少しずつ、しかし確実に物がなくなっていく日々
中学2年生の時の話。所属していたバレーボール部では、いつからか部員の私物が頻繁になくなるようになった。自分の不注意でどこかに落としてしまったのかと思うような小さなものから始まったのだが、だんだんエスカレートしていき、部内の誰かが盗んでいるのではないかと怪しむ声があがっていた。
一体、どちらのもの?
そんなある日の練習時、事件は起こる。Kさんがカバンに入れたはずのタオルがないと言いだしたのだ。しかし荷物置き場は狭く、タオルや着替えが間違って他の人のカバンに混入する可能性は高い。そこでKさんは、「申し訳ないんだけど、みんなカバンの中を見てもらってもいい? 間違って私のタオルが入っているかもしれないから」と呼びかけた。
すると驚くことに、Kさんが探していたタオルはあっさりYさんのカバンから出てきた。やはり入れ間違ってしまっただけだったのかとほっと胸をなでおろしていると、Yさんはなんと「これ、私のタオルだけど」と言ったのである。
私はそのタオルを別日にKさんが持っているところを見たことがあった。しかし、Kさんもタオルに記名をしていたわけではなく、KさんとYさんのどちらのタオルであるのか証明することは難しかった。2人とも「これは私のタオルだ」と一歩も引くことなく、埒が明かない状態になってしまった。
解決に導いたのは、私の“嗅覚”
しかし、どちらかがきっと嘘をついている。なにか解決の糸口になるものはないだろうか……。
そう考えていたとき、ふと思い出した。私は人より“嗅覚”が優れているということを。私はそのタオルと、KさんとYさんのジャージの匂いを嗅いでみた。すると、Kさんのジャージとタオルの匂いが一致したのだ。これはYさんが盗ったに違いないと判断し、顧問に報告。
顧問はYさんの母親に連絡し、事の経緯を説明。そして、タオルの特徴を説明した。すると、そのYさんの母親は「そんなタオル、うちにはないです」と話し、やはりYさんが嘘をついていたことが判明したのだ。
その後……
その後、Yさんは顧問からの聞き取りのなかでタオルを盗ったことを正直に話した。さらに、今回のタオルのみならず、これまでになくなっていたものに関しても自分がやったと白状したのだった。このタオルの件がなかったら、Yさんはさらに盗みを重ねていたかもしれない。Yさんのためにも、事実が明らかになって良かったと思う事件だった。
それにしても自分の嗅覚がこんなところで役に立つとは思いもしなかった。この事件以降、持ち主不明の落とし物があると、皆私の所に寄ってきて誰のものなのか判定をせがむようになった。そして持ち主が見つかると私は必ず言うのだ、「名前書いておいてよ」と。
【体験者:30代・女性、回答時期:2026年10月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。


