筆者の友人であるOさんが中学2年生の頃、陸上競技部の合宿で体験した出来事。夏合宿初日に宿舎の靴箱が破壊されていることが発覚。礼儀と規律を重んじる顧問が烈火のごとく怒り狂い、練習は強制終了に。そして部員たちは真相を突き止める!

毎年恒例の“夏合宿”へ

私が当時所属していた陸上競技部は県内有数の強豪校、そして大所帯だった。この部をまとめあげているのは顧問のA先生で、礼儀と規律を重んじる先生だった。練習メニューは厳しいものが多かったが、私たちは着実に力をつけていた。

そして陸上競技部は夏休みになると避暑地で行われる夏合宿が恒例となっていた。その年も私たちは例年通り合宿へと出発した。

和やかなムードが一変、凍りつく部員たち

学校から3時間以上離れた避暑地。無事に到着し、宿の方々に挨拶をしてから練習が始まった。しかし、アップを始めた頃に、突如集合するように連絡が入った。練習が始まったばかりなのに何事だろうと思いながらも言われたとおりに集合場所へと向かった。

集合場所に向かうまでは和やかなムードだった私たちも、顧問の姿が目に入った瞬間に“これはただごとではない”と察した。まさに【鬼の形相】というのだろうか、誰も何も言えないまま静かに、そして微動だにせず整列して待機した。そして全員集合すると「靴箱が壊されていた。この中の誰かがやったことは分かっている」と話したのである。

ある部員が靴箱が壊れていることを宿舎スタッフに報告したのだが、宿のスタッフは私たちの到着前までは靴箱が壊れていなかったことを確認していた。つまり、犯人は陸上競技部の誰かである可能性が高い……という状況だった。

「事実が分かるまで練習中止だ。自分の非を黙っているようなやつらに練習なんてさせないからな」と烈火のごとく怒り、その場を去った。

静寂の時間もついに終わりを迎える

誰一人声を発さず、息を吸うことさえためらうくらいの空気だった。そして部長が立ち上がり、話し始めた。「壊してしまった人は自分で分かっているんだよね? 何も言わなかったらこのまま時間が過ぎていくだけだよ」

それから一体どれくらいの時間が経ったのだろうか。静寂の中で1人、2年生の男子部員Tさんが「……僕が壊してしまいました」と泣きながら名乗り出たのである。靴を数足強引に詰め込もうとしたら、元々老朽化していた靴箱が破損してしまった、まさかこれほどおおごとになると思わず言い出せなくなった、と続けて話した。

“なぜもっと早くに名乗り出なかったんだ”と思う一方、“この空気の中よく勇気を出して話したな、偉い”という気持ちになった私たち3年生。

そして私たちはTさんにこう言った。「一緒にA先生のところに行こう」

靴箱破壊事件から得た教訓とは

結局その日は部員間の話し合いと顧問からの説教で、練習をほとんどできないまま終了。遠方まで足を運んで行う貴重な夏合宿の練習。その練習は1日分潰れてしまった。

しかし、「謝罪は潔く、そして迅速にするべき」という大事なことを学んだ私たちであった。その学びは、練習よりも間違いなく価値のあることだった。

【体験者:30代・女性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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