2月24日にカシマスタジアムで行われた、水戸ホーリーホックとのプレシーズンマッチを2-2の引き分けで終えた鹿島アントラーズ。両チームともベストメンバーで臨んだこの試合では、目前に控えた開幕戦を意識した真剣勝負が繰り広げられたが、この熱戦から「監督交代によって変化したポイント」を読み取ることができた。

今回の『ロッシの鹿島リポート』では、「新シーズンのキーポイント」と題し、来るべき新シーズンで注目すべきポイントを述べていきたい。

・セレーゾならではの組み合わせに期待

ジョルジーニョ前監督が指揮を執った昨シーズン、終盤戦では基本形となった“大迫勇也の1トップ”が十二分に機能したが、トニーニョ・セレーゾはかつてアントラーズを率いた時と同じように、中盤をボックス型にした「4-4-2」をこの茨城ダービーで披露(下図参照)。2トップでコンビを組んだ大迫とダヴィがそれぞれゴールをマークし、多くのサポーターに期待感を抱かせた。

鹿島アントラーズ vs 水戸ホーリーホック(プレシーズンマッチ)

鹿島アントラーズ vs 水戸ホーリーホック

昨シーズンの途中辺りからゴールへの意識が格段に高くなった大迫がこの日も積極的にシュートを放ち存在感を示せば、ヴァンフォーレ甲府から加入した、昨シーズンのJ2得点王であるダヴィは迫力満点の突破でチャンスを演出。

2012シーズンのアントラーズと言えば、「Jリーグで最もチャンスシーンが多かったにも関わらず、そのチャンスをゴールに結びつけることがなかなかできない」という印象が強かったが、この試合での彼らの出来には、連携面で改善の余地を残すとはいえ、ある程度の満足感を示したサポーターは多かったことだろう。

さて、2トップの充実ぶりは好材料であるが、フォワード陣の層の薄さは若干気にかかるポイントだ。Jリーグ屈指のストライカーとして鳴らしたジュニーニョは、昨シーズン後半戦と同様に左サイドアタッカーとしての起用がメインとなりそうで、本格派のセンターフォワードは2年目の中川義貴を含めて3人しかいない。もし大迫、ダヴィに万が一のことがあれば、得点力の大幅な減少は否めないだろう。

しかし、第一次トニーニョ・セレーゾ政権でも行われたように、この新指揮官は攻撃的ミッドフィルダーの選手をトップで起用し、攻撃にアクセントをつけることを得意とする。実際、プレシーズンマッチでは、ダヴィに代えて遠藤康を投入した後半途中から野沢拓也がフォワードの位置でプレーし、本山とポジションチェンジを繰り返すことで、相手ディフェンダーを混乱させていた。

アントラーズの攻撃的ミッドフィルダーには、野沢、ジュニーニョ、本山、遠藤の他に、新加入の中村充孝 、豊川雄太、ユース出身で期待の若手である土居聖真と宮内龍汰、モンテディオ山形から復帰した川島大地ら豊富なタレントが揃うだけに、シーズン中は彼らがどのポジションで起用されるか注目するのも楽しみのひとつだ。

・左サイドバックの人選から見えるモノ

長きにわたって左サイドバックのレギュラーとして活躍した新井場徹がセレッソ大阪へと移籍し、注目が集まっていたのが、「左サイドバックの新レギュラーを誰に託すのか」という点であった。筆者もこの点に注目して試合前のスタメン発表を待っていたのだが、新指揮官の回答は「守備能力の高い中田浩二の起用」というこれまでのアントラーズの哲学とは異なる人選だった。

アントラーズの哲学のひとつとして「サイドバックの積極的な攻撃参加」が挙げられる。これは攻撃の選択肢を増やし、厚みをもたらすための策であるが(それ故、アントラーズでサイドバックを務める選手には多くのタスクが課されており、非常に難しいポジションとなっている)、実際、これまでのアントラーズで左サイドバックを務めた相馬直樹、アウグスト、ジウトン、アレックス、新井場といった選手たちはいずれも攻撃参加が自慢のサイドバックであり、オーバーラップから数々のチャンスを演出した。つまり、ボランチとセンターバックが本職であり、攻撃よりも守備を得意とする中田をサイドバックで起用するというのは、アントラーズの哲学に反するモノなのだ。

フロントは新井場の後継者として、愛媛FCで活躍した攻撃的サイドバックの前野貴徳を補強しており、このプレシーズンマッチでも起用するチャンスは十分にあった。それだけに、百戦練磨の中田浩二を左サイドバックで起用した意図が気になるところだが、この采配からは『まずはベテランたちの経験を大事にする』というトニーニョ・セレーゾのメッセージが込められていると筆者は感じた。

第一次トニーニョ・セレーゾ政権を支えた「79年組(曽ヶ端準、中田浩二、小笠原満男、本山雅志)」もすっかりベテランとなってしまったが、依然としてその経験がチームにもたらすモノは非常に大きい。事実、前述した中田は持ち味とする「対人プレーの強さ」と「卓越したバランス感覚」でチームに落ち着きをもたらし、後半途中から登場した本山はそのスキルを活かして前線を動き回り、チームの攻撃を活性化させていた。彼らベテランを起用したことで、新加入の前野と中村の出番はなかったが、ベテランたちの健在ぶりを再確認できたことは収穫であろう。今後、シーズンが開幕すれば、前野、中村の出場機会が多くなると筆者は予想するが、“年功序列”がどのように覆されていくかには大いに注目していきたい。

2013/2/27 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

 

筆者名 ロッシ
プロフィール エル・シャーラウィ、ネイマール、柴崎岳と同世代の大学生。鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援しています。野球は大のG党。
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