シェリー=アン・フレーザー=プライス
出産するとスプリンターは以前の速さに戻れない…その通説を正面から壊したのが、ジャマイカのシェリー=アン・フレーザー=プライスである。
女子100mで2008年北京、2012年ロンドンと五輪連覇。世界選手権でも2009年、2013年、2015年と100mを制し、世界最速の女性として長く君臨した。そして、2016年リオ五輪でも銅メダルを獲得している。
しかし、2017年には妊娠が判明し、同年8月に息子を出産した。復帰を目指したものの、当初は本人も不安だったという。
だが2019年、32歳で彼女は完全に復活した。ドーハ世界選手権の女子100m決勝を10秒71で制し、自身4度目の100m世界タイトルを獲得。出産から約2年、母親になってから再び世界最速に立った瞬間だった。
物語はそこで終わらない。東京五輪では100mで銀、4×100mリレーで金。2021年には100mの自己ベストを10秒60まで更新した。そして2022年の世界選手権では、35歳で10秒67。大会新記録で通算5度目の世界タイトルを掴み、単一の個人走種目で世界選手権5勝という史上初の記録を打ち立てた。
アリソン・フェリックス
出産前からアメリカ陸上界のレジェンドだった。18歳で臨んだ2004年アテネ五輪の200mで銀メダル。2005年世界選手権では200mを制し、2007年の大阪世界選手権では200m、4×100m、4×400mの3冠を達成した。以後も200m、400m、リレー種目でメダルを積み上げていく。
ところが2018年、キャリア最大級の危機が訪れる。妊娠32週の定期検診で妊娠高血圧腎症が判明し、母子ともに危険な状態となった。同年11月28日、緊急帝王切開で娘カムリンを出産。出生体重は1.55kgだった。
2019年はスプリント練習すら思うようにできず、復帰した全米選手権の400m決勝は6位。それでも世界選手権の代表入りを果たすと、ドーハで混合4×400mリレーの金メダルを獲得する。世界選手権通算12個目の金は、当時ウサイン・ボルトを抜く大会史上最多だった。女子4×400mリレーでも金を掴んでいる。
そして2021年東京五輪、35歳。初めて母親として臨んだ大会の400mで銅メダルを獲得し、女子陸上選手として五輪史上最多となる10個目のメダルを手にした。翌日の4×400mリレーでは金。通算11個目となり、カール・ルイスを抜いてアメリカ陸上史上最多の五輪メダリストとなった。
※選出基準は、各選手の実績に基づきながら筆者またはメディアの主観的判断も含んでおります。
筆者:石井彰(編集部)
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