練習試合の失点を後輩のせいにした先輩が、自ら求めた動画再生で追い込まれてしまう話です。

試合後、失点の責任を問われて

これは友人A君の高校時代の話です。

高校1年生のA君が、バスケットボール部の練習試合で出場機会をもらった日のことです。守備で相手にノーマークのシュートを許し、ベンチへ戻るなり2年生の先輩から「お前が勝手に動くからだ」と責められました。

A君は相手のボール保持者へ寄り、自分が見ていた選手を空けてしまったのです。ただ、独断で動いた覚えはありません。

「でも、先輩が」と話しかけても、「言い訳するな」と遮られます。近くにいた部員たちは、二人のやり取りを黙って聞いていました。

聞いてもらえなかった説明

試合後の振り返りでも、先輩は同じ場面を持ち出しました。「人の指示を聞かないと、またやるぞ」A君は顧問に説明しようとしましたが、先輩は「動画を見れば俺が正しいって分かります」と言い切ります。

この日は普段どおり、マネージャーがベンチの横に置いた端末で試合を撮影していました。自分の立ち位置を示そうと、先輩が画面を操作します。

A君が移動したところで映像を止め、「ほら、ここです」と顧問に見せました。画面だけなら、確かにA君が相手を放したように見えます。

映像と一緒に流れた声

顧問はすぐに結論を出さず、「少し前から、音も出して」と頼みました。すると映像の中から、「A、そっち行け! 俺がこっち見る!」という先輩の声が響きます。

A君が動いたのは、その直後でした。先輩は相手を引き受けると言いながらボールを追い、二人とも同じ場所へ寄っていたのです。

「今の、誰の指示?」顧問の問いに、先輩は画面を見たまま「自分です」と答えました。先ほどまでの勢いはありません。A君はようやく、「その声を聞いて動きました」と最後まで説明できました。

訂正するのも、みんなの前で

顧問は二人に位置を確認させたうえで、先輩へ「自分が呼んだ動きを、勝手に動いたと言うのは違う」と伝えました。先輩は部員の前で「俺の指示だった。さっきは申し訳ない」と訂正します。

A君が欲しかったのは、まさにその一言でした。翌日の練習では、誰が相手を引き受けるかまで声を掛け合い、同じ場面をやり直します。

その後、先輩がプレーを振り返るときの言葉も、「お前のせいだ」から「まず動画を見よう」に変わりました。A君も今度は、音を消さずに再生ボタンを押したのです。

【体験者:30代・男性、回答時期:2026年9月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

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