西日本を中心とした記録的な暑さや激しい豪雨が襲いかかった夏も次第に落ち着きを見せ、今年もサッカーの2026-27年シーズンが幕を開けた。

6月の北中米W杯に挑んだ日本代表は、3大会連続で予選を突破。決勝トーナメントではブラジル代表を追い詰めたものの、終了直前に決勝点を許し、またしても世界の壁に阻まれることとなった。

近年欧州で目覚ましい活躍を見せ、進化を遂げてきた日本サッカー界。その歩みを語る上で、ベルギー1部のシント=トロイデンの存在を欠かすことはできないだろう。

シーズンの開幕前には大久保嘉人氏を招いてのトークショーも実現。スポンサーの皆さんを前にスポーツライターの木崎伸也氏のコーディネートのもと、シント=トロイデンのCEOを務める立石敬之氏(オンライン出演)との本音を語り合った。

9月にはウルグアイ戦が行われ、早くも次の4年間に向けた歩みがスタートするサッカー日本代表。当日の様子を振り返りつつ、今後どう歩むべきなのかを考える機会としたい。

好結果を手繰り寄せたクラブのフィロソフィ

画像1: (C)クラブ提供

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2017年11月に日本企業のDMM.comがオーナー権を取得。8年間の間に多くの日本人選手がチームに加わり、欧州の5大リーグに羽ばたいた。また、ユース世代の育成にも力を注ぎ、昨シーズンのチームは3位に大躍進を遂げた。

(聞き手:木崎伸也)

――シント=トロイデンは昨年3位の好成績を収めましたが、日本人選手だけではなく、地元ベルギーの選手も育成し、成功を収められているそうですね。

立石:そうです。僕がクラブに携わるようになり8年の月日が流れました。

1から運営を始めたユースチームも8年が経ち、当時中学生だった子供たちは20歳に差し掛かり。4選手が五輪代表に選ばれました。最近ではまた新たに左サイドバックの期待できそうな選手が入ってきましたし、定期的に若手を輩出できるようになりつつあります。

――ベルギーでも若手選手の発掘や育成に成功できたのはなぜですか?

立石:クラブの「フィロソフィー」や、プレーの基準をしっかり設けたことによるかなと思います。欧州の指導者は、結果を出すとすぐに他クラブに引き抜かれてしまうので、安定した選手育成がしにくかったりもするんですけど、そこの安定感を出すために、クラブとしての基準を設けるようにしました。

移籍金に頼らないビジネスモデルを目指したい

画像2: (C)クラブ提供

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――遠藤航選手、鈴木彩艶選手、最近では山本理人選手らが他クラブに移籍し、多くの移籍金を手にすることになりました。額面も多く、華やかに見える部分もありますが、選手の移籍に伴う収入は、クラブにとってどのような位置を占めるのでしょうか?

立石:前の2025-26年シーズンは好成績で終えることができましたが、前年の2024-25年シーズンに過去最大の売上(額面をお伺いしたいです)を記録しまして、その約半分が移籍金でした。なるべく移籍金を当てにせずにクラブを運営していきたいんですけど、それができるかどうかについては、僕ら経営陣にとっても大きな課題ですね。移籍金の収入は、どんなに少なくとも全体の30〜40%ほどを占めていますが、極力それを当てにしないような経営をしようと模索しています。

――大久保さんもクラブを経営していくにあたり、移籍金が関係してくるんでしょうか?

大久保:まだ始まったばかりで、シント=トロイデンさんほどのお金もありませんから、移籍金で収益を得ながらビジネスを行う必要がありますし、「良い選手をどんどん発掘して、実力を高く評価してもらえるチームに送り出して行きたい」とは思っていますね。

画像: シント=トロイデン・CEOを務める立石敬之氏 (C)クラブ提供

シント=トロイデン・CEOを務める立石敬之氏 (C)クラブ提供

――移籍金による収益が得られないときにも、ビジネスを成り立たせていかなければなりません。そういった点では、本日お集まりいただいたようなスポンサーの皆さんからの支援が欠かせないと思うのですが……?

立石:移籍金による収入を除くと、私たちが「ローカル」と呼んでいるベルギー国内における収益が約半分、残りの半数が日本でクラブを支えてくださっている企業の皆さんからの支収益で、安定してクラブを経営していくためになくてはならないものになっています。

私たちは約1万人収容のスタジアムでホームゲームを行なっているので、仮にシーズンチケットが全席完売したとしても、そこまで大きな収益の伸び代はありません。スポンサーの皆さんからの収益やグッズ販売や放映権料。そして今季はECL(UEFAヨーロッパカンフェレンスリーグ)の賞金やボーナスなどが、収益の軸になっていくのかなと思います。

―― 昨季はリーグ3位で終え、今季はELのプレーオフにも出場されました。なぜ好成績を残すことが出来たのでしょうか?

立石:年々チームの完成度が高まっていることがその一因かと思います。僕らを含めたオランダやベルギーのクラブは、1年間のシーズンを戦う中で6、7人ぐらい選手が入れ替わることも珍しくありません。

その代わりになりそうな選手と新たに契約を結ぶんですけど、仮に新加入選手が移籍した選手と同じレベルに達したとしても、チーム力自体が上がるわけではありません。昨季怪我から復帰し、W杯にも出場した谷口彰悟選手をはじめ、チームに加わってある程度の年月が経った選手が多く、ピッチ内で阿吽の呼吸が成り立つくらいの状況が整った。あとは「EQ」(心の知能)などの数値も伸ばしたりしたことで、団結力があり、完成度が高いチームを作り上げることが出来たのかなと思います。

画像3: (C)クラブ提供

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ーーちなみに「EQ」はどのようにチェックするんですか?

