J1・ガンバ大阪は2024年3月、オランダの名門クラブとして知られるAFCアヤックスとフットボール戦略パートナーシップの合意に至ったことを発表した。
契約締結から約2年の月日が流れたが、トップチームの強化につながる動きに加えて、クラブや日本サッカー界の未来を背負うユース世代の育成につながるさまざまなプログラムが行われ、若い才能の可能性を広げている。
ガンバ大阪・経営企画部・担当部長の山﨑敏氏と、アカデミー部でサブダイレクターを務める足髙裕司氏にインタビュー。提携が生み出した好循環や今後の可能性に迫った。

プロフィール
・山﨑 敏(経営企画部・フットボールマネジメント部/写真左)
・足髙 裕司(アカデミー部・サブダイレクター/写真右)
――まずはお二人のお仕事について、詳しくお聞かせください。
山﨑:オランダをはじめとする欧州諸国で次々と活躍する日本人選手の姿を見ていて、日本のマーケットに非常に高い関心をお持ちだったアヤックスさんから連絡をいただき、実現に至りました。
その一方で、アヤックスさんに提携のお話をいただく前から、私たちも「欧州の市場に対してもう少し積極的にアプローチしていく必要があるのでは……」という課題を認識しており、欧州の複数クラブを訪問して提携の可能性を調査していました。多角的な観点からアヤックスとの提携を進める経営判断をし、双方の思いが一致したことで、今回の取り組みを始めるきっかけになりました。
多くの若い選手が海外でのプレーを夢見ている現状については、皆さんご存知の通りだと思いますが、クラブとしては「選手の挑戦を後押ししたい」という気持ちもありつつ、移籍に至った際にクラブが受け取れる移籍金の件をはじめ、ビジネスの観点ではさまざまな課題がありました。
「共に成長できる可能性を感じた」アヤックスとの提携

(C)JUN.S クラブの経営に携わる山﨑敏さん
――まずは山﨑さんに、2024年3月にはオランダの名門クラブアヤックスと提携に至った経緯についてお伺いします。
山﨑:オランダで次々と活躍する日本人選手の姿を見ていて、日本のマーケットに非常に高い関心をお持ちだったアヤックスさんから連絡をいただき、実現に至りました。
その一方で、アヤックスさんに提携のお話をいただく前から、私たちも「欧州の市場に対してもう少し積極的にアプローチしていく必要があるのでは……」という課題意識を抱いており、双方の思いが一致したことも、今回の取り組みを始めるきっかけになりました。
多くの若い選手が海外でのプレーを夢見ている現状については、皆さんご存知の通りだと思いますが、クラブとしては「選手の挑戦を後押ししたい」という気持ちもありつつ、移籍に至った際にクラブが受け取れる移籍金の件をはじめ、ビジネスの観点ではさまざまな課題がありました。
――交渉を進める上で、何か障壁はありましたか?
山﨑:アヤックスさんが海外のクラブとの提携に慣れていたこともあって、1年ほどに及んだ交渉は比較的スムーズに進みました。
選手育成のフィロソフィーが確立されていて、今もなお時代に合わせて進化を続けていること。そして、練習場やアカデミーの施設など、充実した育成環境が整っていること。
さまざまなお話を進めていく中で、共に成長できる可能性を強く感じたことも提携を後押しすることになりました。
――アヤックスの皆さんは、今回の提携にどのような期待を寄せているのでしょうか?
山﨑:日本ではJクラブのユースチームだけではなく、高校や大学サッカーなどにも良いプレーヤーが在籍し、それぞれのリーグで活躍を見せています。
しかし、手元に十分なデータがない欧州クラブの皆さんには、彼ら若手の選手たちにどうやってアプローチすれば良いかわからない部分もあるようです。
ガンバ大阪ユースの若手選手はもちろん、クローズドな印象が強い日本の選手たちの情報や知見を持ち、意見交換できるクラブを探されていました。
また私たちとしても、選手を獲得する欧州のクラブが、日本人選手をどのような視点で見ているのかについての見解を深めたり、ビッグクラブに選手を輩出しながらも、新たな才能を次々と輩出し、勝利を積み重ねてきたアヤックスの手法を学んだりできる絶好の機会となりますので、双方が意見交換を重ねながら、我々もさらなる若手選手を育成し、クラブとしての成長を遂げていけたらと思っています。
堂安選手や鎌田選手は「技術だけではなく、強靭な精神力を持っていた」

