2007年7月29日(日) - ゲロラ・ブン・カルノ・スタジアム
Iraq
1
0-0
1-0
0
Saudi Arabia
マフムード 73'
得点者

2011年アジアカップの組み分け抽選で第一ポッドに入ったのが、カタール、韓国、サウジアラビア、イラクの4カ国である。そのうちの2カ国が戦った前回大会(2007年)の決勝をプレイバックしよう。

イラク代表といえば、戦争により練習すら本国で行えない状況で2004年のアジアカップに出場。同年のアテネ五輪ではベスト4に進出して話題となったが、その中心にいた、10番ユニス・マフムード、5番ナシャト・アクラム、11番ハワル・モハメドといったメンバーは2007年に行われたこの大会でもチームの根幹を支えた。

イラクには上述のマフムード、サウジアラビアには大会得点王となったFWヤセル・アル=カフタニ、準決勝で日本を沈めたFWマレク・マーズと両チームの前線の駒が揃っていながら、互いに対照的な戦いをする。イラクは中東には珍しい組織的なプレッシングを元にDFラインを高く保ち、前へ前へとリスクを持って攻めて行くシステムを監督が変わろうとも貫いているが、サウジアラビアは反対に相手にポゼッションをさせる形で様子を見ながら一瞬のスキを狙うスタイルだ。

決勝でもその姿勢は変わらず、ポゼッション(前半は52%)を進めるイラクに対して、サウジアラビアはボランチのアジズがサイドをケアしてイラクのサイドアタックをつぶすなど対抗策を見せた。しかし、後半に入ってその展開は徐々に変化していった。サウジアラビアは「より危険な位置を守ろう」という意識で、中央にボランチ二人を残し、サイドをそれほど厚く守らない形にシフトする。対するイラクも最初から飛ばしたこともあって、運動量は維持しているように見えたがアプローチは少し衰えが感じられていた。そのため、サウジアラビアはイラクのサイド攻撃を許し、またイラクはサウジアラビアのカウンターに脅かされる激しい攻め合いとなったのだ。

試合が動いたのは後半27分(公式記録では73分)、イラクのコーナーキックを防いだ後のカウンターで、マフムードが上手く粘ってセットプレーを奪ったところからだった。モハメドがファーサイドに大きなクロスを放り込むとサウジアラビアのGKアル=モサイレムが不用意に飛び出すも触れないというミスを犯してしまう。これはグループリーグでも見せたミスであり、イラクの作戦勝ちとも言える場面だった。上手く落下地点に先に入り込んだのはエースのマフムード。ヘディングがサウジアラビア・ゴールへつきささることとなった。先制点をあげたイラクはしっかりと守ってカウンターという戦術に移行。最後は5バック、6バックにも見えるような人数のかけ方でサウジアラビアの怒涛の反撃を耐え抜いて、アジアカップ初優勝を決めた。

下馬評が決して高くはなかったがイラクだが、高いモチベーション、決勝戦でもいつも以上の力を見せるなど大会を通して成長。決勝での戦いぶりも王者としてふさわしい堂々たるものだった。

(筆:Qoly編集部 Q)



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