私は今現在、ロンドンにいる。コーチングライセンスの取得の為というのもあるがそれ以上にサッカーの母国のサッカーをあらゆる視点から見てみたいというのが本心である。今回からのこのコラムは読者のみなさまに私なりのサッカーに対する意見を綴っていければと思って、今回のコラムを始めさせてもらいたい。


少しばかり思い出してほしい。3年前の夏の出来事を。

舞台はアフリカ大陸の南アフリカ。アフリカ大陸に歴史上、初めてワールドカップがやってきて、ブブゼラが鳴り響くスタジアムではスペインが“無敵艦隊”たる所以を再び、その華麗なパスワークでもって世界に証明した夏。この夏がかつてこの地に「アパルトヘイト」という白人による非道なまでの黒人差別があったことを払拭させるに素晴らしい大会であり、素晴らしい夏であったことは間違いない。当時高校3年生であった私は毎晩のようにテレビにかじりついては学校を遅刻していたことを今でも覚えている。

そんな夏からあっという間に月日は流れ3年が経ち2013。いよいよ、南アフリカでのワールドカップ以上のワールドカップになるであろうワールドカップが来年に迫っている。

ブラジルはサッカーの王国であり、最も世界王者に輝いている国である。そのブラジルで開かれる大会がサッカーファンにとってはたまらないものであり、珠玉の大会になると予想するのはサッカー好きの常である。

さて、そんなワールドカップブラジル大会で私が最も期待をよせる国はブラジルと並ぶ南米の雄「アルゼンチン」である。

今月9月10日。アルゼンチンはパラグアイにアウェイながら2-5と大勝。その結果、南米予選残り2節で、見事予選突破。11大会連続16回目のワールドカップ出場を手にしたのである。

そんなアルゼンチンに私が来年のブラジルで期待する理由はいくつかある。

まず一つに現監督であるアレハンドロ・サベージャは代表においてリオネル・メッシを最も上手く扱えている指揮官だと私は考えている。

いままで多くの指揮官がメッシを扱ってきた。ある監督はウィングで使い、ある監督はワントップのような形を試した。が、いずれもメッシのバルセロナでのような活躍ぶりを引き出すことは出来ずに終わった。それはあのディエゴ・マラドーナでさえ、扱うことが出来なかったメッシが代表でデビューして以来のアルゼンチンの課題であった。それをサベージャは引き出すことが出来ているように私には見える。

その要因として挙げられるのがメッシのポジションである。

これまで主にメッシがアルゼンチン代表でプレーしてきたのはワントップかスリートップの真ん中である。いずれもバルセロナとは異なり、自由度は低く、固定されていた。これがメッシが代表で輝けなかった要因でもあった。それはメッシを活かす側としても非常に厳しさを要した。私が記憶するに2005年のコパ・アメリカにてファン・ロマン・リケルメと縦関係を組んでいた時以外でメッシが光った大会というのはないと記憶している。

サベージャはメッシに自由を与えた。

ワールドカップ行きを決めた南米予選のパラグアイ戦のアルゼンチンのフォーメーションは基本的には4-3-3であった。しかしメッシが上下、左右を自由に動くことで前線は効率良く動き出す。彼がタクトを振るえばアグエロ、パラシオもしくはイグアインの他の2人がそれに反応し、フィニッシュをし、メッシもまた3トップの一角としてゴールを挙げることが可能だ。これを見ればサベージャがメッシに自由を与えているということが分かる。そしてもう1人、今のアルゼンチンでカギを握っているプレーヤーがいる。それはディ・マリアである。

在籍するレアル・マドリーではサイドを主戦場とする彼が代表では中盤3枚のうちの1枚を務めている。これには最初は私も驚いたと同時に疑問が沸いた。しかし、すぐさまその疑問は解けた。彼が中盤を務めることでメッシの自由さをより活かすことが出来るのだ。ディ・マリアは精度の良いボールをスペースに出すということも可能で、足元への供給も可能なプレーヤーでありながら高い守備センスと豊富な運動量を持っている。そんな彼がサイドではなく中央に位置することでスペースをカバーしたり、メッシ、アグエロ、パラシオの3トップにも良い形でボールが繋がる。それともちろん彼のスピードを活かしたドリブルで守備から速攻というのも可能となり、3トップ+1のような数的有利の状況を作り出し、攻撃に厚みと鋭さをもたらすこともある。こういったサベージャのサッカーを見る限りでは、ある意味メッシよりも重要なのはディ・マリアと言えるのかもしれない。

アルゼンチンは親善試合ではあるがドイツ、イタリア、ブラジルといった強豪国を粉砕し続けている。試合を観る限りでは何か粘りというものが戻ってきた印象だ。この勢いを持続し、来年に繋げられれば宿敵であるブラジルの地で3度目のトロフィーを掲げる瞬間が見られるのかもしれない。


 

筆者名:羽澄凜太郎

プロフィール:現在ロンドン留学中。1993年1月25日生まれ。東京都多摩市出身。小学生の時は野球少年であったが小学6年の時に生で見たレアル・マドリーの面々に感動し、本格的にサッカーを好きになる。

中学卒業頃からライターを志すようになり、高校卒業後、専門学校東京スクールオブビジネスに入学。そこでマスコミやライター、編集などのノウハウを2年間学ぶ。

ツイッター:@randyrin

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