ヨーロッパでは、宗教的であったり、クラブ成立のバックグラウンドから、強烈な対立関係が存在したりする。それは同じ街に複数のクラブがある場合もあれば、街自体の対立であることもある。「〇〇ダービー」なんて言葉はよく聞くし、「クラシコ」なんて言葉も、サッカーをやっていれば、ほとんどの方がご存知の言葉になっている。

Jリーグでもそういったネーミングで煽っているものもあるが、いかんせん取ってつけたような背景が見え隠れする。もともとそういった歴史的な背景が無いことがほとんどであり、クラブ自体の歴史も浅いので、これをヨーロッパや南米のそれと比べるのは、いささかズレている。

仲良しこよしが全ていいとは思わない。強烈な対立が競争を煽って、良い方に作用する場合もあるだろう。しかし、仲良くやっていいとこ取りすることも必要だなあ、と思うことも少なくない。そして、20周年を迎えたJリーグにはそれが出来る可能性があることを、先日の等々力競技場で感じることになった。

もう一週間も前になるのだが、川崎フロンターレ-ベガルタ仙台の試合を観に、等々力競技場へ向かった。Twitterではカントナのアイコンを使っているし、コラムもユナイテッドのことが殆どではあるが、川崎市民なわたくし、フロンターレも大好きです。「今シーズン初観戦」という少し疑わしい面は置いておき、いろいろな楽しみを抱いて等々力へ向かった。

怪我人が出つつあるものの、首位に立つベガルタと、風間新体制のフロンターレ。両クラブのファンやサポーターならずとも、面白いカードで、昨シーズン、震災で中断したJリーグの再開カードでもある。フロンターレはJA全農福島にスポンサードを受けていたこともあり、震災で被害を受けた地域と無関係ではなく、震災復興への活動はJリーグのクラブの中でもかなり積極的に行なっているのは、各マスコミなどでも取り上げられたので、ご存知のかたも少なくないだろう。

ベガルタは様々なスタジアムで励まされながら昨シーズンを戦っていたが、フロンターレとの関係はその中でも非常に良好なように見える。

お互いのスタジアムに脚を運び、サポーター同士、お互いがお互いを励まし合う。お互いのチャントを歌うことに何も違和感がなく、当たり前のように歌う。ベガルタで無ければ、震災に遭ったクラブでなければ、ということは否めないが、とにかくサポーター同士がエール交換を同然のように行う。

私が驚いたのはここから先のことである。私は、等々力で観戦する際には、試合が観やすいように、アウェイ側とホーム側の境に近い二階で観戦することが多い。当然、相手クラブによっては激しい野次やチャントが聞こえてくる場所でもある。通常、エキサイトしすぎても対処できるように、ホーム側とアウェイ側の席の間には何らかの仕切りや、緩衝帯が設けられているのは、他のスタジアムでもごく当たり前になされていることであり、等々力でも当然のように行われる。しかしこの試合、あるはずのものがない。私は目を疑ったが確かにない。 昨シーズンの再開試合と、ベガルタは本拠地にて緩衝帯を取っ払ったことはあったはずだが、それ以外のクラブが本拠地で緩衝帯無しで行うというのはあまり聞いたことがない。

バックスタンド側のコンコースには黄色と水色のユニフォームを着た人たちが混ざり、時折楽しそうな会話も聞こえてくる。行きや帰り、スタジアムの中でも青と黒のユニフォームを纏いながら黄色のタオルマフラーをした方、その逆の方を見かけたのは何度あったことか。通常緩衝帯になっている部分が人で埋まるまではいかなかったが、違う色のユニフォームを纏った人たちが、同じ場所で違うクラブを応援していた光景は、素晴らしいものであった。

震災がなければこのような関係になることはなかったのかもしれない。一時的な活動は海外でもよく行われる。しかし、ここまで友好的になれるのはやはり特別な何かがあるから、と信じたい。まだ一年、しかし、このような関係はずっと続いていって欲しいし、続くものだと信じたい。サポーターたちを含めて、お互いをリスペクトし合い、素晴らしい雰囲気で試合を観戦できる楽しみ。私にとって、ここにJリーグの可能性はあるのではないか?とも考えさせられる出来事であった。

試合の中身に全く触れていないが、久しぶりの「等々力劇場」であったことに触れわけにはいかない。後半ロスタイムに、初先発の福森晃斗が左足で美しい放物線を描き、矢島がそれをゴールにねじ込んだ。それまでのらしさを失った昨シーズンから見事に戻りつつある、と印象づける試合となった。「等々力競技場はやはりいい意味で心臓に悪い。こういった場所でないといけない」と思ったサポーターはどれくらいいただろう。

もっとも、等々力が「劇場」となったのは翌日のファン感謝祭も同様である。大半の選手が試合後のコメントで、試合のみならず、ファン感について触れていたことは、やはりこのクラブの特殊性を表している。

セレッソサポーターの皆さん、あの小松塁はキューティーハニーのコスプレするまで変わりました。怪我で踊る姿をお届けできなかったことが残念です。

これでこそフロンターレである。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

 

筆者名 db7
プロフィール 親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
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ツイッター @db7crsh01
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