お台場に誕生した新アリーナ。座席にも注目

りんかい線・東京テレポート駅のエスカレーターを上がると、左手にお台場の新しいランドマークが姿を現す。収容人数約10,000人の「TOYOTA ARENA TOKYO」(以下、トヨタアリーナ東京)だ。
トヨタ不動産、トヨタ自動車、トヨタアルバルク東京の3者が協働して開発を進め、今年10月3日に開業したばかり。トヨタアルバルク東京が運営を担い、B.LEAGUEに所属するアルバルク東京(以下、A東京)のホームアリーナとして使用されている。また、プロダンスリーグ「D.LEAGUE」や、プロバレーボールチームの試合が行われるほか、今冬にはサッカー元日本代表・本田圭佑氏が発案した4人制サッカー「4v4」の全国大会決勝も開催されるなど、スポーツを中心に、多彩なイベントに対応できる新世代アリーナとして注目が集まっている。
実際にA東京のホームゲームに訪れると、まず正面入口を抜けた瞬間、目の前に広がるコート全景に目を奪われる。これから始まる試合に向けて高揚感が一気に高まる瞬間だ。
アリーナは楕円形で、客席が360度どこからでも見やすく観戦できるようにレイアウトされている。天井からはセンターハングビジョンが吊られ、国内アリーナ初となる2層リボンビジョンや高品質な音響設備も整備。映像と音楽を組み合わせたオープニングの演出は見る者の没入感を誘う。
さらに、全席に環境配慮型のPVCレザーシートが使われており、長時間座ってもお尻が痛くならないのも良い。スポーツ観戦の定番アイテム“折り畳みクッション”がもう不要なのもうれしいポイントだ。
アウェーで勝利した名古屋D。Bリーグ10年目のコーチがアリーナ開業ラッシュで感じるリーグの躍進

11月15日には、A東京が西地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(名古屋D)を迎え、B1 第11節・GAME1が行われた。男子日本代表の活動に伴うリーグ戦中断前、最後の2連戦だ。
試合は序盤から名古屋Dが、主導権を握る。日本代表候補に選ばれた司令塔の齋藤拓実(#2 / 172cm / PG)を中心に、アーロン・ヘンリー(#11 / 198cm / SF)、帰化選手のカイル・リチャードソン(#34 / 198cm / C・PF)らが得点を重ね、途中出場の加藤嵩都(#3 / 178cm / PG)も好プレーを見せる。1クォーターで12-29と大きくリードした。
対するA東京は主力選手にケガ人などを抱える厳しい状況だった。それでも2クォーターには、シューター安藤周人(#9 / 190cm / SG)の3ポイントシュートや、帰化選手ライアン・ロシター(#22 / 206cm / C・PF)が味方の得点を引き出して、36-42まで点差を縮めて前半戦を終えた。
後半に入ると、元スペイン代表のセバスチャン・サイズ(#11 / 205cm / C・PF)や、大倉颯太(#2 / 185cm / PG・SG)がシュートを決め、3クォーター残り5分33秒で49-51と2点差まで詰め寄った。
ただ、名古屋はここからディフェンスでA東京の反撃を跳ね返した。3クォーター中盤以降は相手を無得点に封じ、4クォーターも9得点に抑える堅守を発揮。アラン・ウィリアムズ(#15 / 203cm / C)を筆頭にリバウンド争いでも上回り、最終スコア58-79でアウェーでの一戦を勝ち切った。
試合後、名古屋Dのショーン・デニス ヘッドコーチ(HC)は、戦いぶりを振り返りつつ、国内で新アリーナの開業が続く現状に目を細めた。デニスHCのBリーグでのコーチキャリアは、2016-17シーズンの栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)から始まり、滋賀レイクスターズ(現・滋賀レイクス)を経て、名古屋Dへ。チームは今秋、約15,000人を収容するIGアリーナ(愛知県名古屋市)へ本拠地を移している。
デニスHCはBリーグや日本バスケットボールの成長、ファンの広がりなどについて「10年前、私たちとしては2,000~3,000人ぐらい入れば良いほうかなと思いましたが、水曜日(11月12日)のIGアリーナでの試合では12,000人も入って、本当に素晴らしいリーグになったと思います」と語った。
また、選手たちもIGアリーナやトヨタアリーナ東京のような新アリーナでプレーできる環境にありがたみを感じている。名古屋Dの加藤は「毎日幸せだなと思いながらプレーさせてもらっています」と語る。
プロである以上、生き残りに必死なのはもちろんだが、これまでB3やB2のディビジョンも経験してきたなかで、B1のコートに立って発する司令塔の言葉は感慨深い。
アルバルク東京の選手が観客席から見て、感じたこと

