財政難と言われながらも補強ターゲットを次々と獲得しているミラン。10年選手の多くを放出したため来季のチームは大きな変化を遂げるかもしれない。
アレッサンドロ・ネスタの去ったDF陣にはキエーヴォのフランチェスコ・アチェルビの加入が決定。チアゴ・シウヴァ、フィリップ・メクセス、ダニエレ・ボネーラ、マリオ・ジェペスの5人でシーズンをローテーションすることになる。右サイドバックはイニャーツィオ・アバーテに託す方向で問題ないがバックアッパーがいない。ダニエレ・ボネーラや両翼可能なルカ・アントニーニが候補となるが人材難だ。
問題は左サイドバックの補強だ。昨季多くの選手がローテーションで起用されたポジションだ。しかし、マルセイユから加入したタイェ・タイウォはデビュー戦でマッシミリアーノ・アッレグリに見限られ、ジャンルカ・ザンブロッタは往年の切れ味なく、ジャメル・メスバーは完全なる役不足。ルカ・アントニーニは守備に難を抱え、ダニエレ・ボネーラは4-3-1-2の左翼を任せるには推進力が足りなかった。緊急時に起用されたウルビー・エマヌエルソンは、クロス以外の面では改善が大幅に必要であり、今季も中盤のマルチロールが彼の役割となるはず。ミラノ・デルビーで途中出場ながらに貢献したマッティア・デ・シーリョは唯一の希望に感じられるが、線の細さなどプロ選手としてやっていくにはまだまだ時間がかかりそうだ。候補として噂されるのはイタリア代表としてEURO2012に参加中のフェデリコ・バルザレッティだが、ガッリアーニは獲得の可能性を否定。代わりエスパニョールへローン移籍していたディダク・ビラをチームに戻す可能性があるようだ。
多くの選手の退団した中盤は大幅な入れ替えとなっている。リッカルド・モントリーヴォ、バカイェ・トラオレ、そしてケヴィン・コンスタンの獲得が既に決定。モントリーヴォはアッレグリの4-3-1-2中盤ならどこでもプレーする事ができ、退団の決まったクラレンス・セードルフの後釜として期待されることになる。トラオレ、コンスタンはインサイドハーフでの起用が濃厚であり、手術したサリー・ムンタリの6ヶ月離脱とマチュー・フラミニの退団の穴を埋める事になる。
問題は中盤の底において、司令塔でありDF前のフィルターとして君臨していたマルク・ファン・ボメルの後釜である。現在、主だった候補はなく、リヴァプールへレンタルバックし、再加入が噂されるアルベルト・アクイラーニは、セリエA最終節においてアンカーとしては失格に終わっている。キャプテンのマッシモ・アンブロジーニがその任を務める事が濃厚だが、守備的な能力は評価できるがコンダクターとしての力は平凡であり、アッレグリの要求を満たすことはできない。これらをふまえるとモントリーヴォを起用に落ち着く可能性が高い。そうなるとミランのティフォージは彼を思い出してしまうだろう。稀代のレジスタでありEUROでも輝く姿を披露するアンドレア・ピルロを。正直、ファン・ボメルの退団は非常に大きい、と言って問題ないだろう。世界を探しても彼と似たようなタイプの選手は非常に限られるからだ。EURO2012で大きな賞賛を浴びるイタリア代表の16番は理想的な選手の一人だが、ミランには彼を獲得する財力はなく、所属するローマも放出することはないだろう。
(筆:Qoly編集部 N)