0-4で破れたミラノ・デルビーからの巻き返しを見せたミラン。カンピオナート5連勝を飾り、首位インテルに次ぐ2位でクリスマス休暇に突入。勝ち点差は8だが、休暇前の試合が悪天候で中止になったため、消化試合は1試合少ない。カカの売却、財政難による補強不足と大きな戦力ダウンを懸念された事をふまえれば、悪くない成績と言えよう。チャンピオンズリーグではレアル・マドリーを敵地で破るなど、チームは成績と共に自信を取り戻した。噂される補強を挙げながら各ポジションを振り返ってみよう。
3トップの代役は?
チーム状態は上向きといえるが、まだまだ改善点は多い。まず最初に挙げられるのは、パトとロナウジーニョの控えがいない事である。レオナルドの4-3-3は二人のブラジル人プレーヤーのいずれかが欠けても成立しない。クリスマス休暇前の最後の試合となったパレルモ戦でも、パトを温存しイグナツィオ・アバーテを先発させた結果、ホームで5連勝をストップさせる事態となった。ウィンガータイプの選手が殆どいないミランにとって、二人のブラジル人プレーヤーの代役となれる人材を見つける事が目下の課題である。
両ウィングと共に、センターのマルコ・ボリエッロの代役が確定していない事もミランにとって課題の一つである。3トップを敷く現状に置いて、堅実なポストプレーと空中戦の強さは高く評価され、試合を重ねるごとにロナウジーニョ、パトとのコンビネーションを向上させている。しかし、彼の代役も曖昧である。フィリッポ・インザーギ、クラース・ヤン・フンテラールの両名は結果を残せていない。インザーギは2トップ向きの選手であり、フンテラールはインザーギというブランドの前に出場機会を与えられていないのが現状だ。
前線3枚の1枚が欠ける事を想定してレオナルドが望むのは補強となる。3トップを継続する為の人材、ないしは緊急時の2トップで頼れる人材を手にする事だ。レオナルドは以前としてヴォルフスブルグのエディン・ゼコの獲得を望んでいるとされ、CSKAモスクワのセルビア代表ミロス・クラシッチの加入も噂されているのは、不測の事態への対応策であろう。2トップ、3トップを考えれば、ラツィオとの契約解除に成功したゴラン・パンデフはうってつけの人材だが、夏に噂されたインテル行きが濃厚である。アフリカ・ネーションズカップでサミュエル・エトーが抜けるため、2トップと3トップを使い分けるジョゼ・モウリーニョにとっても最適なのである。ミランの台所事情の苦しさを考えれば是が非でも手に入れたい所だが、移籍が噂されるフンテラールの売却という課題をクリアしない限り、動くに動けないのかもしれない。
本稿を書いている途中に、スタンダール・リエージュ所属のセルビア代表FW、ミラン・ヨヴァノヴィッチの獲得が決定したとのニュースが流れたが、どうやらシーズン終了後の加入の模様だ。

熾烈極める中盤のポジション争いはW杯出場へ直結する
中盤はディヴィッド・ベッカムが帰って来て、W杯出場のためのポジションを争う戦いに挑む。しかし、3枚の中盤を争う戦いは熾烈を極める。クラレンス・セードルフとアンドレア・ピルロ、マッシモ・アンブロジーニのレギュラーのほか、怪我からのレギュラー復帰を目指すジェンナーロ・ガットゥーゾ、出番を待ちわびるマチュー・フラミニも控える。昨季の様に4つ、5つの椅子はなく、ガットゥーゾは離脱直後ではなく復帰間近。ベッカムが定位置を掴めると断言する事はできない。もちろん、ベッカムのクオリティの高さはセリエAでも実証済み。基礎技術は高く、戦術理解度はずば抜けている。抜群に層の厚さを誇る中盤は、レオナルドの起用次第といえよう。レオナルドがウディネーゼのギョクハン・インレルの獲得を望んでいるという噂もあるが、ガットゥーゾが復調しなかった場合の保険か、代理人の飛ばした噂話に過ぎないと目され、実現の可能性は低いと言わざるを得ない。インレルが定位置を掴んでいるチームから、ワールドカップ前に移籍するとは考えにくい。
衰えの目立つ両サイドバック
パオロ・マルディーニの抜けたDFラインは、アレッサンドロ・ネスタの復活とチアゴ・シウバのデビューによって事なきを得た。崩壊しかけたチームを支えたのは二人のCBと言って過言ではない。控えのカハ・カラーゼ、ジュゼッペ・ファヴァッリも格下相手にはまずまずのプレーを見せており、ネスタ、チアゴ・シウバの二人が同時に欠けない限りは、大きな綻びとはならないだろう。しかし、両SBは以前として問題を抱えるポジションである。ジャンルカ・ザンブロッタは堅実にこなしているものの全盛期のプレーを期待するのは難しく、守備への戻りが遅くなり、プレーの軽さも目立つ。レンタル復帰後、まずまずのプレーをみせていたマッシモ・オッドは怪我で離脱。マレク・ヤンクロフスキも同様に離脱中であるが、ミラノ・デルビーで3失点に絡むなど衰えは顕著であり、戻ってきてもポジションの保証はない。アバーテのSBはインパクトはあったがギャンブルに近く、レオナルドの選択肢からは外れた。両サイドを器用にこなすルカ・アントニーニの存在は大きいが、突破力と判断力はミランの選手として物足りない。それでも補強の噂をあまり聞かないのは、実力者が怪我で離脱している事と優先度の低さが原因と見られる。
くすぶり続けるGK問題
昨季の正GKであるクリスティアン・アッビアーティが怪我で離脱する中、代役を務めたストラーリも負傷で離脱。かつての正GKであるジーダは出番を手に入れた。ジーダは不安定ながらも徐々にフォームを取り戻しつつある。とはいえ、36歳のジーダに頼り切ることは危険であり、補強の可能性を探らねばならないが、前述の3名に加え、イタリア代表召集歴を持つフラヴィオ・ローマも在籍。30代のGKを4人抱えるチーム構成は異例といえよう。しかし、ミランのGK問題は今に始まった事ではない。ジーダの衰えが目立ちはじめてから常に叫ばれ続けてきた事だが、常に補強の優先順位は低く、フレッシュな人材への投資は皆無。補強の歴史を紐解いても、他チームのGKでピークの過ぎた選手を獲得するケースが多く、ユースからの人材が台頭するまでは、何も変わらないであろう。
結局は鶴の一声・・・
振り返ってみても穴の目立つミラン。1月の補強の必要性は高いが、財政状況の苦しいチームに巨額の投資は見込めない。余剰戦力の売却話もフンテラールくらいしか上らない。結局はあの人の鶴の一声を待つしかないのであろうか。

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