ソフトボール部のR監督による怒号の日々。だが、父が構えたビデオカメラのレンズに気づいた瞬間、説教は一変する。カメラの存在に怯える監督の滑稽な姿と、娘を守るために立ち上がった父の機転を描いたスポーツコラム。

暴走する監督と、スタンドの「見張り番」

父は週末になると、欠かさず妹のソフトボール部の練習や試合へ足を運んでいた。娘の頑張りを収めるカメラマン役を楽しみつつも、もうひとつの目的は暴走しがちなR監督の「見張り番」だった。

その日も父は三塁側のスタンドから、妹たちのプレーを静かにビデオカメラで追いかけていた。試合は順調に進んでいたが、突如として“それ”は起きた。ベンチからR監督の怒声がグラウンドに突き刺さる。

「お前ら、何やってんだ!!!」

どのプレーが逆鱗に触れたのか、選手も保護者も頭を抱えるばかり。一度スイッチが入った監督の怒り狂いは、誰にも止められないのがいつもの光景だった。

静かに向きを変えたレンズと、消えた怒声

だが、この日の父は違った。バッターボックスを捉えていたレンズを、そっとベンチ前の監督へと向け直したのだ。

赤く点滅する録画ランプ。それに気づいた瞬間、監督の顔からサッと血の気が引いた。あれほど怒り狂っていた説教がピタリと止まり、選手たちは何事もなかったかのようにポジションへと戻っていく。驚いたことに、試合後には「さっきは熱くなりすぎた」と、監督が選手たちに頭を下げる始末。学校への告発を恐れた、必死の保身だったのだろう。

その後、父のもとへやってきた監督は「あの説教はチームに必要な指導だった」とネチネチと言い訳を重ねてきた。だが、父も他の保護者たちも、「また始まったか」と呆れて聞いていた。

録画ボタンを押さなくても効果抜群だった秘策

それ以来、グラウンドには必ず「カメラ」が設置されるようになった。味をしめた親たちが、監督の映る位置にカメラを置くようになったのだ。録画ボタンを押していない日すらあったが、効果は抜群だった。

カメラがある日はおとなしく、ない日はやりたい放題。分かりやすすぎる監督は、保護者が来るたびにオドオドとレンズの有無を気にしながら指揮を執るようになったという。

自分のまいた種とはいえ、なんとも自業自得で情けない「抑止力」の誕生だった。

【体験者:50代・男性、回答時期:2026年9月】

This article is a sponsored article by
''.