戦術クロニクルシリーズ最新作は"バルセロナ"
Footballista紙"戦術リストランテ"などでおなじみの西部謙司氏。近年は精力的に書籍を刊行しているが中でもカンゼン刊行の"戦術クロニクル"はシリーズ化され、6月には第三弾となるバルセロナ戦術アナライズが発売となった。
サッカージャーナリスト西部謙司が"バルセロナの戦術を徹底分析!"と銘打った本書。6,7章で現在のバルセロナについて語るばかりではなく、歴代バルセロナの戦術を詳しく解説した一冊となっている。バルセロナを賞賛するだけではなく、 "バルセロナイズド"を目指し失敗した例を挙げるなど現実的な側面を忘れないところも見逃せない。
今回は弊社が少しだけ資料協力を行わせて頂いたご縁で西部氏へのインタビューの機会を頂いたが、担当の私は田舎クラブばかり追いかけ、バルセロナのクライフ時代などは後から映像を後追いしたバルサ若輩者。どうせなら「バルサファンの真剣な質問が見たい!」と思い、Twitterを通じて読者から質問を募集し、西部氏に"ガチ解答"して頂いた。
< 西部謙司氏に訊く「バルセロナ戦術アナライズ」 >
jari343さん |
Q. グアルディオラ監督は選手交代が下手でしょうか? |
西部謙司氏 |
A. 下手ではないと思います。戦況を読んで的確に手を打つ手腕は大したものです。 まあ、バルサの常套手段的なところもあるのでペップの才能だけではないですけど。もし、交代が下手だと思えるとしたら、選手層によるものかもしれません。昨季のバルサは選手層がけっこう薄かった。 チャンピオンズ・リーグもあるのでローテーションもしています。その中で、送り出した選手が活躍できなかったという例はあるかと思います。 |
jari343さん |
Q. バルセロナが最強のサイクルを今後も続けるために、メスを入れるべきポジションはありますか? |
西部謙司氏 |
A. チャビのバックアップ、ストライカー、サイドバック、センターバックの控えでしょう。 バルサは層の薄いチームで、ケガ人が出て控えもいなくなるとカンテラから補充する方式です。これはこれでいいのですが、バルセロナBからローマに行く選手もいそうなので(ボヤン・クルキッチの移籍が決定)、来季は補強しないと厳しいかも。 |
NicoNicalcioさん |
Q. こんにちは。にこにかるちょと申します。よろしくお願いいたします。 質問はずばり「バルサ式サッカーで最も理想的なセンターフォワード(以下:CF)のタイプは?」です。バルサのサッカーで唯一模索中の部分なのではないでしょうか。メッシのゼロトップスタイルがベストとは思えないのです。 |
西部謙司氏 |
A. バルセロナの攻撃陣の欠点は高さがないことです。 2シーズン前にイブラヒモヴィッチを獲得したのは、その意味でバルセロナの新しいチャレンジでした。 ところが、ズラタンもフィットできませんでした。 彼はアヤックスの出身ですからバルセロナのスタイルには合うはずなのですが、攻守の切り替えの部分で物足りなかった。 性格的にも合わなかったのかもしれません。ズラタンは失敗ではなかったが成功でもなかった。 その後は方針を戻して機動力のあるFWで固めています。ジュゼッペ・ロッシなども同じ路線の補強ですね。メッシのゼロトップを続けるのだと思います。ただ、僕もメッシはウイングのほうがいいのではないかと思っていて、そうなると候補はフェルナンド・トーレスしかいないのですが、チェルシーではもう手が出ません。 理想のCFは高さと機動力があり、守備もしっかりやれる選手。さらにテクニックが高くて引いて受けられる能力があり、もちろん得点力も要求されます。高さを除けば候補はいますが、高さもということならトーレス以外に思い浮かびません。 |
KG_Leclair_1995さん |
Q. 2000年代前半のバルセロナは現在の状態に比べるとかなり悪い状態だったと記憶していますが、そこから抜け出せた最大の要因は何だったとお考えでしょうか?ラポルタ?ライカールト?ロナウジーニョ? |
西部謙司氏 |
A. ロナウジーニョ、デコ、エトーの3人が大きかったのではないでしょうか。 |
hikkakariさん |
