ロンドンの寒さはここ数週間で増してきている。
道を歩けば枯れ葉が散乱し、その枯れ葉を飛ばす風は頬を冷たくなでおろす。その風の冷たさたるやかなりのものである。
寒さが増すということは当然、街行く人々の服装にも変化が起きる。マフラーを巻き、手袋をし、厚手のコートを羽織る。なかには何十にも重ね着をしている人もいるであろう。私の場合は冬に向けて寒くなる前に冬に向けた服を購入し、寒さ対策を予めとっていた。それが良かったのか周りでは寒さにやられ、風邪をこじらせる者が多い中でそういったことは一切ない。対策というものはきちんとすべきであり、そのうえで我慢強さも必要なのだろうなと私は感じてこの寒さに耐えている。
この対策というものに着手したのがロンドンのフットボールクラブのクリスタルパレスだ。
クリスタルパレスは昨シーズン、チャンピオンシップを5位で終えるとプレーオフで勝利し、クラブの04/05シーズン以来となる9シーズンぶりのプレミアシップ昇格に成功した。
チームを昇格へと導いたイアン・ホロウェイ(50)は攻撃的なフットボールを信条としていた。それがチームを上へと押し上げたことは間違いないし、会見などで見せる滑舌さなどを見てもチームが昇格したのはホロウェイの力が大きいように感じていた。
とはいえ、今シーズンが始まってからというものクリスタルパレス得意の攻撃サッカーは影を潜め、気付けば降格圏内と大量補強を施したチームに対しての期待とは逆の結果を招いてしまっていた。そこでついにチームは対策に着手した。
ホロウェイは10月24日で正式に解任された。解任は昇格組の監督としては早いように感じるが同じ降格圏内に沈むフラムに4失点し、1得点しかできなかった内容を考えると良いタイミングだったのかもしれない。
新しい監督にチームが招きいれようとしているのはトニー・ピューリス(55)という男である。この55歳のウェールズ人は今年5月までストークを率い、低予算のチームをきちんと戦える残留から定着というチームへと変え、多国籍化したことで戦術も様々なものが入る中で対人に強き守備を基盤とし、攻撃でロングボールを多用する昔ながらのイングランドフットボールを志向することで一定の評価を得ている指揮官である。
私はピューリスの着任は残留を目指すクリスタルパレスにとって大きなものになるであろうと感じている。
総得点7点に対し、失点は21点と守備面での欠如は明らか。ここに守備戦術に自信を持つピューリスが入れば自ずと結果が変わってくることは目に見えている。そしてクリスタルパレスのスタジアム『セルハースト・パーク』はストークのスタジアム『ブリタニア』同様にピッチが小さいのである。セルハーストは縦100m横56mとブリタニアとそう変わらないサイズで、尚且つエミレーツ・スタジアムやオールド・トラッフォードなどに比べれば6m縦のサイズは短いのである。これはピューリスの得意とする長身、あるいは身体の強い選手を前に置き、ロングボールを放るフットボールに実に適したスタジアムであることは言うまでもない。
クリスタルパレスはチームが寒さの中でどんどんと沈んでいかぬうちに対策を講じた。おそらくこれはシーズン終了を良い形で終わらせる為に重要なこととなるのであろう。あとは3年で4人監督を代えているオーナーがいかに我慢強くいられるかが彼らクリスタルパレスの運命を決めるはずである。
筆者名:羽澄凜太郎
プロフィール:現在ロンドン留学中。1993年1月25日生まれ。東京都多摩市出身。小学生の時は野球少年であったが小学6年の時に生で見たレアル・マドリーの面々に感動し、本格的にサッカーを好きになる。
中学卒業頃からライターを志すようになり、高校卒業後、専門学校東京スクールオブビジネスに入学。そこでマスコミやライター、編集などのノウハウを2年間学ぶ。
ツイッター:@randyrin