チャンピオンズリーグはとてもとてもがっかりな出来と結果であったが、リーグ戦に引きずること無く臨めるか。尚、前節が27節でこの試合が29節。28はどこにいったかといいますと、シティのリーグカップ決勝のために延期になっており、ダービーは月末に延期となっております。

【前節の復習】

スターティングのラインナップを観て、スモーリングもジョーンズもビルドアップに優れた選手ではないことから少し不安になった。もちろん相手を考えれば後手に回ることはなさそうだが、試合中に何度か気になる点は見られた。流石にファーディナンドと比べてはかわいそうかもしれない。ただそれでもこの二人が便利屋扱いされることなく、センターバックに固定されて使われるべきだということも改めて確認したことも付け加えておこう。

代表戦を挟んだものの前線のメンバーは変わらず、おそらく攻め方に大きな変化はなさそうだと見ていたがやはりそうだった。スムーズに行く場面は多くはなかったがベースの一つとしては有力な形としてあるものと考えて良さそうだ。

全体を通してスムーズにいったとは言い難く、課題はまだまだ多いのは誰の眼にも明らかだ。選手間の距離はまだまだ遠く、フォローの動きもあまり多くも速くもない。ボールを「持ってから」のプレーが多く、連動性を欠いたパスを繋げば一つ一つのプレーが切れてしまい、リズミカルなプレーとは言えないものだ。

フェライニはバランスを見ながら、ビルドアップが落ち着けばほぼ二列目の高さまでポジションを上げ、受け手に回るパターンは前節のクリスタル・パレス戦同様で、左からのヤヌザイのクロスをファーで待つという点は復習の様な動きであった。それにしてもこの試合のフェライニ、ユナイテッド移籍後のベストパフォーマンスではないだろうか、というくらい動きが良かった。

個別の話をするとファン・ペルシーの動きは好調時とは程遠く、フラストレーションを溜まっているのが滲み出ていた。退場にならなかったものの、観ている方は退場を覚悟したものだ。

誰にだって悪い時はあるものだ。ファン・ペルシーの能力そのものに疑いの余地はないものの、パフォーマンスを落としている。思うようにボールに触れていないこともあるのだろう。とりあえずファン・ペルシーに収めておけ、からマタを経由して前線に繋ぐ、というプロセスの変化が多少なりともなにかあるような気がしてならない。ともかく、チームのコンセプトと本人のコンディションがこのままなのであれば昨シーズンのようなパフォーマンスと結果を出すことは難しいことに違いはない。

【改めてルーニーを活かす為には?〜万能性の罠〜】

英国一の高給取りになるウェイン・ルーニーを如何にして活かさねばならないのか。彼はおそらく世界一万能なセンターフォワードである。しかしその万能性故に便利屋扱いされがちであり、本人も自分が本当に何をすべきか、という点についていまいち自覚しきれていないのかもしれない。

パスも出せればゴールも奪えて、泥臭い仕事もできる。全てにおいて平均以上のプレーをこなせてしまうが故に、その場面やメンバー、相手、条件などによってルーニーの仕事内容は変化してしまう。これが全てにおいて悪いとは言えないが、逆に本来すべき仕事に全力を注げないことを呼び込んでしまっているようにも思える。これはモイーズの責任のみならず、ファーガーソン時代から続くことである。

あるときはセンターフォワード、あるときはトップ下、あるときはサイドハーフ、あるときはセンターハーフ、などルーニーがチームに合わせていた(合わせられていた)感が拭えない。ただし、あらゆるポジションで起用されても、仕事が明確である場合のパフォーマンスは圧倒的なものを見せるのがルーニーだ。

クリスティアーノが在籍中、徐々にクリスティアーノをスコアラーとして活かす方向へシフトしていった頃にはサポート役として全力を注いでおり、それは素晴らしいパフォーマンスを見せていたことはみなさん思い出に残っているだろう。クリスティアーノが移籍した後、ワントップに固定され最前線で奮闘していたシーズンはスコアラーとして素晴らしい成績をあげた。もちろんそれ以外のシーズンに活躍していなかったというわけではない。ただ、個人的にはやるべき仕事が明確になり、かつ仕事の種類を絞ったほうがルーニーは輝けるのではないか、ということを申し上げたいのだ。