Q. 著書内で「バルサ式」を取り入れる事の難しさと危険性についてご指摘されていますが、これはペップ自身が今後バルサ(スペイン)外で指揮を振るう場合も直面するであろう問題です。どこを率いるかでも変わってくると思いますが、「バルサ原理主義者」であるグアルディオラは、どの戦術要素をレベルまで今ある戦術を残すと現時点で思われますか? またその結果でいわゆる分かりやすい「バルサ要素」であるポゼッションをある程度切り捨てた戦い方に切り替える可能性はあると思いますか? |
西部謙司氏 |
A. グアルディオラが他のチームの監督になるとすれば、新しいバルセロナを作ろうとするのではないでしょうか。 ローマの新監督に就任したルイス・エンリケ(前バルセロナB監督)は、ちょうどその様な立場にいると思います。まずはカンテラの整備から始めるでしょう。ルイス・エンリケはポゼッションを諦めないと思いますし、グアルディオラが他チームの監督になっても同じでしょう。 ただ、これは実際にその場にならないと本人にもわからないことかもしれません。実はモウリーニョもポゼッションを重視する監督です。ボールを使わない練習をしない人です。しかし、バルセロナと対戦するときはポゼッションを諦めざるを得ない。そのとき、モウリーニョは大きく舵を切っています。ルイス・エンリケ、グアルディオラ、あるいはアンドレ・ビラス=ボアスがバルセロナと対峙したときにどうするかは興味深いですね。 |
villarreal442 さん |
Q. 僕はバルセロナはハイボール戦術が苦手だと思うのですが、(ラシン・サンタンデール時代のジギッチ(セルビア代表FW)など)仮にバルセロナVSストーク・シティが実現した場合、西部さんはどのような展開になると思われますか? |
西部謙司氏 |
A. ストーク・シティのホームでやると仮定してもバルサに勝つのは難しいでしょう。 ハイボールは確率の低い攻撃です。そのぶん、手間入らずで相手ゴールに近づくことができますが、それでも回数を増やさないとなかなか点にはならない。バルセロナと対戦した場合、ストーク・シティにはほとんどボールがないでしょうから、ハイボールを仕掛ける回数が限られてしまいます。ストークが何回ハーフラインを越えられるかの勝負ですが、そんなに多くはならないと予想します。ハイクロスの雨あられという展開ならばストーク・シティに勝ち目が出てきますが、まずそうはならないでしょう。 |
Kuriphanさん |
Q. 圧倒的に強いバルセロナですが、全盛期のロナウドとジダンがレアル・マドリーにいても、バルセロナが試合を有利に進めるでしょうか? です。 |
西部謙司氏 |
A. これは現在のレアル・マドリーにロナウドとジダンがいるという仮定ですね?つまりFWにはロナウドが2人(ポルトガルとブラジルの)、さらにジダンがいると。有利に試合を進めるのは、それでもバルサだと思います。ただし、レアル・マドリーはカウンターの威力が倍増される。バルセロナのフォアプレスをジダンならかわせる、カウンターになったら2人のロナウドは止められません。ポゼッションはバルセロナになり、有利に試合を進めることはできるでしょうが、この場合、勝敗の行方はかなりわからなくなりますね。 |
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ここまで「バルサ」を語った本はありません。 バルサを知れば、もっとバルサを楽しめる。 |
<著者> 西部謙司 (にしべ・けんじ) 1962年9月27日、東京生まれ。少年期を台東区入谷というサッカー不毛の地で過ごすが、小学校6年時にテレビでベッケンバウアーを見て感化される。以来、サッカー一筋。早稲田大学教育学部を卒業し、商事会社に就職するも3年で退社。サッカー専門誌の編集記者となる。1995~1998年までフランスのパリに在住し欧州サッカーを堪能。現在はフリーランスのサッカージャーナリストとして活躍。著書に『サッカー戦術クロニクル』『サッカー戦術クロニクルII』『これからの「日本サッカー」の話をしよう』(カンゼン)、『1974フットボールオデッセイ』『イビチャ・オシムのサッカー世界を読み解く』(双葉社)、『サッカー日本代表システム進化論 』(学研新書)、『技術力』『監督力』(出版芸術社)、『「日本」を超える日本サッカーへ』(コスミック)などがある。 |
(筆:Qoly編集部 Q)
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