(C)JUN.S 若き才能が集うガンバ大阪のアカデミーでサブダイレクターを務める足高裕司さん
――続けて、足高さんにこれまでに多くの選手を輩出してきたガンバ大阪ユースの活動についてお伺いします。まずは現在の規模について教えてください。
足髙: 小学生はスクールを含めると1000人規模。学年ごとに3チームほどあるジュニアが、1学年約20名で編成されるジュニアユース(中学生)になり、そこからユース(高校生)昇格にするのは各学年15名ほど。現在のユースチームは3学年45名で編成されています。
――ユース世代を指導される上で、どのような点を大切にされていますか?
足髙: 技術と判断力を大事にしながら個性を磨くことですかね。ありがたいことに、これまでに世界で活躍する選手を多数輩出してきたクラブの伝統を継続しながら、現代サッカーにマッチするようにブラッシュアップを重ねていくように心がけています。おかげさまで現在もアンダー世代の代表選手を輩出できているので、何とかこれを続けていけたらと思っています。

(C)Getty Images ガンバ大阪を経て海外に渡り、2大会連続でW杯に出場した堂安律選手。
――プロ入り後に伸びる中高生の特徴はあるのでしょうか?
足髙: 他選手との違いを出せる何かしらの武器に加えて、メンタル面の強さやしっかりとした自身の考え方を備えていることかなと思います。自分は直接指導はしていませんが堂安律選手や鎌田大地選手は「サッカーの技術だけではなく、しっかりとした考え方を持ち併せていた」と当時の指導者が話していました。掲げた目標に向かって本気で取り組めて、逆境に直面にもめげずに努力を続けられるような選手が、やがてプロ契約を勝ち取り、ステージを駆け上がって日本代表や海外でプレーしているような印象は感じますね。
今、ユースでプレーする若手選手にも、そのような“先輩”たちの姿を伝えて、「それに続く選手がアカデミーから出てくれればいいな」という思いで、指導にあたっています。
世界はより身近になっている

(C)JUN.S「Olympia Future Cup」に参加したガンバ大阪ユースの(左から)川野聖選手、岡元侑大選手、岡本新大選手
――昨年に続き、今年もアヤックスが主催する「Olympia Future Cup」(2026年4月)にも参加されました。
足髙: 昨年はガンバ大阪ユースとして出場しましたが、今大会はアヤックス提携のクラブ(オランダ、スペイン、イタリア、メキシコなど)から選抜されたチーム「フューチャー・ユナイテッド」にガンバ大阪ユースに所属する7選手が参加し、大会に臨みました。
オランダに滞在した1週間は、全てが順風満帆だったわけではありませんでしたが、チームを率いるオランダ人監督やスタッフ、世界7カ国から集まったチームメイトと共に過ごし、意思疎通もままならない環境でプレーした経験を通して、選手たちもそれぞれに大きな刺激を受けたようです。
今回の遠征では、言語の壁や周囲とコミュニケーションをとる難しさ。そしてパフォーマンスを評価されないと試合に出られない状況など、日本人が海外クラブに移籍して味わう苦労を前倒しで経験することができたのかなと。我々としても、ピッチ内で存在感を示す選手たちの姿を見て、「世界がより身近なものになっているな」と感じましたし、現地の雰囲気などを体感して、選手各々の成長を促せたのではないかと思います。
――対戦相手も各国の強豪(※)が揃っていました。他クラブでプレーされている若手選手を見て、感じられたことはありますか?
足髙: 今回大会を制したアンデルレヒトは、選手個人の技術やチームとしてのまとまりが一つ抜けていましたし、アヤックスやパリ・サン=ジェルマンには強烈なスピードを持つウインガーが在籍していた。個々の武器と組織力を磨く大切さ。そして、U-17世代でありながらも多くのスカウトが試合を見守る中で何かをアピールし、次のステップに繋げようとする姿勢は我々も見習うべきところがありましたし、参加した7選手も「各々に感じることがあったのではないか」と感じます。
――クラブの未来にとっても大きな収穫があったよう思います。
足髙: そうですね。CLに出場するような世界のトップレベルのクラブが一堂に会し、このような真剣勝負を繰り広げる大会に参加できる機会はなかなかありません。このようなチャンスをいただけること自体も「アヤックスと提携できた大きなメリットかな」と思いましたし、各地から選抜された選手たちと一緒に一つのチームでプレーする、“擬似海外挑戦”に選手たちが身を置けたことは、すごく貴重な機会だったのではないかと感じました。
※ガンバ大阪ユースの面々はアヤックス混成チームに参加。大会にはレアル・マドリード(スペイン)、パリ=サン・ジェルマン、リヨン(フランス)、アヤックス(オランダ)、アンデルレヒト(ベルギー)、スポルティング(ポルトガル)、レヴァークーゼン(ドイツ)が参加した。
取材:JUN.S