なんでもこなせてしまうが故に、周囲から頼られて本人もこなしてしまう。万能性故に万能性に振り回されている。もっとシンプルにプレーすべきはルーニーであり、チームはその方向へ向かわなければならない。頼るにしてもその頼り方を変えねばならないのだ。

たまたまかもしれないし、モイーズの指示によるものかもしれないが、ファン・ペルシーの仕事も曖昧で、右に左にボールを欲しがる動きはあまり機能していなかった。偉大なる2トップの動きが連携していたとは言い難く、むしろウェルベック投入後の方がシンプルになったのは明らかであった。ウェルベックも動きまわってはいたが、基本的には最前線に陣取って受け手として構えている。ルーニーは完全に出し手として様子を伺ってボールに絡んでおり、2点目と3点目の形はその流れから生まれている。やるべき仕事が整理され明確になったことで生まれたゴールだったように思える。

もちろんファン・ペルシーの不調とモイーズの指示などを差し引いて考える余地はある。昨シーズン、ルーニーからファン・ペルシーへ何度も素晴らしいアシストがあったことを忘れたわけではない。ただ、物事をシンプルに考える必要がありそのきっかけになればいいのだ。難しいことを難しく行う必要はない。シンプルに力強いことも立派な武器なのだ。

【アニチビ、フォスター、香川真司】

それにしてもアニチビという選手の凄さに目が行く試合であった。ことごとくボールを収め、フィニッシュまで持ち込む力強さは厄介極まりなかった。ゴールこそなかったものの、追加点を奪いきる前にネットを揺らされていたら分からなかった試合である。

目がいったといえばもうひとつフォスターに触れないわけにはいかない。基本的にはレスポンスのいいキーパーではあるのだが、やはり足下で時折やらかすのはユナイテッド時代から変わっていなかったようだ。エリア外での足下のボール処理のミスから明らかなハンドをお茶の間の皆さんはご覧になっただろうが、幸運にも笛がそれを指摘することはなく試合は進んでいった。今思えば、あのプレーとファン・ペルシーが退場にならなかったのがトレードオフだったのかもしれない。

わずかながら久々にリーグ戦に出場した香川にも触れておこう。極東での代表戦では積極的なプレーが目立ったがこの試合はまたしても積極性を欠いたプレーが目立った。悪い内容ではなかったが、一時期ヤングが優先して起用されていた理由が明らかにゴールへ向かう意識と結果だったことを考えれば、香川がゴールという結果を獲りにいかない限り、今後も大幅に優先度が上がるとは考えにくい。もちろんプレーの状況やピッチの選手バランスなどによってアシストに回った場合が良い場合もあることは間違いないだろうが、彼がフィニッシャーとしての仕事を増やさない限りは、日本のメディアが望むようなことはあまり期待できないと思われる。

香川も高いスキルを持っているが故に、少々便利屋扱いされがちな傾向がある。ただしルーニーとの絶対的な違いはフィジカルコンタクトでの潰しが効かないことだ。対人での正対したマッチアップは攻守において不利に働く。香川が自分のやり方で存在感を示すのが先か、見切られるのが先かは分からないが、「良いプレー」ではなく誰にでも分かる「数字」を優先すべきなのは明らかである。ここでエゴイスティックになれなければ彼のヨーロッパでのキャリアはドルトムント時代がピークになってしまうことだろう。プレーと結果でチーム内の誰かを喰わなければ、未来が明るいものではないことは明白だ。

さて、アンディ・コールがトロフィーを持って来日していたが都合つかず生でお目にかかることができなかった。一億人以上いる日本人の中でもアンディ・コールのチャントを歌わせたら日本人トップクラスを自負していただけに非常に残念だった。二年前にゴードン・マックイーンとデニス・アーウィンが来日した時にはお会い出来たので、今回も楽しみにしていたのだが願い叶わず。まあ、これは再度マンチェスターの地まで飛べ、という神の思し召しだと思うことにしよう、無神論者だけどね。


筆者名:db7

プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
ツイッタ ー:@db7crsh01

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