「白ワインと赤ワインのファーストレグ」
前回のプレヴューコラムで色々と予測したものの、スターティングラインナップとその布陣に関して透かされて、時計は4:45を指し示した。
時系列的に追っていこう。
マドリー側に驚きはなく、ユナイテッド側も事前の会見で香川を使うことを名言していたため、ある程度の予想は付いたのだが、キックオフ後に中央に香川がいるそのフォーメーションを見て驚かされた。前半の香川の仕事はラインブレーカーだった。楔のパスはほぼチェックされ餌食になっていたが、マドリーの最終ラインを牽制する形でファン・ペルシーが落としたボールを見てバイタルエリアから裏へ走りこむという仕事を請け負った。ルーニーをこの位置に置かず、アロンソへのチェックを激しくしない代わりにユナイテッドはそのチェックする位置を低くしたまでである。ジョーンズを中盤で起用し、マドリーの二列目に対して穴を開けないようにしていたので、香川への距離は幾分遠かった。加えてマドリーの高い位置からのプレスはユナイテッドを押し込んで、ボールポゼッションを高めていき、ユナイテッドはロングボールを多用せざるを得なかった。このためボールを持ってどうのこうのする余裕は香川にもルーニーにも無かったと言うべきだろうか。あの素早いチェックから逃れて繋げるのはバルセロナくらいなように思えた。
押し込むマドリーは、球際での弱さを見せて穴になっていたラファエウを狙い撃つかのように、コエントラォンがポジションを上げてルーニーの位置を下げ、より押し込む形を取っていった。セットプレーで先制したユナイテッドだったが、「息子」によって、あのモスクワの歓喜の夜を思い出させるような滞空時間の長いヘディングを決められあっさり“タイ”に戻される。追いつかれてからは、押し込むマドリーと裏かビルドアップかはっきりしないユナイテッド、当然のようにマドリーペースで試合が進む。
前半が終了して、カードももらい穴でしかなかった「前科者」のラファエウを替えると思われたが、ファーガソンは信じて後半へ向かう。私のこの心配は杞憂に終わり、ラファエウは立ち直って後半を過ごした。
アウェーゴールを得た以上、スコアはこのままでも御の字のユナイテッドは無理に出る必要はなかったが、後半は先手を取って進む。スタートは香川が左にまわり、中央にルーニー、右にウェルベック。チャンスはどちらにも訪れ、前半よりもユナイテッドが自発的に動けるようになっていた。マドリーのハイラインプレスがいつまで続くかがユナイテッドがより主導権を握るポイントであったが、さすがにそこはモウリーニョ。60分でベンゼマを下げ、代わりにイグアインを投入して前線からのチェックは継続させた。
一方、ユナイテッドも運動量が落ちて、香川に変わってギグスが入り、ユナイテッドの左サイドはより使われるようになったが、跳ね返すだけなら何度も修羅場を潜ってきたメンツが構えている。マドリーもさすがに運動量が減り、ウェルベックをアロンソに当てたことで、前半よりもオープンな展開になっていった。高い位置から来るマドリーのプレスは確かに脅威であったが、さすがに後半のさらに中盤以降は脚が止まり、ポゼッション時の崩しの拙さも顔を見せた形となった。もっともユナイテッドも守備に忙殺された中盤とルーニーたちは、ボールを効果的に回すことが出来なかったわけであるが、ウェルベックの躍動感とゴールこそ獲られなかったもののファン・ペルシーの仕事っぷりは流石だった。もちろんデ・ヘアについて触れないわけにはいかないが、それはこの試合を見ていたと思われるコラムの読者の皆様には説明不要だろう。いや、仕事放棄では無いのであしからず。互いに交代カードを切ったが決め切るに至らず、アウェーゴールを手にしてオールド・トラフォードへ帰ることとなった。
とまあ、試合の流れはこのような形であったが、スコアは落ち着いたものとなり、ユナイテッドとしては満足の行くスコアで終えることが出来た。マイナスの条件を抱えずにほぼイーブンでマンチェスターに戻れるからだ。もちろんイーブンに近い条件というだけで、マドリーの攻撃力は嫌というほど見せつけられた。0-0でも勝ち抜けられるが、そういうわけには行かないだろう。こればかりはスコアの推移によってめまぐるしく目指すべきスコアが変わるからだ。ただしどちらも勝てば文句はない。ポジティブな要素を挙げるとすれば、1つ、ユナイテッド的にはチチャリートを隠せた。もちろん映像等でチェックされてないはずが無いのだが、実際に対峙させなかったことで、対策を立てられぬままに望むことができる。香川の二列目からの飛び出しがある程度形になっていたことを考えても、前線から追っかけ回せて、飛び出せるチチャリートはマドリーの最終ラインにとっては厄介なのでは無いだろうか。2つ、数年前にマドリーが夢見た劇場には、タイトなスケジュールでバルセロナとの二連戦を経由しないと行けないとのことだ。元々カウンターチームとはいえ、これがマドリーにとってポジティブなものではないことは確かだろう。
こう考えれば結果はユナイテッドにとって悪くないものとなったが、後味はフェリックス・ブリッヒの笛で悪いものとなった。
※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。
筆者名 | db7 |
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