2011-12シーズンの冬の移籍市場も佳境に差し掛かり、補強可能期間は残り1週間ほどになったが、シーズン半ばでの移籍は即戦力としての大きな期待が寄せられることもあり、「あいつの移籍で救われた」、「あの補強は全く意味がなかった」など、シーズン終了後にはサポーターたちが鉄板ネタとして語るものだ。
今回の冬の移籍市場における補強の成否を語るにはもう少し時間がかかるため、『off the post』などに寄稿しているライター、ロブ・パーカーがまとめた「プレミアリーグにおける、2002-03シーズンから昨季までの各シーズン別の“最優秀冬移籍”」を元にこれまでのシーズンで見られた大成功例を振り返ってみよう。まずは前編。
2002-03 スティーヴン・クレメンス(トッテナム→バーミンガム)
一時はトッテナムでレギュラーポジションを掴んだが、ここ数シーズンはベンチ外も多い苦難の時期を過ごし、心機一転を待ち望んでいたクレメンスが2002-03シーズン途中に選んだ移籍先はバーミンガムだった。当時評価は急落しており、移籍金は100万ポンドにも満たなかったが、スティーヴ・ブルース監督の下で息を吹き返して大復活。2006-07シーズンにはプレミアリーグから降格したチームを再びトップリーグに押し上げる活躍を見せた。
2003-04 モーリッツ・フォルツ(アーセナル→フラム)
ドイツ期待の若手右サイドバックとして注目を集めていたが、アーセナルでの出番は皆無。その将来を危惧する声が高まっていたが、彼が2003-04シーズン途中に下したフラムへの移籍で不安を一蹴した。不動の右サイドバックとしてポジションを確保すると、その後2009シーズンまでプレー。ドイツ代表での成功は果たせなかったが、“ヴォルツィー”の愛称で親しまれたクレイヴン・コテイジでの日々は彼にとって紛れもなく成功だった。
2004-05 マイケル・ドーソン(ノッティンガム・フォレスト→トッテナム)
「トッテナム史上最高のセンターバックの一人」としてサポーターから抜群の信頼を集めるマイケル・ドーソン。彼の大きな転機となったのが2004-05シーズンにおける冬の移籍だった。ノッティンガム・フォレストに所属していた頃から大きな期待は寄せられ、トッテナムが彼を獲得するために投じた400万ポンドという額を考えれば、その期待度の高さも想像できるが、彼の能力はそれ以上だった。移籍初年度のリーグ戦で出場機会を与えられることはなかったが、2005-06シーズンからは守備の要としてスパーズで躍動。その後、2010年のW杯メンバー招集されるなど、大きな成長を見せた。
2005-06 パトリス・エヴラ(モナコ→マンチェスター・ユナイテッド)
現在、マンチェスター・ユナイテッドにおいて、左サイドバックとして確固たる地位を築いているパトリス・エヴラが加入したのも冬の移籍市場での話だった。ミカエル・シルヴェストルの後釜としてモナコから550万ポンドで迎え入れられると、徐々にプレミアリーグの水にも慣れ、2006-07シーズンには24試合の出場ながらPFAのベストイレブンに。2008-09シーズンからは同賞を2年連続で獲得している。
2006-07 クリント・デンプシー(NEレヴォリューション→フラム)
既にアメリカ代表にもコンスタントに招集され、MLSにおいても「国内屈指の攻撃的MF」として評価を受けていたが、フラムが彼を即戦力として獲得した際には懐疑的な目が向けられることも少なくなかった。だが、その後の彼のパフォーマンスは周知の通りだ。プレミアリーグのデビューシーズンから実力を発揮すると、2010-11シーズンにはアメリカン人プレーヤー初となる二桁得点、2011-12シーズンには初となるハットトリックを記録するなど、プレミアリーグの歴史にその名を残し、フラムで築き上げた通算成績も、出場試合数は200試合を超えてゴール数も50以上。もはや彼の能力を疑う者は存在しない。