5万3千人超が駆けつけた国立競技場。後半22分からピッチに立ったMF中村敬斗(フランス2部スタッド・ランス)が1ゴール&1アシストの大仕事をやってみせた。
日本代表は前半4分にMF鎌田大地(イングランド1部クリスタル・パレス)のゴールで先制するも、プレスがハマらず押し込まれる時間帯が続いていた。そこで後半22分、森保一監督は中村、FW上田絢世(オランダ1部フェイエノールト)、FW町野修斗(ドイツ1部ボルシアMG)の攻撃的な3枚のカードを切る。
これが打開策となった。
そして後半26分、空気が一変した。MF堂安律(ドイツ1部フランクフルト)のスルーパスに対し、中村は右ポケットへ走り込むと中央へ折り返し、町野の決定機を演出してみせた。この日はウィングバックではなくシャドーで起用された中村は「監督には、きょうはシャドーで出てもらうから、よりゴールに近い位置だと思うので(ゴールを)果敢に狙ってほしい」と伝えらえていた。
それが実を結び「僕は普段、ウィングバックで出ていてボールを受ける回数はどうしてもシャドーの方が多くなるのは事実。きょうはボールを積極的に受けて前を向いて良い形を作ることを意識しました」と振り返った。
イメージしていたボールコントロール
また2-0で迎えた後半33分にはスタジアムに歓喜をもたらすシュートを放った。
上田がペナルティーエリア左に持ち込んでグラウンダーのクロスを送ると、中村が右足裏でボールをコントロール。マイナス方向に引き込み、最後は相手キーパーの股を通す技ありシュートを決めた。
「あれは自分の形。去年のマルセイユ戦でも同じ形で決めることができていて、あのときは後ろから(相手が)来なかったんですけど、あれは咄嗟に体が動いた感じでイメージはしていました」

シュートを放った中村 (C)Getty Images
結果的に途中出場の選手が流れを変えることになったが、スタメンで出場したMF久保建英(スペイン1部レアル・ソシエダ)やMF南野拓実(フランス1部モナコ)、FW小川航基(オランダ1部NECナイメヘン)らを含めたメンバー争いも熾烈で、それぞれが存在感を発揮している。
来年に控えるFIFAワールドカップ北中米大会へ向けてのアピールにはつながったはずだが、中村は心の声を言語化していく。
「もちろん、みんなスタメンで出たい気持ちもありますし、レギュラー争いもあります。でも途中出場した選手が試合を決められ、いかに試合を変えられるかが大事」とコメント。そして「必ずしもスタメンで出ることがいいとは思わないし、自分に与えられた役割があるからこそ、それをやるだけだと思います」と続けた。
ブラジル戦後の勝利が大事
前回のブラジル戦から3連勝。チームは複数得点も続いている。中村は「公式戦で結果を残すことは大事」と自分に言い聞かせるように言うと、「ブラジル戦に勝ったことで、『その後の勝利がすごい大事』だと、みんな言っていたので、ガーナ戦、ボリビア戦で2連勝したのはでかいですね」と柔らかな笑顔で語った。
次の活動は3月となるが「約4カ月ほど空きますが、自チームに戻って頑張ります。他の代表選手に比べたら、どうしても(フランス2部で)レベルが落ちてしまう。意識的に、いい意味で流されないことが大事だし、あとは違いを見せて結果を残し続けるのは必須かなと思います」と強い覚悟を示した。
闘志を高め、自身の能力のさらなる向上を志す。どんな状況の中でも最善を尽くす中村の活躍に注目したい。
取材・文:石田達也
