J2ジェフユナイテッド千葉がJ1昇格プレーオフ(PO)決勝を制し、17季ぶりとなるJ1復帰を果たした。
クラブ史上初の開幕6連勝を達成し、最終節まで優勝争いを演じた今季の千葉。
悲願を達成し、最高の形でエンディングを迎えたが、選手たちはつねに危機感を抱きながらプレーしていた。
(取材・文・構成:浅野凜太郎)

(写真:縄手猟)
J1復帰の裏で感じていた危機感
「なぜ僕たちは勝てているのか…」(DF鳥海晃司)
J1復帰を成し遂げた今季は、疑心暗鬼のシーズンだった。
今年1月に行われた沖縄トレーニングキャンプではまったく勝てず、シーズンの前哨戦にあたる『ちばぎんカップ』でもJ1柏レイソルに力の差を見せつけられて、0-3で敗れた。
それでも、不安を抱きながら迎えた開幕戦のいわきFC戦は2-0で勝利。そこからイレブンは肉薄の戦いを制し、クラブ史上初の開幕6連勝を達成した。
名門の躍進に周囲は期待感を抱いた。だが、当の本人たちはなかなか自分たちの実力を信じられなかった。
MF椿直起は「連勝しているときから、うまくはいっていなかった」と首位で折り返した前半戦を振り返っている。
「勝てていた試合も別に攻撃は大してうまくいっていなかったと思います。むしろ『何で勝っているの?』という試合を何回もやってきたんです」

椿(写真:縄手猟)
J1クラスの守備陣と強力なサイドアタックで一時は独走態勢に入ったが、5月以降は失速。リーグ戦7試合未勝利となり、J1昇格PO圏外に転落しかけた。
鳥海が「圧倒的な強さではなくて、ずっと危機感を感じていたチームだった」と形容するように、決してJ1昇格の筆頭候補ではなかった。
それでも勝負どころで踏ん張り続け、悲願のJ1復帰を成し遂げられた。すべては日ごろのトレーニングに詰まっていた。
千葉の選手たちは口をそろえて『このチームは誰もサボらない』と胸を張る。その言葉通り、ユナイテッドパークで行われた公開練習を観に行けば、いつだって緊張感のあるハードなトレーニングを積んでいた。
MF髙橋壱晟(いっせい)は今季のトレーニングに誰よりも自信を持っていた一人だ。

髙橋(写真:縄手猟)
全体練習後の自主練習で磨いたクロスボールから、J1昇格を決める決勝点をアシストした背番号2は、「信じてやってきましたよ。いい時期も悪い時期も。それは練習がすべてを物語っていて、めっちゃいい練習をしていた。本当にすごかった。このチームでJ1に上がれなかったら、燃え尽きちゃうんじゃないかっていうくらい」と力強かった。
チームに対する危機感は、試合を重ねるごとに信頼に変わった。
気づけば、「このチームで昇格したい」というワードを選手たちが自然と発するようになり、イレブンは一丸となってJ1復帰へ突き進んだ。
そして来季はついにJ1の舞台で戦える。
