園ではどこを守ってたの?」と尋ねました。
しばらく黙った後、Mさんの口から出たのは「ベンチには入りましたが、記録員でした」という言葉でした。高校2年のときに怪我で選手を諦め、3年の夏はスコアラーとして甲子園のベンチに座っていたのです。「経験者だと言えば、すぐに受け入れてもらえると思って」と、Mさんはうつむきました。
スコアラーの経験を生かした配球ノートがチームを変えた
私は「嘘ではないじゃないか」と笑い、次の試合から相手投手の配球記録をMさんに頼むことにしたのです。Mさんのノートで相手エースの決め球の癖が判明し、チームは次の対戦で逆転勝ち。
まとめ
今やMさんは、チームのスコアラー兼代打として欠かせない存在です。打席に立つたびに、ベンチから一番大きな声援が飛んでいます。Mさんの一件は、見栄を張らなくても、自分の本当の強みを出せば居場所はできると気づかされる出来事でした。新しいチームに加わったときは、まず自分が確実にできることを一つ伝えてみてください。
【体験者:30代・男性、回答時期:2026年9月】
※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
Qolyコラムニスト:Yutel_06
幼少期からさまざまなスポーツに親しんできた、10代の現役学生ライター。合気道やテニス、アーチェリーなど、ジャンルの異なる競技と向き合ってきた。自身の経験に加え、周囲にもスポーツに取り組む友人や知人が多く、競技の裏側や選手ならではの悩み、恋愛、人間関係など、リアルなエピソードに触れる機会がある。そうした実体験や身近な声をコラムとして執筆している。

