先週の土曜日と日曜日(6月9日、10日)に味の素スタジアムにて第11回日本ブラインドサッカー選手権B1大会が行われた。

2003年に始まった大会史上最多となる12クラブが日本一の座を目指し、熱い戦いが繰り広げられた。

今回の当コラムでは、初めて生でブラインドサッカーを観戦した筆者による観戦記をお送りしたい。

ブラサカとは?

観戦記をお送りする前に、まずはブラインドサッカー(以下ブラサカ)の概要を説明しておきたい。

まず、ブラサカはB1クラス(アイマスクを付け、全盲状態)とB2クラス(弱視者)の二つのカテゴリーに分けられ、B1クラスの日本一を決める今大会には、前述したように史上最多となる12クラブが参戦した。

B1クラスでは、フィールドプレーヤー(4人)、ゴールキーパー(キーパーエリアは5m×2mの長方形しかなく、その枠内でしかプレーは許されない)、コーチ、コーラー(攻撃する側のゴール裏に立ち、攻撃に関する指示を出す)の7人がメンバーとして戦うい、フィールドプレーヤーは視力の差を公平にするため全員がアイマスクを装着してプレー。ゴールキーパー、コーチ、コーラーは健常者が務め、指示出しを担う。

ブラサカで使用されるボールの中には特殊な鈴が入っており、「シャカシャカ」という音がする。つまり、プレーヤーはその音とゴールキーパー、コーチ、コーラーの声を頼りに攻撃、守備を行うということだ。

迫力満点のブラサカ

筆者はテレビでブラインドサッカーの模様を観たことがあったものの、生で観戦したことはなかった。今回、初めて生で観戦したが、筆者の予想以上に迫力があり、驚きの連続だった。

この写真から分かるように、今大会はピッチとスタンドの間にあるスペースに2つのコートを設置し、試合が行われた。

幸運だったのは、スタンドからだけでなく、ピッチに降りて観戦することができ、間近で迫力満点の戦いを観戦することができたことだ。

ちなみに、ブラサカのコートは左右に壁がある。そのため、ボールがコートから出るのはシュートを撃った時だけに限られる。そして、この壁が非常に大事な役割を担っている。

ボールがゴールラインを割り、ゴールキーパーがスローイングをする際(ブラサカではゴールキックではなく、ゴールスローで試合が再開する)、攻撃側の選手4人の内2人が左右の壁に張り付く。ゴールキーパーは目で戦況を確認し、フリーになっている選手の方にボールを投げる。この壁際の攻防が勝敗を分けるため、ディフェンスは非常に激しいチャージで相手選手を潰しにかかる。この様は迫力があり、とても圧倒された。

また、声を出すゴールキーパーとコーラーの存在は非常に大きい。

ゴールキーパーは主にディフェンス面の指示を出す。相手プレーヤーの位置、状況を味方に伝え、相手チームのセットプレーの際には細やかな指示でポジショニングを修正する。

一方のコーラーはオフェンス面の指示を担当。ゴール裏から大声で味方の攻撃をサポートする。

例えば、「あと5メートル、左45度、シュート!」といった具合に、ゴールとの距離、角度をしっかりと判断し、味方がゴールを奪えるように精一杯声を張り上げるのだ。

選手とコーラーのコンビネーションが良くなければ、絶好のシュートチャンスも水の泡と化してしまう。ゴールが決まった後にガッツポーズをするコーラーの姿を見ると、責任感の重さがひしひしと伝わってきた。

ブラサカの選手たちの凄さ

ブラサカをプレーする選手たちの凄さは、恐怖心を克服したところにあると筆者は考える。

日常生活で目を閉じて歩く、走るという行為を実際に行ってみると分かるが、目を閉じて何らかの行動をするには目を閉じたことによって生じる不安や恐怖心に打ち勝たなければいけない。

ブラサカには相手選手との接触が付きものである。目を閉じて歩く、走るだけでも十分恐怖を感じる筆者にとって、この恐怖を克服し、タックルを繰り出すブラサカの選手たちは本当に凄いと感じた。

また、今大会にはブラサカ体験コーナーが設けられており、別コートでフットサルを楽しんでいた選手たちの多くがブラサカを体験していた。

ブラサカの選手たちはまるでボールが見えているかのようにボールを自由自在に操るのだが、初めてブラサカを体験したフットサルの選手たちは、中々ボールを前に運べず、悪戦苦闘。

毎日の練習で華麗なテクニックを身につけたブラサカの選手たちの凄さをここでも感じた。

最後に

やはりテレビ画面を通して観るブラサカと生で観るブラサカは迫力が全く違った。ゴールキーパー、コーチ、コーラーの出す声の重要性も実際に生で観たからこそ感じ取ることができたように思う。

熱戦が続いた今大会を制したのは、世界2位のスペイン代表を撃破した経験がある「たまハッサーズ」(東京都)。筆者は都合により、9日に行われたグループリーグしか観に行くことができなかった。今度は是非生で決勝戦を観戦したいところである。

2012/6/15 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

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