立石:入団の時に、クラブや監督が、選手に面談のような感じのテストをするんですよ。

例えば後藤啓介選手 (シント=トロイデンから6月にSCフライブルクに移籍)は、W杯でも水を運ぶような献身的なプレーで長友佑都選手(FC東京)にも褒められていましたが、彼のようなチームの勝利のために尽くすプレーができるのは素晴らしいなと。

ストライカーなんで、もう少しエゴを出していいような気もしますが、後藤選手は(大久保)嘉人に似て、足元の技術を備えていて、ゲームメイクも上手ですし、ゲームに積極的に参加するのが好きなプレーヤーだなと思っています。メンタル的にはまだ若いですし、インタビューもあまり上手ではありませんけど、それ以外は本当に素晴らしい選手ですよ。

W杯で勝つために「個人で勝負できるFWの台頭が急務

画像4: (C)クラブ提供

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――大久保さんは2014年のブラジルW杯で、直前にメンバー入りを果たしましたが、当時のチームの印象を「バラバラだった」とお話しされていました。

大久保:2014年大会では、ザッケローニ監督(当時)に直前で呼んでいただき、「サプライズ枠」での招集でしたが、チームに加わってみると何となくみんなの意見がバラバラで、うまくいってないような印象は感じました。

2014年の代表メンバー(香川真司選手、本田圭佑選手ら)の名前を見ると、本当に豪華で、「強いチーム」と言われていましたが、個性豊かな面々が練習中に言い合いになるような場面もあって。今振り返ってみると、「EQ」 がそんなに高くなかったのかな。

――「2014年のチームと今回のW杯に臨んだチームの雰囲気が似ている」ともお話しされていましたね。

大久保:主力選手がピークを迎えた時期でしたし、仲も良かったと思うんですけど、2026年大会の代表はそれ以上に団結力があるような印象は外から見ていても感じました。

――北中米W杯ではまたしても決勝トーナメントの熱い壁に阻まれることになりました。日本代表が強くなるために、大久保さんは何が必要だと思いますか?

大久保:僕は6月の北中米W杯を見て、日本代表には個の力を使いながら、一人で相手DF陣を剥がしていけるような選手がまだまだ少ないなと感じました。

今回のW杯には怪我で間に合わなかった三笘薫選手(ブライトン)のような個で勝負できる選手や、CLに出られるような選手が何人も出てこないと、なかなかW杯優勝を目指すのは難しいと思うので、若い選手にはどんどん個の力を伸ばしてもらいたいですし、そういう選手が出てくることで選手層に厚みが増し、さらに日本代表は強くなっていくんじゃないかなと思います。

画像: (C)ご本人提供

(C)ご本人提供

――4年後のW杯で、大久保さんのクラブからストライカーが日本代表に選ばれる未来もあるかもしれません。

大久保:そのような選手を輩出していきたいですし、全力で日本のサッカー界に貢献できたらと思っています。例えば塩貝健人選手なんかは、慶應大に在籍しながら横浜F・マリノスに入り、そこから海外に出ていって…と。性格も僕みたいにあんな(強気な)感じでしょ。

「期待出来そうな若手選手が出てきてくれたな……」と思うんで、彼のようなFWを送り出していきたいですよね。

画像: (C)Getty Images 北中米W杯で強気な発言が話題を呼んだ塩貝健人選手

(C)Getty Images 北中米W杯で強気な発言が話題を呼んだ塩貝健人選手

――ちなみに塩貝選手のブラジル戦での炎上はどう思いましたか?

大久保:僕も炎上しがちなタイプでしたから(苦笑)。確かにブラジル代表を本気にさせてしまったかもしれませんが、決して悪いこととは思いませんでした。海外の選手は強気な選手ばかりですし。そのようなメンタリティも重要だと思います。

――時間も差し迫ってきましたが、立石さんの4年後に向けた目標や計画についても聞かせてください。

立石:最近は中高生にあたる選手のプレーを注力して見ていましたが、早い段階で選手を発掘し、育成していくことがさらに重要になっていくと思っています。(幼少期からスペインで過ごし、15歳でFC東京U-18に入団した)久保建英選手のように、世界に出ないと受けられないような刺激を若い世代にどう与えていくか。ロサンゼルス五輪を目指す若手選手の育成にも引き続き尽力しつつ、そういった啓蒙活動にも力を注いでいけたらなと思います。

シント=トロイデンは「ここから世界へ」というスローガンを掲げていて、世界に挑戦しゅる皆さんを全力で応援しようと思いでいますし、それに共感していただけるみなさんが私たちを支えてくださっていると思います。なかなか現地で試合を観戦するのはハードルが高いかもしれませんが、今後はスポンサーやサポーターの皆さんとお会いできるような機会を増やしながら、みなさんの想いに応えられるように尽力していけたらと思っているので、今後とも力強い声援を送っていただけたら嬉しいです。

取材:JUN.S

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