「ブラジル信仰から脱出セヨ」

ここ数年、国の頂点に立つのは言うまでもなくスペインだ。それは一時的なものかもしれないし今後も続くのかもしれない。それは神のみぞ知るところだが、言うまでもなくボールを蹴らせたら世界一の国と言われれば、三匹のライオンではなく、カナリアイエローを纏う「セレソン・ブラジレイラ」を思い浮かべる方が今でも殆どと思われる。

ブラジルからフットボールを「輸入」したことがない国を挙げるほうが難しい。選手や文化、技術、方法論、コーヒー豆だけではなく、ブラジルが誇る輸出品は、世界各国のフットボール市場で取引されている。もちろん日本とて例外ではなく、言うまでもないくらい彼らからの恩恵を受けて日本サッカー界は発展を遂げてきた。指導者、選手、帰化…もう本当に数えきれないくらいに。

で、セルジオ越後氏である。もう説明不要な大御所。日本サッカー界を常に心配し、有り余る愛から“ツン”がいくつ付くのかわからないくらいの超辛口でお馴染みの御意見番である。代表戦で“デレ”の部分がチラっと見えたのは、ここ最近じゃアジアカップ決勝くらいではないか。それはさておき、御大がTwitterを使い始めてからは、代表戦の最中にもハバネロ級の辛口ツイートを連発し、フォロワーのタイムラインをヒリヒリさせている。いささか辛すぎるだろ、と突っ込まずにいられない方々もちらほらおり、「御大の視点のクラシックさは近代フットボールにそぐわない」という意見も少なくない。セレソン、というかブラジル至上主義に飽々している方々が、というのが正直なところだろう。ブラジルの国際舞台における栄光が霞むことはないが、フットボールのモダン・ビジネス化によって、ここ数年のブラジルが国際タイトルから遠ざかっていることも手伝っているのだろう。客観的に見ても、ブラジル人タレントの数は今でも質・量ともに他国を圧倒している。Jリーグで即戦力の助っ人と言えばブラジルのパスポート持つ選手が基本であるのは今も昔も変わらない。が、ヨーロッパでは少し前のようにはいかなくなっている、というのも事実だ。ワールドカップでの成績だけではなく、他国の成長もあって国際的なポジションは年々勢いを失っている。

ブラジル人のフットボールにかける情熱は凄まじい。記憶に新しい昨年末に行われたクラブワールドカップでのサポーターの熱狂っぷりを観てれば嫌でもわかるというものだ。試合をすれば大抵力の差を見せつけられる日本代表からも、いろんな視点から見ても、見習うところが未だに沢山ある。しかしだ、クラブ経営や戦術レベルの話をすれば世界の主戦場はヨーロッパである。セルジオ越後氏が140字以内で発する戯言に一々突っ込む必要はない。

「御大の全てが」というわけではなく、「全てが正しいと思う必要は無い」ということだ。もちろんそれが御大の意見であり、それが完全な間違いだとも思わないが、些か現状現実からズレてるような感覚になるのも、日本のフットボール界が独自の発展を遂げていっているからだろう。ブラジルと日本におけるフットボールのポジションは、その経済状況や生活環境、生活水準を見ても明らかに真似できないところがある。なんでもかんでもセレソンやブラジルを引っ張り出す必要はない。サポーターに関する見解などはその典型だろう。

御大ばかりを悪者にする気は更々無いのだが、かなりわかりやすいサンプルなので取り上げさせていただいた。もちろんメディア面ではこういった面もある

しかし、さわやかサッカー教室による功績はもっと讃えられるべきだ。御大を例にして言いたいのは、結局のところ「美味しいとこ取り」でいいじゃない、ということである。冒頭に挙げた近年のスペインの栄華は、パス&ポゼッション志向を高めたが、これらを正義として崇め、他を排除して語る方々も生み出した。そのいいとか悪いはまた別の話になるが、日本が発展していく上では、ブラジルの文化が培ったものと、ヨーロッパの文化が作り上げたシステム、そして日本で生まれたものなど、これらを上手く融合、昇華、利用して、日本に合うもの・よりいいものを考えればいいのである。この情報化の時代いい情報も悪い情報も沢山転がっているが、それを取捨選択していいものを練り上げられるかにかかっている。無駄な情報に構っている暇は無いのだ。哲学や信念は必要だが、柔らかい頭はもっと必要な時代である。

自戒も込めてだが、人を煽る暇があったら自分の精進に励むように心がけたいものだ。「何が正しいか」ではなく、「どうなればもっと良くなるのか」ということは得意なはずなのだから、そのための議論は尽きること無くされるべきである。

 

筆者名 Nemi
プロフィール 様々な媒体との交流があり、その手の世界では名の知れたライター。「文章一本で勝負したい」と完全に素性を消してQolyに登場。
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