[第74回全日本大学サッカー選手権大会決勝ラウンド第2節、阪南大 1-1 常葉大、12月15日、神奈川・相模原ギオンスタジアム]
2大会連続で決勝ラウンド進出を果たした常葉大は、関西の強豪校・阪南大と1-1で引き分けた。
この日、キャプテンマークを巻いて常葉大のゴールマウスを守ったGK宮澤樹(たつき、4年、長野パルセイロU-18、J3奈良クラブ入団内定)は、前半に失点を許すも、その後は並外れた反射神経を武器に好セーブを連発。第3節に決勝トーナメント進出の望みをつないだ。
未知なる挑戦を求める守護神
初戦の筑波大戦を落とした常葉大は、この日敗れれば決勝ラウンドAグループで敗退が決まる可能性があった。
背水の陣でこの試合に臨んだ同大だが、前半33分に、ディフェンスラインの背後を取った相手FWに一対一を決められ、いきなり窮地に立たされた。
それでも後半から、身長180センチの大型FW坂本陽斗(らいと、3年、鵬学園高)を投入して、一気に流れを引き寄せると、同31分に左からのクロスボールをFW梅木翔斗(かいと、3年、東海大学付属甲府高)が身体に当てて押し込み、同点に追いついた。
その後は勝ち越しを狙う阪南大にゴールを脅かされる場面もあったが、宮澤を中心にチーム一丸となって耐えしのいだ。

ボールをしっかり抑え込む宮澤(写真 縄手猟)
常葉大の古橋達弥監督は、「すごいですよ。『これ止めちゃうの?』っていうシュートを止めてしまいますから。チームの要として、後ろから声を出して盛り上げてくれてるので、もう監督みたいな感じです」と、幾度となくチームのピンチを救った守護神に賛辞を送った。
だが、常葉大の背番号1は、まったく満足していない。
「全員で勝ちに行くという一瞬、一瞬のプレーに、全力でぶつかって、それが勝利につながると信じてやったんですけど、守備の隙だったり自分のまだまだな部分で失点してしまって、難しい試合になってしまいました。(失点シーンの)一対一も止められたと思うので、正直伸びしろだらけだと思いました」
来季から奈良への入団が内定している宮澤。J3長野パルセイロのアカデミーで育った同選手は、古巣へ復帰する可能性もあったが、J2昇格を争うライバルクラブへの入団を決めた。

驚異的なシュートストップでチームの危機を救った宮澤(写真左 縄手猟)
同選手は奈良クラブ入団を決めた理由について、「自分の未来が上手く想像できなかったというか、“未知”に感じた」と明かした。
多くの選手は、自身の成長が思い描けると感じたチームへ入団するが、宮澤は「そういう(未知な)ところに飛び込んだ方が、新しい自分に出会えるし、可能性も広がるのかなと。逆に(長野)パルセイロに練習参加したときは、すごく“迎え入れていただいている”感じがした。誰も自分を知らない地で、チャレンジするという部分に惹かれた」と、あえていばらの道を選んだ。
宮澤は続けて「いろんなことでそうなんですけど、自分がイメージつくときは、過信なときが多い。自分が知っている地でやった方が、サポート体制としてはいいかもしれませんが、未来が見えないような、どうなるか分からないところでチャレンジした方が、人生としてやりがいがあると思う」と語り、未知の挑戦を楽しみにしている。
常葉大は17日午前11時から決勝トーナメント進出をかけて筑波大と対戦する。
「チームを決勝ラウンドで勝たせていないので、ここで勝たせて、一個上に連れて行くことが次の自分のステージに繋がるはず」とこぶしを握った常葉大の守護神。次こそクリーンシートで勝利に貢献してみせる。
(取材・文・写真 縄手猟)
