今冬の移籍市場が幕を閉じ、欧州各国のクラブの多くが選手の獲得・放出を行ったが、中でもセリエAの各クラブは精力的に動いた。

降格の二文字がチラつくシエナ、パレルモ、ペスカーラ、ジェノアが積極的な血の入れ替えを断行する一方、上位を争うインテルとミランではウェズレイ・スナイデル、アレッシャンドレ・パト、マリオ・バロテッリといった超大物の移籍が話題を呼ぶなど、各クラブのティフォージにとっては一喜一憂が絶えないメルカートとなったことだろう。

今回の当コラムでは、超大物が移籍したミランから感じる”上昇の気配”と”バロテッリの行方”について述べていきたい。

・確かな上昇の気配

深刻な財政難の影響からジェンナーロ・ガットゥーゾ、クラレンス・セードルフ、アレッサンドロ・ネスタといった百戦錬磨のベテランたちを手放し、攻守の柱であったズラタン・イブラヒモヴィッチ、チアゴ・シウヴァをパリ・サンジェルマンに放出するなど、今シーズン開幕前に激震が走ったミラン。開幕直後は組織の構築に時間がかかり、なかなか波に乗り切れない時期が続いたが、第14節で首位を走るユヴェントスをサン・シーロで破って(1-0で勝利)以降は勝ち星を積み重ね(その後9試合で7勝1分1敗)、第23節のウディネーゼ戦(2-1で勝利)を終えて4位に浮上。確かな上昇の気配を感じさせている。

この上昇気配を演出したのが、解任の噂が絶えなかったマッシミリアーノ・アッレグリである。今シーズンのアッレグリは就任以降基本システムとしていた「4-3-1-2」に加え、「4-3-3」、「4-2-3-1」や3バックを試行するなど、日替わりのオーダーで戦っていたが、システムを「4-3-3」に固定したことで、現有戦力の良さを上手く引き出すことに成功。以前からアッレグリの采配は称賛を集めていたが、改めてそのバランス感覚を多くのサッカーファンに見せつけた。

チームを包むポジティブな雰囲気はプレーする選手たちも感じており、正確なキックで存在感を示すリッカルド・モントリーヴォは

『僕たちは、正しい方向に動いているよ。一つのチームになり始めている。シーズンの最初は困難もあったけど、この結果はそれを克服したことを証明していると思う』

『ここ数カ月、僕たちは以前よりも調子の波が少なくなった。前は試合でうまくプレーすることだけを意識していたけど、今はアイデンティティーを作り上げている』

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/sports/headlines/article/20130130-00000023-goal

とコメント。このコメントは、ウインターブレイクが明けてから負けなし(4勝1分)のチーム状態を如実に示しているモノだろう。

また、物議を醸したベテランたちの移籍が結果として若手たちの成長に大きく繋がったこともプラスの材料だ。快調にゴールを積み重ね、前半戦のミランを文字通り牽引したステファン・エル・シャラウィ、本職の右サイドバックだけでなく、左サイドバック、センターバックもこなしたマッティア・デ・シーリョ、バルサ仕込みのテクニックとゴールセンスが光るボジャン・クルキッチ、まだ18歳ながら、飛び級でフランスU-21代表に選ばれているエンバイ・ニアングらが移籍したベテランたちを忘れさせる活躍を披露したが、彼らが順当に成長すれば、ミランの未来は非常に明るいものとなるだろう。

・バロテッリは吉と出るか凶と出るか

後半戦の更なる巻き返しに向けて今冬のメルカートで戦力を整えたミランだが、超目玉となるのがマンチェスター・シティから電撃移籍を果たしたマリオ・バロテッリである。バロテッリには、コリンチャンスに移籍したアレシャンドレ・パトの穴を埋めて余りある活躍が期待されるが、やはり「素行の悪さ」という悪癖が治るかどうかが大きなポイントとなるはずだ。

バロテッリはこれまで所属したクラブで数々の問題行動を起こしてきた。余りにもその類のエピソードが多すぎるため、ここでは割愛させていただくが、インテル時代にはあのマルコ・マテラッツィとひと悶着起こし、マンチェスター・シティに移籍してからも、インテル時代から師弟関係を築くロベルト・マンチーニと掴みあいの大喧嘩を繰り広げるなど、その悪童ぶりには拍車が掛かっている。それだけに、伝統的に「ファミリー」としての一体感を重要視するミランでの活躍に懐疑的な声が存在するのは致し方のないことかもしれない。

だが、筆者はバロテッリがミランで活躍できると睨んでいる。それは、バロテッリが「王様」として振る舞う環境がミランには整っているからだ。

バロテッリの「類まれなサッカーセンス」、「強靭なフィジカルを活かしたプレースタイル」、「大物感を漂わす言動」はかつて大エースとして君臨したズラタン・イブラヒモヴィッチ(現パリ・サンジェルマン)を想起させるものだが、このような「王様」タイプは自らがチームの中心として振る舞い、気持ちよくプレーすることが活躍の条件となる。マンチェスター・シティではどこかその存在が浮き気味だったのは、シティが「組織的・連動的な崩しを第一とする」コンセプトをチーム方針としていたからであり、気まぐれなバロテッリはチームにフィットしていなかった(もちろん、本人の問題行動も原因のひとつだが)。だが、これまでのミランにはカカ(現レアル・マドリー)、前述したイブラヒモヴィッチのような「王様」タイプがその能力を十二分に発揮し、勝利を積み重ねてきた伝統がある。つまり、アッレグリがバロテッリ中心のチーム作りに成功すれば、自ずとバロテッリも輝きを増すということだ。先のEUROでのプレーを観る限り、そのポテンシャルの高さに異論の余地はないだけに、ミランを「安住の地」とできるか注目したい。

2013/2/4 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

 

筆者名 ロッシ
プロフィール エル・シャーラウィ、ネイマール、柴崎岳と同世代の大学生。鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援しています。野球は大のG党。
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