一方、この日の試合には敗れたものの、A東京にとってトヨタアリーナ東京は“悲願の本拠地”である。Bリーグ開幕以降、東京都渋谷区をホームにしながら、代々木第二体育館、アリーナ立川立飛、代々木第一体育館などをメインで利用してきた本拠地変遷の歴史があったからだ。
在籍5シーズン目の安藤周人は、新アリーナでプレーする心境について「やっと自分たちのホームアリーナができたことはすごくうれしいです。ここを建ててくださったトヨタ関係者の皆さんへ、本当に感謝したいと思います」とコメント。
また、“つくり手”の思いも想像しながら次のように続ける。
「いろいろと聞く話によると、ここを建てるにあたってたくさん試行錯誤をされたそうです。本当に見に来た方たちが満足して帰っていただけるアリーナをつくりたいという思いがあって、この最高のアリーナができたと思います。Bリーグ10年目と、アリーナができた年が重なるのは何かの縁かなと思います」
また、ポイントガードの中村浩陸(#5 / 177cm / PG・SG)も、新アリーナでの日常を「とても素晴らしく、日本でもトップのアリーナだと思っています。そういう場所でバスケットボールプレーヤーとして、コートに立ってプレーできているのは、本当に素晴らしいことです」と明かす。
最近では、ファンの視点に立つ機会もあったそうだ。
A東京は、東京都を活動拠点とする男子プロバレーボールの東京グレートベアーズとコラボレーションし、11月12日から16日にかけて双方のホームゲームを盛り上げる取り組みを実施。その一環で中村は、菊地祥平とともに、11月13日にトヨタアリーナ東京で行われた東京グレートベアーズ対ウルフドッグス名古屋の試合を応援に訪れた。
この一戦の観客数は8,107人。中村は菊地とハーフタイムに出演する場面もあり、「バスケの試合より緊張しました(笑)」と振り返る。さらに、観客席からバレーを見て気づきもあった。「コートに立ったときとは違った感覚でした。あ、ここで試合をしているんだ! という気づきが大きかったです。結構(思っていたよりも)コートが近くに見えて、すごいホームだなという感覚にとてもなりました」と語った。
「このアリーナに優勝フラッグを持ってこないといけない」
A東京は現在(11月16日時点)、10勝8敗で東地区5位。開幕4連敗から立て直し、一時は7連勝と勢いに乗ったものの、ケガ人の影響もあり、まだ万全の布陣ではない。
それでも60試合あるレギュラーシーズンも、すでに18試合を消化。Bリーグ王者を決めるチャンピオンシップ(CS)に進むためには、各地区の2位以内に入るか、各地区の上位2クラブを除いた22クラブの中で上位4クラブに入る必要がある。東地区5位からの巻き返しは必要不可欠な状況だ。
安藤は、トヨタアリーナ東京で迎える“ホーム元年”にタイトルを奪還する強い覚悟をにじませている。
「たくさんケガ人が出ていますが、それでもこのアリーナに優勝フラッグを持ってこないといけない。そういう責任感を選手全員が(改めて)持たないといけないと思うし、アリーナをつくってくれた方たちに優勝フラッグを持って帰って来てこそ感謝の思いを伝えられると思います。だからこそ、シーズン中は波がありますが、1試合も無駄にはできません。きょう(15日)のような試合は、ホームアリーナでは2度とないようにしていきたいと思います」
念願のホームアリーナに優勝フラッグを掲げるーー。頂点へと駆け上がれば、2017-18シーズン、2018-19シーズンの2連覇以来、通算3度目の快挙となる。A東京のその大きな挑戦は、12月6日(土)のリーグ戦から再び始まる。
【結果】B1 第11節(2025年11月15日~16日)
11月15日 / 16日
・宇都宮 84-66 千葉J / 宇都宮 89-69 千葉J
・川崎 72-77 茨城 / 川崎 80-74 茨城
・富山 97-102 大阪 / 富山 92-97 大阪
・琉球 91-76 京都 / 琉球 85-71 京都
・仙台 49-88 広島 / 仙台 80-85 広島
・横浜BC 89-80 滋賀 / 横浜BC 68-91 滋賀
・越谷 83-75 三遠 / 越谷 83-80 三遠
・A千葉 86-89 三河 / A千葉 68-70 三河
・A東京 58-79 名古屋D / A東京 66-74 名古屋D
・島根 89-91 北海道 / 島根 81-97 北海道
・FE名古屋 67-73 群馬 / FE名古屋 78-103 群馬
・SR渋谷 70-86 佐賀 / SR渋谷 94-73 佐賀
・長崎 91-70 秋田 / 長崎 97-61 秋田
【順位表】B1 第11節終了時点(2025年11月16日)
●東地区
1位|千葉ジェッツ|15勝3敗(.833)
2位|宇都宮ブレックス|14勝4敗(.778)
3位|レバンガ北海道|14勝4敗(.778)
4位|群馬クレインサンダーズ|12勝6敗(.667)
5位|アルバルク東京|10勝8敗(.556)
6位|仙台89ERS|8勝10敗(.444)
7位|越谷アルファーズ|8勝10敗(.444)
8位|サンロッカーズ渋谷|8勝10敗(.444)
9位|アルティーリ千葉|6勝12敗(.333)
10位|横浜ビー・コルセアーズ|6勝12敗(.333)
11位|川崎ブレイブサンダース|3勝15敗(.167)
12位|茨城ロボッツ|3勝15敗(.167)
13位|秋田ノーザンハピネッツ|3勝15敗(.167)
●西地区
1位|長崎ヴェルカ|16勝2敗(.889)
2位|名古屋ダイヤモンドドルフィンズ|16勝2敗(.889)
3位|シーホース三河|12勝6敗(.667)
4位|琉球ゴールデンキングス|12勝6敗(.667)
5位|広島ドラゴンフライズ|11勝7敗(.611)
6位|島根スサノオマジック|10勝8敗(.556)
7位|滋賀レイクス|9勝9敗(.500)
8位|大阪エヴェッサ|8勝10敗(.444)
9位|佐賀バルーナーズ|7勝11敗(.389)
10位|三遠ネオフェニックス|7勝11敗(.389)
11位|ファイティングイーグルス名古屋|6勝12敗(.333)
12位|京都ハンナリーズ|5勝13敗(.278)
13位|富山グラウジーズ|5勝13敗(.278)
執筆:Qoly Bリーグ・バスケットボール取材班

